プロ野球のオフは、来季に向けて若手がレギュラーの座を射止めるべく、気持ちも新たに目をギラつかせる時期でもある。
来季の「開幕1番・センター」を目標に掲げたのは、巨人の佐々木俊輔だ。アマチュア時代から一貫してリードオフマンを担ってきた左打者らしく、「チームの顔になりたい」という強い思いを口にしたが、阿部慎之助監督からは「フォーム改造」の影響を受けている。
佐々木は2023年ドラフト3位で入団した外野手で、俊足を武器に広い守備範囲を誇る。今季は53試合で打率2割4分8厘、0本塁打、10打点。打率は一定の水準に達したものの、長打力が伸び悩んだことから、8月に阿部監督の助言を受けてバットを立てる構えへとフォームを変更。しかし、結果は思った方向へとはいかなかった。
実際に数字を比較すると、その変化は明らかだ。3月から7月の成績は28試合で打率2割5分7厘、OPS.602、三振率1割6分8厘。ところがフォームを変えた8月から10月は25試合で打率2割3分9厘、OPS.576、三振率は2割5分6厘へと急上昇した。もともと「三振の少なさ」が武器だった選手だけに、「せっかくの長所が消えてしまった」「指導で悪化している」との見方が…。
バントにも影響が出ている。前半戦は7回全てを成功させた犠打が、8月以降は成功わずか3回。失敗を一度記録し、持ち味だった小技の精度は落ちた。打撃だけでなく、攻撃面全体のリズムを崩した形だ。
これには選手の適性を見極める問題や、バットを立ててから初動が遅くなっている、との指摘が渦巻いている。
巨人は近年、丸佳浩に次ぐセンターラインの確立に苦しみ、外野は常に競争状態にある。松本剛のFA加入で争いはさらに激しくなるが、その中で佐々木は「1番打者へのこだわり」を口にし、自らポジションを摑みにいく覚悟を示した。それにはまず、フォーム改造の再調整が必要ではないか、という論点が残る。
来季、佐々木が本来の持ち味を取り戻せるのか。そして阿部監督の指導は結果につながるのか。巨人の外野再編を占う意味でも、この冬の取り組みの意味は大きい。
(ケン高田)

