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<とんでもスキルで異世界放浪メシ2>親子三世代でハマる“異世界飯”の秘密 MAPPAプロデューサーが語る「安心感」と「とんでもスキルノート」

<とんでもスキルで異世界放浪メシ2>親子三世代でハマる“異世界飯”の秘密 MAPPAプロデューサーが語る「安心感」と「とんでもスキルノート」

「とんでもスキルで異世界放浪メシ2」
「とんでもスキルで異世界放浪メシ2」 / (C)江口連・オーバーラップ/MAPPA/とんでもスキル

江口連による大人気ライトノベルを原作とし、MAPPAが制作を手掛けるTVアニメ「とんでもスキルで異世界放浪メシ」(毎週火曜深夜0:00-0:30、テレビ東京系/放送直後より Prime Video にて見放題最速配信、ほかプラットフォームにて翌週日曜深夜0:00より順次配信)。主人公・ムコーダ(CV:内田雄馬)が、固有スキル「ネットスーパー」を駆使して、伝説の魔獣フェル(CV:日野聡)、スライムのスイ(CV:木野日菜)、そしてSeason 2から加わったピクシードラゴンのドラちゃん(CV:村瀬歩)らと共に異世界を旅する“異世界グルメファンタジー”だ。

2025年10月から放送中のSeason 2もいよいよクライマックス。圧倒的なクオリティで描かれる料理の数々と、心温まる日常描写は、深夜アニメの枠を超えて多くの視聴者に癒やしを与えている。今回は、本作のプロデューサーを務めるMAPPAの中井友佑氏にインタビューを実施。実在企業20社とのコラボの裏側や、制作現場の熱量を示す「とんでもスキルノート」の存在、作品の魅力を支える秘密をたっぷりと語ってもらった。

■親子三世代で楽しめる「安心感」の正体

ーーSeason 2の放送も佳境ですが、手応えはいかがですか?

ありがたいことに、非常に大きな反響をいただいています。SNSなどの反応を見ていると、我々が届けたいと思っていた「いつもの定食屋でいつものメニューを頼むような安心感」を、視聴者の皆さんがしっかりと受け止めてくださっているなと感じます。「『とんでもスキル』ってやっぱりこれだよね」という声をいただけて、素直にうれしいですね。

ーー本作は、いわゆる異世界ファンタジー作品のファン層を超えて、かなり幅広い層に愛されている印象があります。

それはすごく感じています。以前イベントを開催した際、会場を見て驚いたんですよ。通常のアニメイベントだと20代、30代の方が中心なんですが、本作の場合は小さなお子さん連れのご家族や、ご高齢の方々もたくさんいらっしゃって。「ああ、こういう方たちが見てくれているんだ」とあらためて実感しました。SNSを見ていても、偏食だったお子さんが「スイちゃんが食べているから」と言ってお肉を食べるようになったとか、親子で一緒にご飯を食べながら見ているといった感想をよく見かけます。だからこそ、プロデューサーとして一番大切にしているのは、この作品が持つ「安心感」を絶対に崩さないこと。Season 1で培った空気感を守りながら、より多くの方に届けることを意識してSeason 2の制作に臨みました。

ーー本作の大きな特徴といえば、実在の企業の商品がそのまま登場することです。Season 2では協力企業が20社に増えたそうですね。

そうですね。Season 1の経験があったので、今回は脚本開発の段階から「この料理を作るなら、あの調味料があるよね」とリストアップして進めることができました。

ーーこれだけ多くの企業が参加していると、やはり「ウチの商品を出してほしい」といった要望も多いのでしょうか?

