バルセロナは、ラ・リーガ第15節で敵地に乗り込みベティスと対戦。ハンジ・フリック監督は、連戦の疲労を考慮してローテーションを採用した。そのスタメンが発表されると、ひとつの疑問が浮上した。誰がトップ下でプレーするのか。
前線にロベルト・レバンドフスキの名はなく、ダニ・オルモはベンチ外でフェルミン・ロペスとラフィーニャはベンチスタートだった。候補は、ラミネ・ヤマルとルーニー・バルドグジ。答は前者だった。これは、以前から現地で待望論が出ていたプランが実現した瞬間だった。バルセロナを拠点とする一般紙『la Vanguardia』の電子版で大物ジャーナリストのサンティアゴ・セグロラ氏は、「2025年12月6日はメッシがクラシコ(バルサが6-2で大勝)で初めて偽9番としてプレーした2009年5月2日に匹敵する歴史的な日になるかもしれない」と綴っている。
試合は開始6分にベティスに先制されるも、すぐさまバルサが反撃。その攻撃をペドリとともに牽引したのが、ヤマルだった。「バルサはペドリとラミネを中心としたパスワークで、スペースがない中央部分を崩し、さらに2人が相手を引きつけて生じたスペースを他者が利用し、深みのあるサイド攻撃を展開した」と戦術アナリストのアルベル・モレン氏は2人がピッチ中央で連携するメリットを解説する。
その恩恵を受けた1人がバルドグジで、当のヤマルと流動的にポジションチェンジを繰り返しながら、3得点に絡む活躍を披露(試合はバルサが5-3で勝利)。それまで5試合連続出場なしで、一部のメディアで冬の退団も取りざたされていた20歳のアタッカーのアピールを、ラジオ局『onda cero』の実況アナウンサー、アルフレッド・マルティネス氏は「バルサのユニホームを着て以来、最もコンプリートなパフォーマンスだった。前半バルサが決めたほぼすべての得点に関与し、自らも1ゴールを決めた。素早く次の展開を読む洞察力が出色だった」と評価する。
注目は今後の起用法だ。メッシはそのクラシコを境に新ポジションに定着し、それがバルサに黄金時代を築き上げた。著名なジャーナリストで長年のバルサウオッチャー、リカルド・トルケマダ氏は「トップ下はフェルミン、ダニ・オルモ、さらにはラフィーニャが優先的に起用されるポジションだ。ヤマルのトップ下案はいったん棚上げになるだろう」と慎重な見方を示す。その一方で、「ヤマルの才能と知性は、中盤での流動的な崩しを容易にする。サイドでプレーするほうが、より明確なパスラインが確保されるように見えるが、実際は有利な状況でボールを受ける回数は少なく、往々にして個の力で局面を崩さなければならない。それがピッチ中央へとポジションを移せば、より影響力の大きいエリアでボールに関与し、プレーを完結させるができる。ペナルティエリアからも近く、その周辺ではドリブル、シュート、ラストパスなど、違いを作る可能性が無限に広がる」とヤマルのプレースタイルを踏まえてゆくゆくはトップ下に定着する形になると予想する。
他方で、中盤の一角でプレーする機会がさらなる成長を促すきっかけになると期待を寄せるのがバルサ贔屓のスポーツ紙『SPORT』の副編集長、シャビエル・オルトゥニョ氏だ。「フリックは、ラミネに対しサイドにばかり固執して突破しようとするのではなく、内側へも切り込みながら、前を向いてボールを持ち出し、ドリブル以外のプレーでも優位性を生み出すよう求めている。ラミネは現在18歳で、伸びしろはたっぷりある。目下、いつ攻撃のスイッチを入れるべきか、いつボールを離すべきか、いつドリブルで相手を剥がすべきかといった戦術眼に日進月歩で磨きをかけている。しかし、彼のサッカーは依然として絶え間ないリスクの連続だ。フリックは、そのジェットコースターのようなプレーを、スリルを失わない範囲で抑えようとしている。
指揮官は、状況の読み方、間の取り方を教え込み、トリッキーな業師にとどまるのではなく、周囲を見ながらチーム全体を意識して、攻撃をクリエイトし、チャンスを作る責任を背負ってプレーするよう指導している」
トルケマダ氏はこう結論づけている。「トップ下でプレーするのはラミネのキャリアにおいて試合への影響力を高めるための自然な進化だ」
文●下村正幸
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