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“日本バスケ界の未来”ジェイコブス晶に訪れた試練。フォーダム大の“攻守の要”は体調不良に陥るも「言い訳にはならない」<DUNKSHOOT>

“日本バスケ界の未来”ジェイコブス晶に訪れた試練。フォーダム大の“攻守の要”は体調不良に陥るも「言い訳にはならない」<DUNKSHOOT>

ロッカールームから出てきた際の笑顔が、いつになく力なく感じられた。いつも爽やかで、コミュニケーション能力の高さには定評があるフォーダム大のジェイコブス晶。

 だが、現地時間12月6日(日本時間7日、日付は以下同)のホーリークロス大戦後は、珍しく言葉少なだった。

 この日、ホームコートで最大16点差をつけ、後半残り3分17秒の時点でもまだ10点をリードしながら、終盤に崩れたフォーダム大はまさかの大逆転負け。後半はチームオフェンスが単調になり、最初の9戦で6敗と苦しんでいた相手に、勢いを与えた結果だった。

「最後のプレーがどうとかだけではなく、それより前のプレー、前半や後半の始まりとかでも結構ミスしてしまっていた。そういうのが最後に響いてくるっていう感じの試合かなと思いました」

 久々のベンチ出場だったジェイコブスは、17分4秒のプレータイムで1得点(フィールドゴール0/1、3ポイント0/1、フリースロー1/2)、4リバウンド、1アシスト、2ファウル。もちろん満足できる数字ではなく、何よりも残念なのはチームが崩壊した最終盤、コートに立てなかったことだ。
  ジェイコブスがハワイ大でプレーしていた頃から、その能力を高く評価していたマイク・マグパヨHC(ヘッドコーチ)は、起用法についてこう説明する。

「終盤は彼を起用しなかった。今日の試合での彼にはもっとアグレッシブさが必要だったし、相手選手たちが彼に対して強く当たってきていて、明らかに苦戦していた。昨日の練習に参加できていれば、いつも通り先発させるつもりだったんだけどね」

 ホーリークロス大の選手たちの激しい当たりに対処できなかったのは、ジェイコブスの体調が万全ではなかったからだ。実はこの2日間、食中毒で食事がまったく摂れない状態だったという。マグパヨHCの言葉通り、相手チームの戦術に準備した5日の練習には参加できず、おかげでベンチ登場を余儀なくされた。

「木曜の練習後から何も食べてないです。口に入れるのはフルーツとスムージーだけで、食べるとすぐ吐いてしまう。学校で何か悪いものを食べてしまったようで、食中毒になったのはこれが初めてでした」
  この日はほかにもケガ人が多かったこともあり、強行出場を決断。「体調は言い訳にはならない」とジェイコブス自身は徹底してエクスキューズを拒否したが、やはりコンディションの悪さは誰の目にも明らかだった。身体にほとんど力が入っていない状態に見えただけに、マグパヨHCがゲーム終盤はベンチで待機させたのも理解できる。

 過去2年を過ごしたハワイ大から、ニューヨークのフォーダム大に転校しての1年目。3年生のシーズンを迎えたジェイコブスはまずまずのプレーを続けてきた。

 チーム事情からビッグマンの役割を任され、平均6.8点、4.5リバウンド。コート上で様々なことをこなす多才さゆえに貢献度は数字以上に大きく、“攻守の要”と呼んでも差し支えない。

 夏には日本代表の主力格としてアジアカップで活躍したオールラウンドな21歳は、着実に成長している。後半は5分3秒しかプレーできなかったホーリークロス大戦でも、ジェイコブスが通常のコンディションでありさえすれば、あのような負け方をすることはなかっただろう。本人もおそらくはそれを理解していたからこそ、悔しさは一際だったに違いない。
 「フルではなくても、少しでも出てチームを助けられるならと思ったんですが、試合に出るならしっかりやらないといけません」

 これもひとつの経験になるのだろう。手痛い敗戦で今季6勝4敗となったフォーダム大の、対戦相手のレベルはこれからさらに上がる。特にA-10カンファレンスのカンファレンスゲームでは、ジェイコブスの貢献は絶対必須になる。そんな時期に備えてコンディションを常に整え、次は何か不測の事態があったとしても、できる限りの力が出せるように――。

「こういうことはもうないといいんですけど、次になった時には活躍できるようにしておきたいです。悔しい負け方ですけど、次の試合がある。まだまだシーズンは残っているんで、次こそは頑張りたいと思います」

 2025-26シーズンは残り21戦。カンファレンスゲーム開始まであと3戦。大都会ニューヨークにステージを移したジェイコブスにとって、ステップアップのシーズンは続いていく。

 試練の後で、この悔しさはさらに成長するための新たなモチベーションになるはずだ。

文●杉浦大介

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配信元: THE DIGEST

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