まさにスーパースターのような登場だった。
岩佐歩夢が、驚きの形で鈴鹿サーキットに降り立ったのだ。そしてすぐにスーパーフォーミュラのマシンに乗り込み走行。大きな注目を浴びた。
12月9日(火)、岩佐の姿はアブダビのヤス・マリーナ・サーキットにあった。岩佐はF1のポストシーズンテストにヤングドライバー枠で参加し、レッドブルRB21をドライブした。周回数は121周。総合5番手のタイムを記録した。
その後岩佐は日本に飛び、12月11日から鈴鹿でのスーパーフォーミュラのテストに参加する予定だった。あまりにも忙しいスケジュール……さすが世界をまたにかけて活躍するレーシングドライバーだというところを見せた。
しかし岩佐は、さらに驚かせてくれた。走行予定を、1日前倒ししたのだ。
日本に到着後、ヘリコプターに乗り込み、鈴鹿サーキットへと空路やってきたのだ。F1日本GPの開催時ならまだしも、日本国内のレースではなかなか見られない事例だ。
そして鈴鹿に到着するとすぐに準備を整え、SF23に乗り込んだ。ガレージに到着してからマシンに乗り込むまで、約15分という時間しかなかった。
「(アブダビの)18時に走行が終わって、デブリーフィングに出席して、そのまま空港に向かって日本にやってきました」
そう岩佐は語った。
「今回は成田から、ヘリで来ました。2時間弱くらいですね。酔いも大丈夫でした」
「ここまでタイトなスケジュールだったことは、今までなかったですね。でも、100%ではなかったですけど、自分が想定していたよりも良いコンディションで走れたかなと思っています」
しかし大変だ。F1マシンを1日中走らせ、その後飛行機、ヘリコプターと乗り継いで、サーキットに着くやいなやスーパーフォーミュラのマシンを走らせる……常人ならば、絶対に頭がこんがらがるだろう。しかし岩佐は、こう力強く語った。
「それが、自分がドライバーとしてやるべきことです。そこができなければ、プロじゃないと思います」
なお岩佐の移動中、驚きのニュースが伝えられた。レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを長く務めてきたヘルムート・マルコ博士が、今年限りで同職を退くことになったのだ。
自身の来年については「何も言えない」と語る岩佐だが、マルコ博士が退いたとしても、自分がやることに変わりはないと語った。
「何かしら動きが変わるとか、方針が変わるとか、そういうチームとしての変化がある可能性はあります」
「でも自分にとっては、どうでもいいってことはないですけど、だからと言って僕のやることが変わるかっていったら、別に変わりません」
「だからそこに関しては、今は別に気にしていないですね」
超タイトスケジュール、ヘリ移動、そしてマルコ博士の退任……外から見れば、激動の1日、2日を過ごしたように見える岩佐。しかしそういうものに動じることなく、ドッシリと構えているように感じられる。
今年のスーパーフォーミュラのチャンピオンに輝いただけでなく、また一歩成熟したドライバーに成長した……そんな風に感じられる受け答えであった。

