80'sテイストって、こんなにかわいくてカッコいい
今回はカート&マックスに絞って話をしてきましたが、この作品全体に流れる80年代のかわいさ・カッコよさは映像美としてぜひ観てほしいので、付け加えておこうと思います。
まず、惑星間をドライブしたり列車で駆け抜けたりというスケール感。ワープではなく時間をかけて高速移動するというのは、ちょっと懐かしいSFで夢見た、あまりにもロマンチックな光景です。
6人のキャラクターの衣装も実にジャパニーズ80's。アカネとカナタの暴走族2人組のレトロさは、いま見ると一周してかわいらしくおしゃれ。だぶっとしたチハルの衣装は、大人世代には懐かしいかもしれませんし、今見てもポップでキュート。スカジャンのヤンキーギャルサイボーグ・マキナのビジュアルは懐かしいのに未来的です。顔が人間型に作り込まれているのではなく、あくまでも感情がモニターに映し出されている、という構造のこだわりが大変レトロポップ。学生時代はこのモニターがなくていかにもなロボットヘッドなのも、この世界のお金とファッションの価値を感じさせてくれて芸が細かいです。
一方でAIロボットのO.T.A.M(Outer-space Transportation Animatoronics Manager)の造形は、まるで昭和のお店の前に置いてある人形のような質感。かわいらしさと不気味さをしっかり表現しています。
極めつけはテーマソングがキャンディーズの『銀河系まで飛んで行け!』。1977年の作品です。社会不適合者扱いされた存在が、列車の暴走で放り出されてしまう展開は、原曲の歌詞の意味が別の意味でぴったりハマっています。このアニメのために作られたんじゃないかと錯覚してしまうほど。
3分半で全12話。もっと観たいと渇望したくなるほど、短いです。けれども、この作品は短いからできる良さをわかって作られているようにも感じられます。凝縮されたテンポの良さ、センスの良いビジュアル、ふとした瞬間に滲むエモ、最終回での華麗な伏線回収の数々。物足りないと思ったら、もう1回、見直しましょう。画面のどこかに新しい発見があり、さらなる妄想を加速させてくれるはずです。

