
GSで最大のハードルはクロアチア戦。大きな山場はベスト8。イングランドは60年ぶりのW杯優勝を果たせるか【現地発】
北中米ワールドカップの組合せが決まり、イングランド代表はグループLでクロアチア、ガーナ、パナマと同組になった。
イングランド内の反応は「二重構造」と言える。多くのメディアは今回の組分けを「難しいグループ」と評価しつつ、「イングランドにとって致命的な死の組ではない」と位置づけているのだ。
クロアチアやガーナといった難敵と同組になったことから、「決して楽観はできない」と慎重なトーンで伝えながらも、これまでの実績を踏まえて「イングランドには十分チャンスがある」と指摘した。なお抽選会に出席した元イングランド代表DFのリオ・ファーディナンドは「正直なところ、今回のグループにはあまり満足していない。楽勝グループではなく、どこも手強い。特に、クロアチアとガーナは強い。もちろん、イングランドには首位通過のチャンスもある」と話し、やはり「慎重さ」と「楽観的観測」を織り交ぜてコメントした。
抽選結果を受け、トーマス・トゥヘル監督は次のように話した。
「どの相手も過小評価してはならない。もちろん、クロアチアはポット2で最高ランクにいる。間違いなく強豪だ。ガーナも才能に溢れ、サプライズを起こす可能性がある。彼らはワールドカップの経験値も高い。そしてパナマは、アンダードッグとして最大限に力を発揮しようとするはず。誰も侮ることはできないし、すべての相手に対し、最大限の敬意を持って戦う」
トゥヘル監督が率いるイングランドは、世界でも指折りの「タレントの宝庫」として注目を集める。戦術家として知られるこのドイツ人指揮官は、選手個々の能力を最大限に引き出す戦い方を示し、大舞台での壁を破る存在として大きな期待が寄せられている。チェルシーでチャンピオンズリーグを制したように、イングランドにも「タイトル獲得を──」と期待の眼差しを向けられているのである。
チームの中心となるのは、攻撃力と創造性を兼ね備えた面々。主将のハリー・ケインは依然として世界屈指のフィニッシャーであり、ゴール前での存在感が絶対的だ。バイエルンでもゴールを量産中で、代表通算得点においても史上最多の78点を記録。“10番”のようにパスで味方も活かせる稀有な存在である。
加えて、フィル・フォデンやブカヨ・サカ、ジュード・ベリンガムといったスターたちも、突破力とスピード、的確な状況判断で攻撃のアクセントを生み出す。どの選手もクラブレベルで高い要求を受け続けており、代表に集まった際のクオリティは群を抜く。
守備面でも、トゥヘル監督の指導が効果を示しつつある。組織的なラインコントロールとビルドアップの安定感が増し、従来の課題だった試合運びの粗さが改善され始めている。こうした層の厚さと戦術的成長を考えれば、イングランドはW杯で優勝候補の一角になりうる。才能が揃ったチームに、ヨーロッパ屈指の戦略家が加わった今、悲願の世界タイトル獲得に向け、これほどの好機はないだろう。
グループステージ(GS)における最大のハードルは、やはり初戦のクロアチア戦だ。2018年W杯の準決勝で敗れた因縁の相手であり、英スポーツサイトの『ESPN』 は「まるで過去の再演」と表現した。08年の欧州選手権予選で敗れ、本大会出場が叶わなかったという屈辱を味わった相手でもある。
クロアチアのFIFAランキングは10位。40歳となった今も、主将ルカ・モドリッチは健在だ。ただチーム全体で高齢化が進み、かつてほどの勢いはない。粘り強く進める試合巧者の一面はあるが、中盤の主力に30代以上が少なくなく、前大会までのダークホースの立ち位置ではない。同じポット2にいたウルグアイや、24年コパ・アメリカ準優勝のコロンビアに比べれば、戦いやすい相手と言える。
ガーナも難敵だ。FIFAランキングは72位だが、トゥヘル監督はこのガーナに警戒心を強めているようだ。トッテナムのモハメド・クドゥス、ボーンマスのアントワーヌ・セメニョといったウインガーのアタックに象徴されるダイナミズムが最大の武器となる。イングランドとしては、守備→攻撃のトランジション、迫力満点のサイドアタックに細心の注意を払う必要がある。
なお最後のパナマについては、大きな問題を引き起こす相手とは見られていない。18年W杯では両国が対戦し、イングランドが6-1で大勝した。
英紙『デーリー・テレグラフ』はGSをこう予想する。
「ポット4からガーナが入った瞬間、イングランド陣営の雰囲気が一変した。ポット4では最も危険な相手であり、予選も見事な内容で突破したからだ。ただ、イングランドの行方を決めるのは、初戦のクロアチア戦だろう。ここで勝利すればスムーズに滑り出せるはずだ」
振り返ると、イングランドのW杯予選は順調そのものだった。予選8試合をすべて勝利し、1つの失点も許さなかった。トゥヘル監督は今のイングランドについて「プレミアリーグのようにダイナミックで、フィジカルな攻撃サッカー」を目ざすと話している。実際に最近の試合では、ボール奪取のスピードと展開の速さに重きを置いている。課題は、北米の暑さと湿度の中でも、そのスタイルを維持できるか。
優勝を目ざすイングランドにとって「真の勝負」はベスト8からと見る。『デーリー・テレグラフ』の予想によると、L組を1位で通過すれば、ベスト32でグループ3位のチーム、そしてベスト16で「韓国、もしくはメキシコ」と対戦する予定。そして、ベスト8でカルロ・アンチェロッティ監督が率いるブラジル代表と対決するという。こうした戦前予想はいつも当たらないが、仮にそのとおりになれば、ここが大きな山場になりそうだ。
GSを慎重に戦いつつ、長距離移動への対策や酷暑の適応など課題をクリアしていけば、1966年の自国開催以来、60年ぶりの栄冠にぐっと近づくはずだ。
取材・文●田嶋コウスケ
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