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クオリティを損なうことなく、強度が増した――まるで何人ものペドリがプレーしているような…【現地発コラム】

クオリティを損なうことなく、強度が増した――まるで何人ものペドリがプレーしているような…【現地発コラム】


 スピード化が進む現代フットボールの犠牲となって、パウサ(スペイン語でタメ、間という意味)は消えたと言われるが、それは嘘だ。パウサはこれまでと同じくらい存在している。ただ、そのすべてをペドリが独占しているだけだ。

 パウサとは、プレーの流れを減速させて時間と空間を再構築する個人技の1つだ。理解が難しいだけでなく、実行も難しい。これは最も有能なタレントが活用するコンセプトであり、スピードと同じくらい相手DFのバランスを崩す。フットボールにおいて減速は信じられないほど時間を稼ぐために役立ち、その定義が示すように、隠れていたスペースを作り出すために有用だ。

 少し前に、ペドリは『エル・パイス』紙のインタビューで、あまり注目されなかったある発言をしている。

「選手は常に自分が思っているよりも1秒多く時間を持っている」

 これは彼のプレーと、特別な才能を持つ選手たちの最も繊細な強みを表現する素晴らしい言葉だ。平凡な選手には時間がなく、クラックには時間が余っている。
 
 ペドリは主戦場の中盤で周りを囲まれる中でも、急ぐことなくコマのように回転し、相手の虚を突いて猫のようなリズミカルな動きで置き去りにする。密集の中では通常、少し慌てふためくものだが、ペドリの場合はそうではない。彼は、水晶のように絶対的な方向感覚を持っている。

 そのエリアで彼は攻撃のリズムを作る。時には減速させ、時には加速し、常に状況をクリアにする。そして組み立てに関与しながら、ファイナルサードに入ると、彼のアイデアは、目指すべきゴールがあることを思い出したかのように突然広がりを見せる。別のペドリの出番だ。

 戦略家として振る舞っていたMFが、創造的な使命を持って不確定要素を生み出すメディアプンタ(トップ下)へと変貌を遂げる。プレーに鋭さを加えるのだ。長短のパスを織り交ぜながら、左右に揺さぶるサイドチェンジを駆使してラフィーニャとラミネ・ヤマルにボールを供給し、混雑したエリアで彼だけが発見した隙間へパスを通し、ネットにパスをするように自らゴールを決める。どんな場面でも控えめな態度で、自分の天才性を誇示するのではなく、子供のような真剣さでプレーする。
 
 私は彼を一目見て気に入った。不思議なことではない。彼は天性の才能の持ち主だからだ。しかしバルサでの最初のシーズンにすでに皆を魅了していたため、レモンを搾るように酷使された。その代償として、度重なる怪我に見舞われ成長は鈍化した。

 ますますフィジカル的になっている現代フットボールで、彼の将来性に疑問が投げかけられた。そして、彼を憤慨させた噂によって、プライベートにスポットライトが当てられた。どのような対策が取られたかは分からないが、今、彼のフィジカルは充実しており、明らかにプレーゾーンが広がっている。

 端的に言えば、クオリティを損なうことなく、強度が増した。もちろんアスリートであることとフットボール選手であることは別物だが、試合を見ていると何人ものペドリがプレーしているような感覚に陥る。なぜなら時の経過が彼の多彩さに磨きをかけたからだ。
 
 バルサが得意とするポゼッション重視のフットボールで、ボールを失ったら、ペドリは真っ先にプレッシャーをかけ、奪い返せなかったら、すぐに走って戻る。そのすべての動きは、彼の使命感に支えられている。100m×70mのピッチで、彼は隅々までカバーする。

 その支配的なオーラは人々を魅了し、応援するというよりもむしろ呼び出すために彼の名前をコールしている。この現象はバルサでもスペイン代表でも起こっている。まるで彼のプレースタイルが人々を落ち着かせるかのように。

 それは、彼が身につけた知性の賜物であり、パウサの効果でもある。戦時中の避難所のように、ペドリは人々を魅了し、リラックスさせるために戻ってきた。

文●ホルヘ・バルダーノ
翻訳●下村正幸

【著者プロフィール】
ホルヘ・バルダーノ/1955年10月4日、アルゼンチンのロス・パレハス生まれ。現役時代はストライカーとして活躍し、73年にニューウェルズでプロデビューを飾ると、75年にアラベスへ移籍。79~84年までプレーしたサラゴサでの活躍が認められ、84年にはレアル・マドリーへ入団。87年に現役を引退するまでプレーし、ラ・リーガ制覇とUEFAカップ優勝を2度ずつ成し遂げた。75年にデビューを飾ったアルゼンチン代表では、2度のW杯(82年と86年)に出場し、86年のメキシコ大会では優勝に貢献。現役引退後は、テネリフェ、マドリー、バレンシアの監督を歴任。その後はマドリーのSDや副会長を務めた。現在は、『エル・パイス』紙でコラムを執筆しているほか、解説者としても人気を博している。

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙に掲載されたバルダーノ氏のコラムを翻訳配信しています。

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配信元: SOCCER DIGEST Web

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