
メキシコの山あいの村から、まるで積み木のような不思議な頭蓋骨が発掘されました。
その頭頂部は驚くほど平坦で、四角く削り取られたかのような形状。
メキシコ国立人類学歴史研究所(INAH)によると、このキューブ型頭蓋骨は、約1400年前のメソアメリカの人々が生み出した「頭蓋変形」の証拠です。
一体なぜ彼らは、わざわざ人間の頭を“立方体”のような形に変えていたのでしょうか?
目次
- 山中の古代集落と「頭のかたち」の謎
- 文化の境界線と“頭の形”のメッセージ
山中の古代集落と「頭のかたち」の謎
舞台はメキシコ北東部・タマウリパス州のシエラ・マドレ山脈。
その標高1200メートルに位置するバルコン・デ・モンテスマ遺跡は、かつて2つの広場に約90棟の円形住居が立ち並んでいた集落です。
この地では西暦400年から1200年頃まで、多様な民族グループが暮らし、家々の床下には大人から子どもまで多くの人骨が埋葬されてきました。
そして最新の調査で、かつて見たことのない頭蓋骨が発見されます。それは中年男性のもので、人工的に頭の形を変える「頭蓋変形」の跡がはっきり残っていました。
頭蓋変形とは、幼児期に布や柔らかい詰め物で頭部を固定し、成長とともに頭の形を意図的に変えるという、メソアメリカに広く見られた風習です。
円錐型の「エイリアンのような頭蓋骨」はよく知られていますが、バルコン・デ・モンテスマ遺跡で見つかった男性の頭蓋骨は、それらとはまったく異なる形状でした。
【実際の画像がこちら】
その特徴は「上部が平らで、全体が立方体に近い」というもの。
実際、このような「キューブ型」の頭蓋骨は、これまで主にベラクルスやマヤ地域など別のエリアでしか確認されていませんでした。
文化の境界線と“頭の形”のメッセージ
では、なぜこの男性はわざわざ珍しいキューブ型の頭蓋骨を持つに至ったのでしょうか?
最新の化学分析により、彼が生まれも育ちもバルコン・デ・モンテスマ地域であり、一生をこの土地で終えたことが判明しています。
つまり、「頭の形が特殊だからよそ者」という単純な図式は成り立ちません。
実は、メソアメリカ各地では「どの文化に属するか」を頭の形で示すことが広く行われていました。
微妙に違う頭蓋変形の型は、そのまま“文化の名札”でもあったのです。
この男性の頭を変形させたのは、もしかすると異なる文化グループの出身者だったのかもしれません。
また、当時の社会の中で特別な地位や役割を示していた可能性も考えられます。
バルコン・デ・モンテスマでは、多数の円形基壇や墓、そして複数の民族集団の影響が複雑に重なっており、頭蓋変形のスタイルにもさまざまなバリエーションが見られました。
このキューブ型頭蓋骨は、今なお正確な意味や動機が解明されていません。
しかし、文化やアイデンティティが“身体”というかたちで表現されていたことだけは確かです。
参考文献
Unusual, 1,400-year-old cube-shaped human skull unearthed in Mexico
https://www.livescience.com/archaeology/unusual-1-400-year-old-cube-shaped-human-skull-unearthed-in-mexico
元論文
Tammapul, Balcón de Montezuma y El Sabinito, sitios arqueológicos de Tamaulipas que recibieron mantenimiento
https://www.mener.inah.gob.mx/archivos/25%20Tamaulipas.pdf
(PDF)
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

