F1アブダビGPで初のチャンピオンを感動的な形で獲得したランド・ノリス(マクラーレン)。彼の歩みを間近で見守ってきた母、シスカ・ノリスの温かく、胸を打つ反応も感動的だった。
アブダビGPを3位で終え、マシンを降りたノリスはチームやゲストと喜びを分かち合った。母のシスカとも熱い抱擁を交わした。
パドックでスカイスポーツF1の取材に応えた彼女は、ノリスが偉業を達成するために積み重ねた努力には、確かに犠牲も伴ったと認めた。
「感情的に疲れ果てているけれど、とても幸せです」と彼女は自身の心境を尋ねられてそう答えた。
「家族のためにも、チームのため、マクラーレンのため、ファンのため、本当に幸せです。彼らはいつもそばにいてくれたからです」
彼女は家族がノリスの夢実現を支えた経緯を次のように振り返った。
「多くの犠牲を払いました、ええ」
「ランドが7歳の時、カートを始めたの。8歳になる頃には弟のオリーと一緒にレースに出るようになって、ふたりの男の子が同じ方向に向かったの。ふたりの娘は別の方向へ進んだのよ」
「だからランドとオリーが子供の頃、成長していく姿を見逃しちゃったの。突然、庭で裸になってトラクターで遊ぶようなことはなくなった」
「あの頃が懐かしいわ。でもね、これは素晴らしいことよ。本当に素晴らしいの」
アブダビGPでのタイトル争いは三つ巴であり、ノリスは優位な立場にいたものの、十分に逆転もありえるポイント差だった。ノリスがチャンピオン獲得を決めるまでの緊張の瞬間、彼の母も落ち着かない時間を過ごしていたという。
「とてもシンプルよ。私たちは一旦イギリスへ帰国したの。洗濯を少しして、庭仕事をして、水曜日は孫のクリスマス劇を見に行ったわ。木曜日にまた飛行機に乗ったの」
「だから混乱した一週間で、とても短い一週間だったわ。でもあの最後の数周は、永遠に感じられたわ」
ノリスが3番手を走行し、着々と残り周回数が減っていく中でも、彼女の心拍数は高いまま。それでも、まだ何かが起きてもおかしくない残り10周のタイミングで、彼女と家族は祝福の準備をするため呼び出された。
「こんな時に準備しろって? 私たちはここにいるのにっていう感じだったわ」
彼女はそう微笑みながら語った。
「そして私の心臓はずっと、あっちこっちに暴れ回っていたのよ」

