12月7日、2025年F1最終戦アブダビGPの決勝レース(58周)がヤス・マリーナ・サーキットで行なわれた。優勝はマックス・フェルスタッペン(レッドブル)で、今季8勝目。しかしそのフェルスタッペンを2点差で抑え切ったランド・ノリス(マクラーレン)が今シーズンのワールドチャンピオンに輝いた。
2025年シーズンのF1は、久々に最終戦までタイトル争いがもつれ込んだ。ランキングトップにつけるのは、7年目で初の王座を狙うノリス(408ポイント)。12点差のランキング2番手は、大逆転での5連覇を視野に入れるフェルスタッペン(396ポイント)で、3番手のオスカー・ピアストリ(マクラーレン/392ポイント)までが王座の可能性がある状態。3人以上のドライバーがチャンピオンの権利を有した状態で最終戦を迎えるのは、2010年以来15年ぶりだ(当時は4人によるタイトル争い)。
ポールポジションからスタートするのはフェルスタッペン。2番グリッドにはノリス、3番グリッドにはピアストリが並んだ。ノリスにとっては、3位以上に入れば自力で王座を決められる状況だった。また今季限りでF1レギュラーシートを失うことになった角田裕毅(レッドブル)は、当面のF1ラストレースを10番グリッドから迎えた。
またタイヤ選択は上位陣がほとんどミディアムを選択。ピアストリだけはチームメイトと戦略を分ける形で、ハードタイヤをチョイスした。角田もハードタイヤでのスタートだ。
スタートではフェルスタッペン、ノリス、ピアストリのオーダーは変わらず。しかしピアストリはバックストレートエンドのターン9でノリスをオーバーテイク。逆転タイトルへのわずかな望みを繋ぐためか、はたまたチームメイトの援護射撃のためか……2番手でオープニングラップを終えた。
フェルスタッペンは2番手ピアストリに対して2秒前後のギャップをキープ。一方で3番手ノリスは4番手を走るシャルル・ルクレール(フェラーリ)に1秒差以内に迫られるという状況だった。しかし上位4台のペースは1分29秒台中盤で大きな差はなく、膠着状態で10周が過ぎた。
タイヤのデグラデーション(性能劣化)が大きくなるという戦前の予想通り、ミディアムタイヤ、ソフトタイヤのドライバーたちは10周を超えると軒並みタイムが落ち始めた。14周でジョージ・ラッセル(メルセデス)ら数台がピットインしたのを皮切りに、16周目にはノリスもピットインしてミディアム→ハードに交換。9番手でコース復帰すると、ステイアウト組を1台、また1台と交わしながらポジションを上げていった。
レースは20周目に入り、トップはフェルスタッペン、1.8秒後方に2番手ピアストリ。20秒以上後ろの3番手には、ハードでステイアウトする角田がつけ、そしてその3秒後方にノリスが迫ってきた。
フェルスタッペンのタイトル獲得をアシストすることが使命である角田にとっては、ここが大一番と言えた。23周目にはノリスが角田の1秒差以内に接近。ただペース差は如何ともしがたく、バックストレートの1本目でオーバーテイクを許してしまった。なお、この時の角田には複数回のレーンチェンジがあったとして、5秒のタイムペナルティが科された。
角田がノリスに抜かれた直後、フェルスタッペンもピットに入り、ノリスの5秒前でコースに合流。ピアストリは変わらずステイアウトを続け、2番手以下はフェルスタッペン、ノリス、ルクレールでレース後半に差し掛かった。
40周を過ぎてもなおステイアウトを続けていたピアストリは、フェルスタッペンに抜かれたタイミングでピットに。ノリスは後ろのルクレールにリアクションする形で2度目のピットストップを行なっていたため、ピアストリは順位を落とすことなくコース復帰。フェルスタッペン、ピアストリ、ノリス、ルクレールというレース序盤のオーダーに戻った。
フェルスタッペンはそのまま独走状態でトップチェッカー。今季8勝目を終盤3連勝という形で飾り、後続の結果を待った。ただピアストリに続いてノリスが3位でチェッカーを受け、悲願のワールドタイトルを獲得した。
フェルスタッペンは一時はポイントリーダーから100点以上の差をつけられながらも、終盤の怒涛の追い上げでチャンピオン争いに加わった。しかしわずか2点届かず、歴史的な大逆転による5連覇を達成することはできなかった。
ピアストリは前半戦に盤石の戦いを見せてポイントリーダーの座を守っていたものの、後半やや息切れした感は否めず、最終戦まで9戦連続で勝ち星なし。3年目での初タイトルとはならなかった。
一方のノリスも取りこぼしのあったレースがいくつかあったものの、序盤、中盤、終盤としっかりポイントを積み重ねた。フェルスタッペンの猛烈な追い上げも振り切り、参戦7年目にして悲願の王座を手にした。
角田はミディアムタイヤに交換した後半スティントに快調な追い上げを見せていたものの、最終盤はペースが苦しくなりポジションダウン。14位に終わり、レッドブルでの有終の美を飾ることはできなかった。来シーズンはレッドブルのリザーブドライバーとなり、次なるチャンスに向けて爪を研ぐ1年となる。

