【雪だるま式に大きくなっていく悪い出来事】
ジョーが市長になりたい理由はありません。エディントンのためではないし、権力を得たいわけでもなく、ただテッドを倒したいだけなのではないかと。妻がテッドの元カノというのも彼は気に入らないし「絶対に勝ってやる!」という気持ちになっていくんです。
しかし、選挙に熱を入れているうちに、妻は陰謀論で人気を得ているカルト集団のヴァーノン(オースティン・バトラーさん)と急接近。ますますジョーの心は掻き乱されていきます。そのあともジョーの身の回りで起こることは悪いことに悪いことが上乗せされていき、後半は地獄絵図!
さすがアリ・アスター監督、暗いトンネルの向こうはずっと暗いまま。一筋の光も見えません!
【世界中の様々な問題をギュっとまとめて膿を出す】
最初から最後まで一度もハッピーな気持ちになれない怪作ですが、なぜか脳裏にくすぶっていた膿を出した感はあるんですよね。
新型コロナのパンデミック、人種差別の理不尽、銃社会の怖さ、フェイクニュース、陰謀論、カルト集団など、世の中の社会問題をまとめてスクリーンを通して白日のもとにさらした作品だと思いました。しかし、その膿は出しきれず未だ続いている……と言うのが怖いけれど。
それにしてもホアキン・フェニックスさんは『ボーはおそれている』で演じた主人公以上にひどい目にあっていたような。しかし、役者としてはやり甲斐がある役なんだろうなと思いました。
ホアキンの凄まじい怪演にも注目しつつ、ぜひスクリーンでアリ・アスターの世界をお楽しみください。
執筆:斎藤 香(c)Pouch
Photo:© 2025 Joe Cross For Mayor Rights LLC. All Rights Reserved.
『エディントンへようこそ』
2025年12月12日(金)より、全国ロードショー
監督・脚本:アリ・アスター
出演:ホアキン・フェニックス、ペドロ・パスカル、エマ・ストーン、オースティン・バトラー、ルーク・グライムス、ディードル・オコンネル、マイケル・ウォード

