「余生をひとりで過ごすのは寂しい」
そんな思いを抱えた高齢男性が集まる「婚活パーティー」が北関東某所で開催された。
男性の参加年齢が60歳以上・上限なしであるにもかかわらず、女性の参加年齢は「45歳以上65歳まで」となっており、最低年齢だけを比べても男女で15歳の差があり、高齢男性のための集まりであることが伺える。
言葉は悪いが「これはある意味男尊女卑なのではないか?」――そんな違和感を持ちつつ、筆者は特別に主催者の許可を得て、当該パーティーに潜入することになった。
参加者は男性25名に対して女性は15名。募集は各20名ずつだったそうだが、「女性が定員よりも5名少なかったため、会場借り上げの都合もあって男性を補充した」(主催者)とのことだった。
ざっと見まわした限り、確かに女性の方が男性よりも平均年齢で10歳くらい若そうだった。あちこちでし烈なアピール合戦を繰り広げる男性高齢者たち。
「会社を経営しています」「不動産所得があります」等、共同生活を営むにあたって重要となる経済力を誇る男性に対し、そうでない人たちがアピールするものは主に健康面だったのだが、「持病はありません」「何十年も医者にかかったことがありません」「毎日ジムに行って体力作りをしています」などと並んで目立ったのが「性的に現役である」ことだった。
確かに高齢とはいえ男と女である以上、性的な要素も必要かも知れないが「女性を喜ばせることに関しては自信があります」や「その気になれば毎晩でも可能です」などの自慢話に、人生の折り返し時点を過ぎた女性がどれくらい好感を持つのか疑問である。
まして「今でも毎朝、下半身が元気です」 や「亡くなった女房を毎晩喜ばせてました」などの生々しいコメントは、女性の顰蹙を買うだけではないだろか?
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関係を迫る参加者が後を絶たない
「コンプライアンスの面からも『性的な話題は避けるように』と参加者にアドバイスはしているのですが、男性の場合はどうしてもそっちに話が行ってしまいがちなんです。特にビジュアルや経済力に自信のない方にそういった傾向があります。客観的な事実に基づかないアピールはなんのプラスにもなりません」
そう主催者側も困惑している様子だが、さらに主催者を警戒させているのが「不適切なアプローチ」だという。
「『まず身体の相性を確かめてみませんか?』や『朝まで一緒にいてくれたらイイ思いをさせますよ』という感じで女性をデートに誘う人がいるんです。『そういったことはきちんと段階を踏んでから…』とたしなめても『そんな悠長なことをしている時間はない』と反論されてしまいます。特に70代半ば以降の男性に多いですね。余生のこともあるのだと思いますが、かなり性急にコトを進めようとするので女性側が戸惑ってしまうんです」
高齢者婚活において健康であることのアピールは「介護要員にされるのでは?」という女性側の警戒を緩めるのに効果的かも知れないが、性的なアピールは「性欲処理の相手が欲しいだけでは?」といった疑念を抱かせる要因でしかなく、それに惹かれる女性はまずいないと言っていい。
「仮にいたとしても、それを目的に女性が婚活をすることはあり得ないと思います。女性を性的に支配することで優位に立てると思っている古い価値観をアップデートできない高齢男性は婚活向きではありません」
他に非富裕層のアピールポイントとして「係累の少なさ」があった。「両親は他界済み」「兄弟(姉妹)とも疎遠」と聞けば、面倒な親戚付き合いと無縁でいられそうな気がするし、「子どもも独立して生計を営んでいる」と言われたら「養う家族はいない」と安心するきっかけになる。
「経済的精神的に安定した余生を送りたい」と婚活を考える熟年女性が非富裕層の男性を相手にする場合「性に現役である」ことより、こちらの方が好感触なのは間違いないだろう。
取材・文/清水芽々
清水芽々(しみず・めめ)
1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。
