プレミアリーグ第15節のリーズ戦、リバプールは2-0のリードから追いつかれた。終盤に勝ち越すも、後半アディショナルタイムに同点ゴール(得点者は田中碧)を許すという悪夢のような結末を迎えて、まだ不振から抜け出せていない様子を露呈した。そのうえ、このアウェーマッチの後には、さらなる衝撃が待ち受けていた。
攻撃での絶対的な存在として長くチームをリードしてきたものの、今季は調子が上がらず、直近3試合はベンチスタート。さらにそのうちの2試合(リーズ戦も含む)は出番なしに終わったモハメド・サラーが、メディアに対してクラブやアルネ・スロット監督を批判したうえで、今週末の16節ブライトン戦が本拠地アンフィールドでのラストマッチになる可能性を示唆したのである。
リバプールの地元紙『ECHO』によれば、このエジプト代表FWは試合後に取材エリアへ姿を見せる場面がほとんどないが(入団後の420試合で417回断ったという)、それでもこのエランド・ロードの夜には「7分半にもおよぶ赤裸々な激白」を展開した。
「90分ベンチに座っているなんて信じられなかった。これで3回目だ。こんなのキャリアで初めての経験だと思う。本当に失望している。何年にもわたって、特に昨季はこのクラブのために多くの貢献を重ねてきたのに、クラブが僕をバスの下に突き落としたように感じている。誰かが僕に全ての責任を押しつけたいんだ。クラブは夏に多くの補強を約束した。しかし今、僕はベンチにいる。つまり、約束が守られなかったという結末だ」
「以前は、(スロット監督とは)良い関係だった。しかし今では、関係はゼロだ。理由は分からない。誰かが僕をクラブに置きたくないと思っているようだ。母と父には、ブライトン戦に来るよう電話した。プレーするかどうかは関係ない。楽しむだけだ。アフリカネーションズ・カップに行く前に、アンフィールドでファンに別れを言うつもりだ」
このあからさまなクラブと上層部への批判は、当然ながら大きな問題となり、リバプールは8日にはチャンピオンズリーグのインテル戦に臨む遠征メンバーからサラーを外す決断に踏み切った。スポーツ専門チャンネル『ESPN』によれば、これは「スロット監督からの全面的な支持を受けてのもの」だという。
サラーの批判についてスロット監督は「サラーとの関係が破綻したとは感じていない。少なくとも土曜の夜までは、そう受け取った場面は全くなかった」と振り返る。「起用されなくなると、たいてい選手は監督への評価を下げがちだが、彼はチームメイトやスタッフに対して本当に敬意を示していた。彼は懸命に練習しており、試合後の彼のコメントを聞いた時は、かなり驚かされた」と続けた。
また、「サラーはすでにリバプールでのラストゲームを終えたのか?」との質問には、「全く分からない」と指揮官は答えた。
この件に対しては、様々な反応が多方面から寄せられている。前出の『ECHO』は地元クラブのエースによる“爆弾発言”を「彼は怒っていたわけではなく、口を滑らせた様子もなかったし、リーズからマージーサイドへ帰るバスの中でも、後悔している様子はなかった。これは核爆弾級の事前計画的行動だった」と表現。決して衝動的なものではなく、覚悟のうえでのものだったとの見解を示し、「波風を立てたどころか、船尾を巨大な氷山に向けて突っ込んだ」と、その影響の大きさを表現している。
そして、「彼の行為は、サポーターやチームメイトにとっては、さらに頭を抱える問題が増えただけだ。33歳のエジプト人選手は今、炎上状態のシーズンにガソリンを注いでしまった。そしてスロット監督やクラブ幹部に対する口撃は、プレミアリーグ王者をさらに混乱させた。特に、苦境に立つスロット監督にとって、サラーの発言が引き起こす騒動は間違いなく余計な負担だ」と、ネガティブな面を強調した。
同メディアは「サラーの行為は、自己中心的だった。昨季の異次元のレベルでプレーしていた時に比べ、今年はその数段下に落ちている。彼に、規律を破る正当な理由はほとんどない」と指摘。「スロット監督との関係が絶たれたというサラーの暴露は、クラブ、そしてファンに対して『どちらの側につくか?』と迫るような投げかけに感じられるが、その返答はリバプールとの契約を18か月ほど残す彼にとって、望むものではないかもしれない」と綴っている。
一方、リバプールのクラブ専門サイト『THIS IS ANFIELD』では、同クラブを専門に取材しているジャーナリストたちの討論形式で今回の件を評価。その中でピーター・ボルスター氏は、「クラブにとって最善の行動ではなかった」としながらも、「これは、サラーがクラブから何かを引き出すための駆け引きではないと思う。これはすでに退団を決意している彼なりの『別れの挨拶』だ」と主張した。
同氏は、選手と監督の関係悪化については「コミュニケーション不足が原因だ。外から見る限りでは、スロット監督が選手の管理に失敗し、サラーは自分がこのクラブの一員ではないと感じるまでになってしまった」と指摘。対してパトリック・アレン氏は、「監督の決断(それが正しいか否かに関係なく)に対して、モーが自身のプライドやエゴを抑えられなかった」と推測している。
今後については、サム・ミルン氏が「クラブ上層部のリチャード・ヒューズとマイケル・エドワーズが、サラーを追い出すためにスロット監督を利用しているのかもしれない」との見解を示したが、「もしサラーだけでなく、他のベテラン選手たちも監督に不満を抱いているのなら、スロットのリバプールにおける監督生命はすぐに尽きるかもしれない」と、早期に渦中の2人がアンフィールドから姿を消す可能性を示唆した。
構成●THE DIGEST編集部
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