このネット全盛時代、誹謗中傷への向き合い方は人それぞれ。芸能界ではタレントの個性が色濃く反映される。例えば…やす子、ハライチ・岩井勇気、有吉弘行という3人のお笑い芸人が示した「アンチとの付き合い方」は特徴的だ。
やす子が採用しているのは、徹底的な「整理術」。1日にエゴサーチを50回おこなって、称賛コメントはスクショして保存。悪口は即座にブロックしているという。昨年、フワちゃんからの心ない言葉の後、やす子本人にも届いた中傷コメントはきっちりスクショしてブロックした、と話していた。
対照的なのが岩井だ。12月7日にXで〈どんな手を使っても必ずに(特定する)〉と宣言。自分の服装を「キモい」と批判したユーザーに対して、本気なのかネタなのかが定かではない「特定予告」を展開したのだ。
この投稿は1700万回のインプレッションを記録。ユーザーがポストを消したり鍵垢にしても〈いや、もう遅い〉と追撃。この一連の対応はSNS上で話題沸騰し、誹謗中傷をなくすための「抑止力」として機能している面がある。
対して有吉は、笑いで昇華させる。2024年5月25日、あるユーザーが「櫻井・有吉THE夜会」(TBS系)の番組宣伝ポストに、こんな投稿をした。
「有吉さんの口が悪すぎませんか? 観てて気分が悪い 今までに出られたゲストの方にあの有吉の下品な言い方、ゲストに感謝のない言い回しに気分を害した人はたくさんいるはずだし表情に出ていた方も居た! 品もないし、ホントにお笑いの番組と勘違い卑!!」
最初は「有吉さん」だったが、途中から感情が高ぶったのか、呼び捨てに変わった。
有吉はこの投稿を引用すると〈最初有吉さんで、後半から感情あふれて有吉呼ばわり。気分が悪いです。カスハラでしょうか?〉とユーモアで返すも、その数分後に方針を一転。相手のプロフィールを確認して〈カスハラかと思ったら、櫻井くんのファンだった。お詫びして訂正します〉。ユーザーは実際に櫻井の熱烈なファンであり、有吉への批判は番組内での櫻井とのかけ合いに関する不満だったのだ。怒りを笑いに変えつつ、相手の背景を理解する配慮を見せたといえる。
3人に共通するのは、アンチコメントに決して沈黙していない、という点だ。怒りの感情が沸いても6秒間やり過ごすことで冷静になれる「アンガーマネージメント」や、ネットの書き込みを無視するスルースキルを身に付ける、ということが言われている。だが今の自己防衛は決して逃げではなく、いかに主体的に立ち向かうか…にあるのかもしれない。
(田中皇治)