いえ、それが全くないんです。これは我々がお金をもらっているわけでも、逆にお支払いしているわけでもない、純粋に「作品を盛り上げよう」という形で集まってくださっているコラボレーションなんです。企業さんからも「商品を出してくれ」という要望はなくて、あくまで「ムコーダさんだったら、ここではこれを買うよね」というクリエイティブファーストでやらせていただいています。

ーーあくまでムコーダの生活感が基準なんですね。

そうですね。「ムコーダさんならセレブ向けではなく、庶民向けのこっちを買うはずだ」とか、毎回監督たちと話し合いながら決めています。企業さんには、アニメのコンテや、作画の参考にするために撮影した実写の調理映像などを確認していただいて、「形状や使い方は間違っていないか」というチェックをしていただいています。

ーーなるほど。視聴者としても「知っている商品」が出ることで、味の想像がついて余計にお腹が空くんですよね。

そこは狙いでもあります。それに、当たり前ではありますが、我々としても絶対に「食べてマズい」という描写はしません。みんなでご飯を美味しそうに食べるというのは重要なテーマですから、そこで企業さんと思いがすれ違うことはありませんでした。

ーーちなみにドラゴンの肉などは実在しませんが、あれはどうやって再現しているんですか?

ドラゴンの肉については、ムコーダさんが作中で「鶏肉と豚肉と牛肉のいいとこ取り」みたいな食レポをするので、それをヒントに「再現するならローストビーフかな」とあたりをつけて、実際にローストビーフを作って撮影していますね。

ーー実在しない食材まで、一度リアルで作っているんですね!

そうなんです。まずは実写の料理を作って、それをアニメに起こしているので、実は作中でムコーダさんが作っている料理は、現実でも作れるものばかりなんですよ。

■スタッフも視聴者も巻き込む「食卓の幸せ」

ーーSNSでは、アニメに登場した料理を実際に再現してアップするファンも多いですよね。

本当にありがたいです。実は、うちの宣伝チームも毎週、アニメに登場した料理を実際に作ってSNSに投稿しているんですよ。

ーーあれは宣伝チームの皆さんが作っていたんですか?

そうなんです。Season 2からはムコーダさんがオーブンを使い始めたので、再現の難易度が上がってしまって(笑)。「ローストコカトリスのピラフ詰め」の回なんて、家にオーブンがないスタッフが、わざわざ実家に帰って家族と一緒に焼いて撮影したくらいですから(笑)。

ーーそれはすごい熱量ですね!

そうやってスタッフ自身も楽しみながら作っていますし、それを見た視聴者の方も「今夜の献立はこれにしよう」と思ってくれたら嬉しいですよね。ただ、フェルたちはよく「肉が食いたい」って言うじゃないですか。そうすると、どうしても画面が茶色くなりがちで、そこはちょっと困ったところなんですよ(笑)。

ーーたしかに!肉料理は美味しいですが、絵的には茶色一色になりがちです。

小説や漫画ならそれでもいいんですが、アニメで色が着くと、どうしても彩りが欲しくなる。なので、アニメ版のアレンジとして「ちょっと赤を足してみよう」とか「サラダで緑を添えよう」といった工夫をしています。

ーーそういった細かい配慮があるんですね。

あとは、ムコーダさんの料理って、凝っているようで実は「時短」の要素も入っているのが共感を呼ぶポイントだと思うんです。先ほどの「ローストコカトリスのピラフ詰め」にしても、中に詰めているのは実は冷凍ピラフだったりしますし。

ーーたしかにそうでした。

イチから作るのは大変だけど、冷凍ピラフを詰めればそれっぽくなるし美味しい、みたいな。そういう「ちょっとラクしよう」という感覚が、忙しい現代人の視聴者にも刺さっているのかもしれません。私自身も、ムコーダさんと同じタイミングで時短料理を作ったりしますから(笑)。

ーー思わずチャレンジしたくなる、絶妙な難易度ですよね。

結局のところ、この作品の根底にあるのは「食」というもっとも普遍的なテーマなんです。食卓をみんなで囲むというのは一つの幸せの形ですし、ムコーダさんたちが「一緒に食べようよ」と言ってくれているような感覚にもなれる。その「幸せの共有」が、この作品の最大の魅力なのかなと思っています。

■制作秘話:緻密な計算と「とんでもスキルノート」

ーー制作面についてもお伺いします。アクション作品に定評のあるMAPPAさんが、こういった日常系の作品を手掛けることの凄みを感じるのですが、松田清監督のフィルム作りについてはいかがですか?

