2025年のスーパーフォーミュラは、昨年から一転して複数の海外ドライバーを見ることができた1年となり、4人の外国籍ドライバーがフル参戦しました。
その中で、ひとりは期待値を大きく上回る活躍を見せ、ふたりは一定の成功を収めたと言えるまずまずの結果を残し……そして残念ながらひとりは期待に応えることができず、シートを失うことになってしまいました。
まず、期待を超える活躍をしたドライバーは言うまでもなくイゴール・フラガです。フラガは、山本尚貴の後任としてNAKAJIMA RACINGから今季デビューを果たしました。NAKAJIMA RACINGとしてはホンダ系のワークスドライバーを新たに迎えるという選択肢もあったでしょうし、少々意外な人事とも言えましたが、結果的には大成功となりました。
フラガは昨年、NAKAJIMA RACINGのリザーブドライバーとして1年を過ごしました。そこでレースウィークの働き方を学びながら、山本、そして後にチームメイトとなる佐藤蓮の違いを観察し、チーム内で関係性を構築していきました。この経験は彼が即戦力として活躍する礎になったと言えます。実際彼は、開幕ラウンドで5位入賞という素晴らしいスタートを切りました。
とはいえ、同じく鈴鹿で行なわれた最終ラウンドで初優勝を記録し(ルーキーの勝利は2023年の太田格之進以来)、ランキング6位でシーズンを終え、ルーキーオブザイヤーの争いを完全なワンサイドゲームにしてしまうとは、当初は誰も予想していなかったでしょう。
フラガは“海外勢”といっても、日本育ちで日本語をネイティブに操れるため、他の外国人ドライバーよりもコミュニケーションの点でアドバンテージがあったのは確かでしょう。とはいえ、フラガが今季突出した存在だったことに疑いの余地はありません。
フラガに次ぐ成績を残したのが、ランキング8位となったTOM'Sのサッシャ・フェネストラズ。3年ぶりにシリーズに復帰し、フランスからアルゼンチンにライセンスを変更した彼にとっては、浮き沈みの激しいシーズンになったと言えます。
フェネストラズは当初、フォーミュラEに参戦していた2年間のブランクを埋めるのに時間を要しましたが、4月のもてぎラウンドでは8位と4位に入り、TOM'Sの2台目が大苦戦していた状況から少なくとも進歩を見せました。7月の富士ラウンドからはミハエル・クルムがサポートにつき、チームとの意思疎通もさらにスムーズになりました。
そこからは雨の第8戦SUGOで2位。10月の富士戦では、セーフティカー先導のまま途中終了というレースになりましたが、ポールトゥウインを飾りました。ただフェネストラズ自身が強調したように、その2レースはいずれもローリングスタートでした。鈴鹿での最終ラウンドでは、シングルグリッドを確保しながらスタートでポジションダウン。来季もこの体制を継続するなら、フェネストラズと担当の大立健太エンジニアにとって課題は明確でしょう。
ただフェネストラズにとって今後の励みになる点は、後半戦の予選ではチームメイトで前年王者の坪井翔と互角だったということ。終盤の5戦中3戦で坪井を上回ったことは大きいと言えます。TOM'Sにとっても、2台のパフォーマンス差が大きいという長年の課題を解決したことで、今後さらに戦闘力を高めていく可能性があります。
加えてフェネストラズは今年、バーレーンでトヨタのWECハイパーカーをテストしましたが、これはトヨタがスーパーGTを含めた最近のフェネストラズの活躍を評価している証左と言えるでしょう。結果だけを見れば物足りなく映るかもしれませんが、十分成功と言えるシーズンでした。
ザック・オサリバンについても同様のことが言えるでしょう。もう忘れ去られているかもしれませんが、彼はデビュー戦の鈴鹿でいきなり8位に入賞し、ルーキーオブザイヤー争いの本命になると期待されていました。それでもKONDO RACINGは例年のように浮き沈みが激しく、彼は安定して結果を残すことができませんでした。
結局、開幕戦以外でポイントを獲ったのは、鈴鹿とコース特性が似ていると言われるSUGOでの第8戦(7位)。実際オサリバン本人も、自身のマシンは高速コーナーで速さを見せられると話していました。またSUGOからは日英ハーフのレーシングドライバー、ボルジャ・ダグラスがチームに合流し、クルムと同じ役割を担ったことで、オサリバンとチームのコミュニケーション改善に寄与しました。
ただ鈴鹿での最終ラウンドは、不可解なストレートスピード不足に悩まされて無得点。シーズンを通してわずか7ポイントの獲得に終わり、チームメイトの山下健太とは4倍近い点差をつけられてしまいました。ただ、チーム全体としてもここ数年の中では最も苦戦したシーズンとなったため、それも踏まえて評価する必要があります。
またオサリバンはスーパーGTのGT300クラスにも参戦し、CARGUY MKS RACINGで小林利徠斗とコンビを組んでチャンピオン争いにも絡みました。そのため、日本で長期的にキャリアを築けるだけの素質は見せていると言えます。
残念ながら、オリバー・ラスムッセンに関しては同じことが言えません。彼は開幕ラウンドでクラッシュして背骨を骨折したことで出遅れ、第5戦からの参戦となる苦しいスタートとなりましたが、それだけがノーポイントのシーズンに終わった原因とは言い難いです。
現実として、TEAM IMPULは苦境から脱するためにも経験値のあるドライバーが必要だったと言えますが、ラスムッセンにはその経験値が不足していました。それに担当エンジニアだったアメリカ人のオスカー・ゼラヤが、ラスムッセンが復帰する前にチームを離脱したことで、状況はさらに厳しくなりました。
チームかドライバーか……責任の所在がどこにあるのか、断言するのは難しいです。ラスムッセンはチームメイトの高星明誠に予選で勝ち越しており、時折速さを見せたのはプラス評価と言えます。ただ最終ラウンドの鈴鹿でもフリー走行でクラッシュを喫するなど、ミスも目立ちました。
ただラスムッセンの名誉のためにも伝えたいのは、彼はどんなに不振に陥っている時でも、メディアに対して明るく、礼儀正しく振る舞っていました。インパルが苦戦していたことを考えても、彼のスーパーフォーミュラ挑戦が不完全燃焼の1年で終わってしまう見込みであることは非常に残念です。
12月の鈴鹿テストには、オサリバンがインパルのマシンをドライブすることになっており、彼が来季のシートに収まるのではないかと予想されています。心機一転、新たな環境で臨むことになるオサリバンがどんな結果を残せるかも、興味深く見ていきたいところです。

