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<AKB48・20周年>推し活文化を確立・多様化させた「AKB商法」の功績、ファンをアイドルサクセスストーリーの「共犯者と参加者」に

<AKB48・20周年>推し活文化を確立・多様化させた「AKB商法」の功績、ファンをアイドルサクセスストーリーの「共犯者と参加者」に

(C)AKS
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AKB48は2005年12月8日の結成から20年という大きな節目を迎えた。彼女たちが日本のエンターテインメント界に刻んだ功績は数えきれないが、その中でももっとも大きな影響の1つが、今や社会の当たり前となった「推し活文化」を確立したことだろう。握手券や投票券をCDに付属した「AKB商法」はCDセールスチャートを形骸化させたと批判も大きいが、一方で、ファンがCDやグッズ購入を通して推しのアイドルを「応援し、支える」という「推し活」の関係性や土台を築き上げた。AKB48がこの20年の歩みの中で、いかにして「推し活」の土壌を耕し、現代の多様なファン文化へとつなげていったのかを振り返る。

■「会いに行けるアイドル」がもたらした革命

AKB48が登場する以前、アイドルはテレビの向こう側の存在、コンサートに足を運ぶことで見ることできる存在。アイドルとファンの関係は一方通行で、その距離は遠いものだった。しかし、AKB48は「会いに行けるアイドル」という画期的なコンセプトを掲げ、その常識を根底から覆した。東京・秋葉原に専用劇場を設け、連日公演を行うことで、ファンはいつでも彼女たちに会いに行くことが可能になったのだ。

このコンセプトをさらに強固なものにしたのが「握手会」だ。握手会自体はファンとの交流イベントとして芸能界では古くから行われてきたが、CDに握手券を付属させたのはAKB48が初。CDを購入すれば、後日の特典会でメンバーと直接会い、握手をしながら短い時間言葉を交わすことができる。

この仕組みはCDを単なる音楽の記録媒体から、応援するアイドル(推し)との繋がりを得るためのコミュニケーションツールへと変化させた。ファンはその他大勢の受け手から、メンバーに顔と名前を覚えてもらえる「個」として認識される機会を得たのである。

この直接的でパーソナルな体験は、ファンの中に特定のメンバーを熱心に応援する「推し」という概念を深く根付かせた。これがその後の「推し活文化」を形成するが、「推し活」という言葉が生まれるのはもう少し後のこと。当時は熱心なファン=オタクと見られ、「オタ活」と呼ばれていた。

■ファンの「当事者意識」を高めた推し活システム

この「握手券」だが、AKB48デビュー時にはないものだった。オタ活としては、劇場の受付に手紙やプレゼントを預けるという従来の牧歌的な交流が中心だった。

転機になったのは、劇場の停電で公演が行えなくなったときだという。筆者はその現場に居合わせていないため伝聞になるが、公演の代わりにメンバーとの握手会やチェキ撮影会が行われたという。グループの運営はこれをヒントに、ファンとの関係性をより強固にするためのグッズ購入システムを次々と生み出していった。これは、ファンがアイドルの活動に直接的に関与しているという実感、すなわち、「当事者意識」をますます高めていった。

一時、行き過ぎたグッズ購入への煽りが独占禁止法の警告を受けるという騒動にも発展したが、キングレコードにレーベル移籍した2008年からは「全国握手会」という新たな形を発表。ここで初めて「握手券付きCD」が登場し、日本中を巻き込むオタ活の熱狂になっていく。

■「応援」を可視化し、音楽チャートを席巻した選抜総選挙

AKB48が推し活文化に与えた影響を語る上で、2009年からの「選抜総選挙」も欠かすことのできない象徴的なイベントである。CDに封入された投票券によって、ファンが自分の好きなメンバー(推しメン)に投票し、その得票数によって次期シングルの歌唱メンバーやメディアへの露出度が決まるという仕組みだ。

このシステムは、ファンの「応援したい」という純粋な気持ちを「投票」という具体的なアクションに結びつけ、その結果を「順位」という形で可視化した。「自分の推しをセンターに立たせたい」「もっと世間に見つかってほしい」「自分はこんなに応援している」というファンの熱意がCDの複数枚購入という行動につながり、社会現象とも言えるAKBブームを生み出した。

握手券と投票券という強力なシステムにより、以降AKB48のシングルはミリオンセラーを連発し、CDセールスランキングのトップに君臨した。CDが売れないと言われた時代において、これは音楽業界に大きな衝撃を与えるビジネスモデルとなった。

「AKB商法」と揶揄されたこの手法は、「音楽そのものの価値よりも特典が重視されている」という批判を呼んだのも事実である。しかし、ファンにとってCDを買うことは単なる消費活動ではなく、自らの「推し」への能動的な応援であった。ランキングの順位はファンの熱量の証明となり、CDの複数枚購入は、界隈での「推し」への貢献度を示すもっとも分かりやすい指標になる。それこそトップオタと呼ばれるファンにもなれば、数百枚の購入は当たり前だった。

ファンを外側の応援者ではなく、アイドルのサクセスストーリーにおける「共犯者と参加者」に変えたことこそ、選抜総選挙の最大の功績と言えるだろう。

■アイドル、アスリート、二次元…「推し活」が多様化する現代

批判的な意見も大きかったAKB商法だが、従来の「応援」を跳ね上げ、「推し活」に変えた功績はとても大きい。第3回選抜総選挙後の2011年ユーキャン新語・流行語大賞には「推しメン」がノミネートされ、2021年には「推し活」がノミネートされた。

この頃を境にオタ活は「推し活」へと言葉を変え、今や社会はアイドル、俳優、声優、アスリート、アニメのキャラクター、さらにはYouTuberやVTuberなど多種多様な対象に熱を上げている。それぞれの形で「推し活」を楽しみ、中には「推し活が生きがい」と日々の活力になっているファンもいるだろう。

AKB48は今年20周年を迎え、12月4日~7日は日本武道館で20周年公演を6公演開催、6年ぶりに「NHK紅白歌合戦」に返り咲くなど大きな話題を提供している。全盛期には及ばないとはいえ、今も特別な公演では大会場を満席にする動員力を持っている。この先さらに多様化していくだろう推し活文化の中心に再び立つことができるのか。AKB48の今後の輝きに注目したい。

◆文=鈴木康道


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