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映画『ペリリュー』で描かれる、正反対の「上司」2人 戦場での命運を左右した「裏主人公」

映画『ペリリュー』で描かれる、正反対の「上司」2人 戦場での命運を左右した「裏主人公」


絵を描くことが好きな田丸の視点で戦場の物語が描かれる、劇場アニメ『ペリリュー ー楽園のゲルニカー』 (c)武田一義?白泉社/2025「ペリリュー ?楽園のゲルニカ?」製作委員会

【画像】「えっ」「どっちに就くのが正解なんだ」これが『ペリリュー』日本軍の「正反対な上司」2人です(6枚)

かつて戦争の激戦地だった「南洋の楽園」

 武田一義氏のベストセラーコミック『ペリリュー ー楽園のゲルニカー』(白泉社)全11巻が劇場アニメーション化され、2025年12月5日より公開中です。三等身で描かれたかわいらしいキャラクターと、太平洋戦争で最も激しい戦場のひとつだった「ペリリュー島の戦い」のリアルな描写とのギャップが注目を集めています。

 終戦70年となる2015年に天皇皇后ご夫妻(現在の上皇ご夫妻)がパラオ諸島のペリリュー島を慰霊訪問されたことから、武田氏は初めてペリリュー島で日本軍と米軍との間で激戦が繰り広げられたことを知ったそうです。日本兵約1万人が島を守っていましたが、日本に生還を果たしたのはわずか34人でした。

 取材を重ね、「ペリリュー島の戦い」の実情を知った武田氏は「多くの人に知ってほしい」という気持ちから、親しみやすい三等身キャラのマンガにしています。戦争の恐ろしさだけでなく、生死をともにした戦友たちの固い友情、日本に残した家族への想いも、原作コミック、そして劇場アニメ版『ペリリュー』では繊細に描かれています。

統率力、判断力に優れた「裏主人公」の存在

 漫画家になることを夢見る田丸一等兵(CV:板垣李光人)と抜群の射撃の腕を誇る吉敷上等兵(CV:中村倫也)を中心に、物語は進んでいきます。ふたりがお互いに助け合うことで過酷な戦場をサバイバルしていく過程が見どころとなっていますが、彼らの運命を大きく左右するキャラクターの存在が、とりわけ強く印象に残ります。

 そのひとりが、田丸たちの上官となる島田少尉(CV:天野宏郷)です。年齢は22歳と、田丸と吉敷の1歳上なだけですが、統率力があり、判断力にも優れ、みんなから慕われている人物です。軍に召集されるまで漫画を描いていた田丸の適性を見抜き、「功績係」に任命するなど観察力にも秀でています。『ペリリュー』の「裏主人公」と呼んでいいほど、重要なキャラクターです。

 圧倒的な兵力と火力を誇る米軍の猛攻によって、ペリリュー島の守備隊はわずか数日間で壊滅状態に追いやられます。残された日本兵はジャングルに潜み、ゲリラ戦を強いられることになります。

 食料も薬品もなく、救援の可能性もない絶望的な状況下で、島田少尉は米軍基地から物資を強奪する計画を考案します。米軍にひと泡吹かせるこの作戦に、残された日本兵たちの士気は大いに高まることに。島田少尉はカリスマ的存在となっていきます。

 武田氏が描く『ペリリュー』の面白さは、田丸が戦地で出会った人たちを「善悪」の二元論では描いていないところです。気の優しい田丸にとって、軍隊は居心地のいい組織ではありません。しかも、ペリリュー島の守備隊は、生きて日本に帰ることが難しい局面にあります。

 そんな部隊で、島田少尉は田丸に「功績係」という任務を与えます。亡くなった戦友たちの最期の姿を遺族に報告するこの使命をまっとうするため、田丸は懸命に生き続けようとします。また、島田少尉がいなければ、田丸たちは餓死か病死していた可能性が十分にあります。

 田丸にとって命の恩人といえる島田少尉ですが、優れた統率力と愛国心の強さから、物語を予想外な方向へと導いていくことになるのです。


部隊をまとめ上げる上官、島田少尉(右)のほかに、規律から外れたもうひとりの「上官」の存在も、田丸らの運命を左右する (c)武田一義?白泉社/2025「ペリリュー ?楽園のゲルニカ?」製作委員会

配信元: マグミクス

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