移籍12名は“即戦力補充ドラフト”に
結果として移籍した12名の顔ぶれを見ると、若手の再生ではなく、即戦力の補充が目的化していることが明らかだ。
巨人←松浦慶斗(左腕素材の再生狙い)
日本ハム←菊地大稀(奪三振力)
オリックス←平沼翔太(巧打・選球眼)
西武←茶野篤政(叩き上げの外野)
DeNA←濱将乃介(機動力)
中日←知野直人(ユーティリティ)
阪神←濱田太貴(右の長打力)
ロッテ←井上広大(長打不足の補填)
楽天←佐藤直樹(外野のレギュラー候補)
ヤクルト←大道温貴(中継ぎ強化)
ソフトバンク←中村稔弥(左の便利枠)
制度導入当初に掲げられていた“若手救済”の理念は、もはやほとんど消えている。
制度は前へ、現場は後ろへ――危機の前夜
名簿制度の見直しなど、NPBは制度を前へ進めようと努力している。しかし、実際に運用する球団の姿勢が変わらない限り、現役ドラフトは理念から遠ざかり続ける。
2巡目ゼロと実質トレード化――。これらは制度が抱える“構造的な歪み”の表れに過ぎない。このねじれが続けば、現役ドラフトは「出場機会を与える制度」ではなく「球団都合の交換市場」へと完全に変わってしまう可能性がある。
制度を理念へ戻すためには、「球団に“出すメリット”を与える仕組み」「名簿制度の透明性向上」といった運用面の改革が不可欠だ。
2025年の現役ドラフトは、静かに、しかし確実に“崩壊のカウントダウン”を告げる契機となった。
