
「まったく違う身体になりました」絶好調STVVを牽引する23歳日本人MFの“背中の厚み”にショックを受けた。一大ブレイクの予感が漂う【現地発】
10月19日、STVVはアンデルレヒトと2対2で引き分けた。試合後、クラブ公式インタビューを受け、ロッカールームに引き上げる山本理仁の背中越しに「ナイスゴール」と声をかけると「ありがとうございます」という言葉が返ってきた。その瞬間、私は彼の背中の厚みにショックを受けた。山本理仁と言えば細身のMFだったはず。ひと目で分かる、努力の証だった。
その後、STVVの試合を見に行くたびに、山本の背中をチェックするようになった。日本人、ベルギー人を問わず、彼の背中はチームメイトの誰よりも大きい。対戦相手と比べても、山本より広く、厚い背中を持つ選手は滅多にいなかった。
天性のテクニシャン・山本は鋼のボディを手に入れたことで、1対1の守備に自信を持って挑めるようになった。オン・ザ・ボールではピッチの右寄りからボールをキャリーするドリブル、アタッキングサードで仕掛けるアクションでも、迫力と粘りが出てきた。10月、11月は1ゴール・3アシストと数字も残し、ファンの選ぶ月間MVPを2か月続けて受賞した。今季はすでにキャリアハイとなる2ゴール・5アシストを記録している。
ほぼ毎試合フル出場している山本だが、12月6日のクラブ・ブルージュ戦は珍しく75分でベンチに退いた。やはり3日前のカップ戦で115分間プレーしたダメージは大きかったようだ。しかもクラブ・ブルージュ戦の開始早々、フェアにボールを奪ったつもりだったのに、イエローカードを受けていた。
クラブ・ブルージュに3対2で競り勝ったあと、山本は「良かったです。僕は疲れてしまって、あんまりできなかったですけれど、できることはやりました」と答えた。そんな彼に、私は“背中”の話を切り出し、「あらためて2年前の写真と見比べると、まったく違う身体になりました。そのことが山本選手のベルギーでの2年間を物語っていると思う」と最初の質問を締めた。
「重量的に課題があるのはずっと分かっていたことだった。そこはこの2年、というか特に今年に入ってから取り組んできた。試合に出ていることもあって筋肉が落ちがちというところもあるし、重点的に週に1回は筋トレで追い込む日を作ってます。その成果が出ていると思います」
――食事は?
「食事を変えてるとかはないです。体質が合わないので、ちょっとグルテンを減らすようにしているくらいです。だけど好きは好きなので、断つことはしてませんが、試合に向けてのコンディショニングを作っています」
――サッカーの世界では「ピッチの上は嘘をつかない」と言われます。今の山本選手のプレーから、そのことを感じます。
「特に昨季は試合に出られない時期もありましたが、出られなくても、僕はやれることをやったつもり。オフの日もスタジアムに来てジムで鍛えたりした。みんながプレーしているぶん、僕は違うところで頑張ってきた。その成果が今年出ているのかなと思います」
ベルギー3季目にして才能が花開いた山本。隣国オランダでも上田綺世(フェイエノールト)が3季目でブレイクしたが、他国を見渡すと1年、短いと半年で干される日本人選手もいる。STVVは山本に信頼と時間を与えてくれた。
「そうですね。強化部を含め、自分を信じてくれた。特に今年はシサコ選手を獲ってくれたことで、僕がやりやすくなった。そういう時間をクラブがくれたことに対して感謝してます。結果で恩返ししないといけないと思ってます」
クラブ・ブルージュ戦の立ち上がり、立て続けに激しくボールホルダーに襲いかかったデュエルは、今季の山本のプレーを象徴していた。
「だけど僕は、今はもう『強く行こう』と意識してないんですよ。それでも周りから『強度の高いプレーだった』と言われるということは、自分のプレーのスタンダードが上がっているということ。ちゃんと成長しているんだなと思います」
――10月、11月とファンが選ぶチームの最優秀選手。それも自信になっているのでは?
