小泉純一郎元首相の「郵政解散」は有名だが、その小泉元首相に倣い、シングルイッシューで解散に踏み切るべきだ、との声が与党内から出てきた。テーマは衆院議員の定数削減をめぐる「身を切る解散」だ。
自民党と日本維新の会は12月5日に衆院の議員定数1割を削減する法案を国会に提出した。野党にも協力を呼びかけ、今国会での成立を目指すが、野党側は反発しており、成立の見通しは立っていない。衆院はかろうじて与党で過半数に達してはいるものの、
「実は自民党内の大半が定数削減に反対。採決に反対あるいは欠席する議員が相次げば、衆院通過すらしないかもしれない」(自民党国対関係者)
高市早苗首相は石破茂前首相が就任後、すぐに解散・総選挙に踏み切り敗北した教訓から、政策遂行を優先させる考えを崩していない。ただ、定数削減法案が否決されれば、維新は連立離脱する可能性がある。政権が一気に不安定になるならば、いっそのこと解散を…というわけだ。自民党中堅議員が言うには、
「内閣支持率が軒並み高い今こそ、解散のチャンス。公明党が政権離脱した穴は、高い支持率の追い風で埋め合わせできる」
これを警戒するのは野党だ。立憲民主党の安住淳幹事長は12月6日、新潟県燕市で記者団に、こう語った。
「常識では考えられないが、内閣支持率が高いので『今だ』と思って実行する可能性はある」
野党の選挙協力の見通しは立っておらず、これも与党にとって狙い目といえる。
自民党内には年明けの外遊を予定する議員がいたが、解散の可能性が出てきたとして急遽、中止した。こうした動きが広がれば「解散風」が急に吹いて、止まらなくなるかもしれない。
となると正月を挟み、年始総選挙に。そうなれば、関係者はお屠蘇気分を味わう余裕などなくなることだろう。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)

