12月7日、秋のダート王決定戦となるチャンピオンズカップ(GⅠ、中京・芝1800m)が行なわれ、単勝3番人気に推されたダブルハートボンド(牝4歳/栗東・大久保龍志厩舎)が、2番人気のウィルソンテソーロ(牡6歳/美浦・高木登厩舎)との激闘をハナ差制して優勝。2015年のサンビスタ以来10年ぶり、レース史上2頭目の牝馬による本レース制覇を達成した。
2馬身半差の3着には後方から追い込んだ7番人気のラムジェット(牡4歳/栗東・佐々木晶三厩舎)が入り、このレースがラストランとなるベテランのメイショウハリオ(牡8歳/栗東・岡田稲男厩舎)も8番人気の低評価を覆す4着に健闘。5着には先行した4番人気のアウトレンジ(牡5歳/栗東・大久保龍志厩舎)が粘り込んだ。
一方、オッズ2.2倍の1番人気に推されたナルカミ(牡3歳/美浦・田中博康厩舎)は先行争いに巻き込まれる形で13着に大敗。ダート2戦目となった5番人気のシックスペンス(牡4歳/美浦・国枝栄厩舎)も積極的に先行したが、最後は失速して11着に敗れた。
レースは予想通り激しい逃げ・先行争いで始まった。1番枠から飛び出したウィリアムバローズ(牡7歳/栗東・上村洋行厩舎)が先手を取るが、そこへ暴走気味のシックスペンスが絡んだことでペースが上がる。直後の3番手でダブルハートボンドが折り合い、ナルカミは控えて4番手。大外枠からのスタートになった6番人気のルクソールカフェ(牡3歳/美浦・堀宣行厩舎)も先行しようとしたが、馬群の内には入れず、距離ロスのある外を回らされ、他の有力馬は中団から後ろに位置を取ってレースを進めた。
第3コーナーを回ったあたりでややペースが緩んだため、後続も徐々に前との差を詰めながら一団となって直線へ向く。逃げたウィリアムバローズとシックスペンスが失速したところで手応え抜群のダブルハートボンドが先頭に躍り出て、外からはメイショウハリオが脚を伸ばすが、そこへ馬群を割って急襲したのがウィルソンテソーロ。進路を切り替えてダブルハートボンドの内へ潜り込むと2頭でのマッチレースに持ち込み、数十メートルに渡る激烈な追い比べが展開されて馬体を併せたままゴール。勝負は写真判定に持ち込まれたが、わずかにハナ差、ダブルハートボンドが先着していた。その差は9㎝だったとされる。
一昨年、昨年のレモンポップに続いて本レース3連覇となった坂井瑠星騎手は、「本当に素晴らしいのひと言です。牝馬でここまでなかなか順調には来られなかったのですが、一歩一歩ステップアップして、GⅠにたどり着くだけでも凄いことですが、勝つことが出来て嬉しく思います」とコメント。続いて、「内からウィルソンテソーロが来ましたが、そこからもうひと踏ん張りしてくれて、本当に彼女の頑張りのおかげです」と愛馬を褒め称えた。 ダブルハートボンドは昨年の8月にデビューすると、そこからオープンの三宮ステークスまで5連勝。重賞初挑戦となったブリーダーズゴールドカップ(JpnⅢ)こそ2着に敗れたが、11月のみやこステークス(GⅢ)を勝って通算成績を7戦6勝、2着1回としていた。逃げ・先行で見せる優れたスピード能力はもちろんだが、今回見せた競って抜かせない勝負根性は牝馬離れしたものだ。戦前に憂慮された牡馬との初対戦という壁も乗り越えたいま、海外遠征も含めて今後の進路が大いに注目される。
ウィルソンテソーロは本レース3年連続2着という珍しいケースとなった。脚質的に勝ち身に遅いためGⅠ(JpnⅠ)勝ちは2回のみだが、一貫してダートのトップクラスで戦ってきた実力はやはり一級品。前走のJBCクラシック(JpnⅠ)5着からの見事な巻き返しを見ると、7歳を迎える来年もまだまだ勝ち負けに絡んできそうだ。
3着以下は前の2頭にかなりの差を付けられているため、いわゆる格の違いを感じさせられるが、上位入線したなかでは、馬群の狭いところを抜けて追い込んだ4歳のラムジェットに今後の伸びしろがあるように思う。
期待された3歳の上り馬2頭には苦い経験になった。ナルカミは陣営が危惧していたようにレース前からテンションが高く、またシックスペンスに絡まれたため息が入らず、直線の半ばで力尽きた。逃げ一辺倒の脚質をどうするかという問題も含め、メンタルな成長が待たれる。
本レース主力視したルクソールカフェはやはり大外枠が響き、外々を回らされて距離損したうえ、直線では嫌気が差したようにずるずると下がってしまった。こちらも本格化するには、もう少し時間を要しそうだ。
ダート2戦目となったシックスペンスは、掛かり気味にハナにまで行ってしまったのがすべてで、これでは直線の失速も止む無しと言えるもの。しかしこの一戦で見限るのは早計で、来春の定年引退を控える名匠・国枝栄調教師は必ず何らかの手を打って、来年のフェブラリーステークス(GⅠ)までには立て直してくるだろう。
文●三好達彦
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