「自信になってます。もちろんチームの支えもあって、自分のプレーを出せている。それにゴール、アシストという目に見える結果が付いてきているので、自分でも成長を実感できているシーズンです。ボールを持ったときに余裕が出てきていると今、感じてます」
――右サイドライン、ペナルティエリア内の右ハーフスペースの力強いドリブル、アクションが今季ずっと続いてますね。
「このチームで今、求められているのが“ポケットを取る回数”。そこに入ると、自分でもチャンス・クリエイトが増えてくるので、ポケットに入っていくことを強く意識してます」
――前節のヘント戦で後藤啓介選手が決めたゴールも、サイドバックの選手が左のポケットを取ってからクロスを入れました。左右のポケットを突くことを、チームとして徹底してますね。
「ポケット・ランニングは相当言われています。僕が走ることによって、相手を連れて行って、味方がカットインできたりする。そういった『チームのために』ということを監督はすごく求めます。僕がパスを受けることができれば、もちろんいい」
クラブ・ブルージュに勝ったことで、STVVは2位に浮上した。フレンキー・ファン・デルエルスト、ハイン・ファンハーゼブルックといった錚々たるベルギーの解説者たちが「このままSTVVがプレーオフ1に進むだろう」と太鼓判を押す。
――勝点33のSTVVにとって前節、ヘント(8位。勝点23)に勝ったのは大きかった。
「ヘントに勝てたのはかなりデカかったですね。7位のヘンクと10ポイント離れているから、差は4試合分か。かなりデカいですけれど...。あとにユニオン(最終節)とヘンク(29節)が残っているので、積み上げられるところでしっかり積み上げていかないと痛い目に遭うので、そこは気を抜かずにやっていけたらと思います」
――その後、プレーオフ1があるとはいえ、レギュラーシーズンの最後にユニオンのようなチームと首位攻防戦とかできたら最高ですよね。
「シント=トロイデン史上、なかなかないことだと思う。今まで無いんじゃないですか」
――今、クラブの歴史を作ってるんじゃないですか?
「5連勝なんて。そもそも4連勝もなかなかないことと聞いてました。ヘントにアウェーで勝ったことが10数年ぶり。ルーベンのアウェーも10何年ぶりとか聞きました。勝点も去年の31を超えて33です」
――あらためて今季のSTVVの強さの秘密は?
「頑張ること。僕も含めて。3日前のカップ戦で120分間プレーした選手もいる」
――そう言えば山本選手は延長後半途中までプレーしました。
「115分くらいだったので、ロスタイムを含めたら120分はやっていた。3日前に17km、18km、2日前に走ってから、今日の試合を迎えました」
――その走行距離のデータはすごいですね!
「アベレージでそれくらい走れるチームなので。ポジションによっていろいろありますが、今季の強さはそういった頑張れるところかなと思います。逆に昨季はそこが無かったので厳しいシーズンになったと思います(注:最終節で1部残留が決まった)。最後の粘り強さも今年は一味違うと思ってます」
――昨季は中盤に藤田譲瑠チマ(現ザンクト・パウリ)という絶対的な選手がいた。それでも、「今季の中盤の構成は、昨季より上」という声が圧倒的です。
「バランスがいい。シサコ選手がアンカーでしっかり構えてくれて、僕がランニングでスペースを作ったり、つなぎ役になったり、落ちて受けに行ったり、8番の役割をしつつ、(伊藤)涼太郎くんがやっぱり仕事ができるタイプ。本当にバランスがいいなと思います。オン・ザ・ボールだけでなく、3人ともハードワークができるので、そこは違うと思います」
――今日もGKが抜かれても26番(DFムスリウ)が根性でクリアしたり。
「ゴール前での『身体に当ててやる』という気持ちが本当に強い。特に今日はクラブ・ブルージュが相手だったということもありますが」
――17節を終えて2位。シーズン前、想像できましたか?
「想像できなかったです。今は『チャンピオンズリーグ!』『ヨーロッパリーグ!』なんて言ってる人がいますけれど、これまでロッカールームでそんな単語を聞いたことがなかった(笑)」
縁の下の力持ちのように中盤で奮戦し、そして前線に飛び出して主役も演じる今季の山本。いぶし銀でいて華もある、そんなダイナモが好調STVVを支えている。
取材・文●中田 徹
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