松田監督は、とにかく堅実でストイックな方です。この作品は原作小説、コミカライズと複数のバージョンがあるのですが、アニメ化にあたって設定や流れが破綻しないよう「とんでもスキルノート」を作っているんです。

ーー「とんでもスキルノート」ですか?

はい。話数ごとに、原作ではどうだったか、コミカライズではどう描かれているか、そしてアニメではどうするかを手書きでびっしりとまとめたノートです。それを見た時は正直感動しましたね。その緻密な設計図があるからこそ、アニメオリジナルの展開や構成も自然に受け入れられるんだと思います。

ーーこの時代に手書きでそこまで…!でもだからこそ、原作ファンも納得のクオリティになっているんですね。

そうですね。その堅実さが、作品全体の安心感に繋がっているのだと思います。

ーーそんな緻密に構成している「とんでもスキル」ですが、特に印象に残っている回はありますか?

第18話のダリルとイーリスのエピソードなどは、まさにその構成力が光る感動回でした。

ーーあの回は、いつもと少し違う、涙なしでは見られないエピソードでした。

あそこは今までにはない「泣ける回」として、シナリオ段階からかなり意識して作りました。劇伴もあの回のためだけに曲を作っていただいたりして。ダビング(音響作業)の時に、まだ絵が未完成の状態でも、声優さんのお芝居と音楽、効果音が乗った時点でウルッときてしまったくらいです。ムコーダさんが意外と涙もろいという一面も見られましたし、個人的にも印象深いエピソードですね。

■ プロデューサーの流儀:「チェンソーマン」との反復横跳び

ーー中井プロデューサーは「チェンソーマン」や「忘却バッテリー」なども担当されていますよね。作風が全く違いますが頭の切り替えは大変ではないですか?

もう、めちゃめちゃ切り替えています(笑)。製作中は「チェンソーマン」と「とんでもスキル」を1日の中で往復することもあったので、脳内で反復横跳びをしているような感覚ですね。

ーー振り幅がすごすぎます(笑)。

片や大スケールのバトルを繰り広げていると思えば、片やほのぼのとした食事シーンですからね(笑)。でも、目指す方向性は違っても「エンターテインメントを作る」という熱量は同じです。それぞれの作品でお客さんに届けたいものが明確にあるので、そこに向かって全力を注ぐだけですね。

ーーちなみに、中井さんご自身は料理はお好きなんですか?

好きですね。特にカレーにはこだわりがあって、一時期はスパイスから作ったりもしました。作中でムコーダさんがカレーを作るシーンが出てくるんですけど、あそこは私もすごく楽しみにしてました(笑)。

ーーいよいよSeason 2もクライマックスです。最後に、今後の見どころとファンへのメッセージをお願いします。

Season 1の最後で「海に行こう」という話をしていましたが、ついに海が見えてきます。新たな街で、ムコーダさんたちが一体何を食べるのか、ぜひ楽しみにしていてください。

ーーこのままずっと続いてほしいという声も多いと思います。

この作品は、ただ美味しいものを食べて、みんなで笑い合う。そんな「幸せの共有」を描いています。私自身も、この作品を見ながらご飯を食べているとすごく癒やされるんですよ。視聴者の皆さんにとっても、この作品が日常の一部となり、見終わった後に「あー、お腹すいたな」とか、「何か作ろうかな」とか、「明日も頑張ろう」と思えるような存在であり続けられたらうれしいです。これからも長く愛される作品になるよう頑張りますので、引き続き応援をよろしくお願いします。

■文=岡本大介

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