ステフィン・カリーが大腿四頭筋の打撲で離脱、ジミー・バトラー三世(右ヒザ)、ドレイモンド・グリーン(右足)とケガ人が続出しているゴールデンステイト・ウォリアーズで、伏兵パット・スペンサーが躍動している。
メンフィス・グリズリーズのキャム・スペンサーを弟に持つポイントガードは、12月2日のオクラホマシティ・サンダー戦で17得点、4日のフィラデルフィア・セブンティシクサーズ戦で16得点、そして6日のクリーブランド・キャバリアーズ戦ではキャリアハイの19得点に7アシストを記録した。
シクサーズ戦では、ベンチスタートながらチーム最多の得点を稼いだだけでなく、第4クォーターだけで2本の3ポイントを含む12得点を荒稼ぎ。66-82と16点ビハインドで最終クォーターに突入したウォリアーズは、スペンサーの連続得点で一時逆転に成功。
その後シクサーズに再逆転を許し1点差で惜敗となったが、試合後ウォリアーズのスティーブ・カーHC(ヘッドコーチ)は、重要な局面でスペンサーを起用したことは、「なんの迷いもない」判断であったと強調。
「パットは非常に素晴らしかった。試合をコントロールしていた。彼はやるべきことをしっかりこなしてくれる」と惜しみない称賛を贈った。
突如スポットライトを浴びたスペンサーだが、実は“ドラフト1位指名”の経験を持つ学生アスリートである。
とはいってもNBAのドラフトではなく、大学時代にプレーしていたラクロスでの話だ。地元メリーランドのロヨラ大では入学初年度から先発メンバーとして活躍し、シニアシーズンには全米No.1選手に贈られるテワラトン賞を受賞。男子NCAAディビジョン1の歴代最多アシスト記録(231)も保持している。
2019年の卒業と同時にプレミア・ラクロス・リーグから首位指名を受け、プロ入りのチャンスを得たのだが、スペンサーはこれを断り、大学に残ってさらに1年スポーツを続けられる制度を利用。シカゴにあるノースウエスタン大のバスケットボールチームに加入した。
とはいえ、このタイミングでバスケを始めたわけではなく、NCAA公式サイトの彼の紹介記事によれば、高校時代にも熱心にバスケに取り組み、チームを25年ぶりの州タイトルへ導いた。しかし当時は身長が低かったこともあり、大学進学時にラクロスを選択したのだった。
もともと運動神経がよく、特に敏捷性、アジリティ、的を射る決定力に優れていた彼は、ラクロスでも能力を発揮して、大学No.1選手まで登りつめた。 現在も188cmと決して大柄ではないが、彼のプレーを見ると、マッチアップした相手をかわす際の身体の使い方などは、ラクロス時代に磨きをかけた対人テクニックが活かされているのがわかる。
ノースウエスタン大卒業の年にエントリーした20年のNBAドラフトでは指名漏れに終わった。しかし彼はそこで諦めず、海を渡ってドイツリーグに挑戦した。
所属したハンブルク・タワーでは数試合の出場にとどまったが、21年10月にワシントン・ウィザーズ傘下のGリーグチーム、キャピタルシティ・ゴーゴーとの契約にこぎつけた。
ウォリアーズとの縁ができたのはその翌シーズンだった。
22年オフにチームとエグジビット10契約を結ぶも、ロスターには残れず、Gリーグのサンタクルス・ウォリアーズでプレーを続けた。ケガで初年度は出場機会も限られたが、本格的に参戦した2023-24シーズンは、34試合に出場して平均14.2点、3.9アシスト、5.5リバウンドと安定した数字を残した。
その頃からカーHCはスペンサーに目をつけていたようで、シーズン中の2月に晴れて2WAY契約を締結。2月25日のデンバー・ナゲッツ戦で、27歳の遅咲きのルーキーは晴れてNBAのコートに立ったのだった。
実戦を重ねるごとに磨かれていく印象のあるスペンサーについてカーHCは、「ステフがいないこの状況では、当然ながら彼はコートに立つことになる」と今後も起用を続けていく意向であることを明言。
続けて、「彼をロスターに正式に加えられる手段を見つけたい」と、本契約の可能性も示唆している。
「彼は理想的なバックアップだ。今夜(シクサーズ戦)もあと一歩まで迫ったように、彼には試合に勝たせる力がある。それに、たとえ出場しない日でも、彼はチームに同じだけのエネルギーを注いでくれるんだ」
そうした指揮官からの評価について、スペンサー本人も手応えを口にしている。
「そうした闘争心は素の自分、生まれもったものだ。誰が相手であっても、コートに出たら全力で戦ってすべてを出し切る。それを彼(カーHC)が見て評価してくれているのは本当にありがたいことだ。前半戦でチームがうまくいっていない時は、後半戦で誰かがギアを一段上げる必要がある。そうした働きこそが自分がここにいる理由のひとつだと思っている」
ラクロスの学生全米No.1からNBAの舞台に羽ばたくという異色のキャリアを持つスペンサー。
エース不在の機会に周囲がステップアップするのはチームにとって理想的だ。負傷者続出の苦境をウォリアーズがどう乗り切るのか――そのカギを握る存在として、スペンサーの名前は今後さらに注目を集めることになりそうだ。
文●小川由紀子
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