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日中関係悪化で「会いに行けない」…和歌山“浜家パンダロス”に揺れるファンたちの本音

日中関係悪化で「会いに行けない」…和歌山“浜家パンダロス”に揺れるファンたちの本音

年間の出費は50万円以上

一方、すでに中国で浜家を見てきたというファンも。

児童文芸翻訳家・作家で、『良浜と浜家 ~10頭のパンダを育てた母パンダの偉大なパン生~』(技術評論社)など浜家に関する著書も出版する神戸万知さんは、11月中旬に中国へ向かった。

「11月22日が楓浜(ふうひん)の誕生日だったので、それにあわせて中国遠征をしました。6月にアドベンチャーワールドを旅立った4頭全員と無事に会えましたし、雄浜(ゆうひん)や隆浜(りゅうひん)などそのほかの白浜出身のパンダに加え、雄浜や梅浜(めいひん)の子どもなど子孫にも会うことができました。

過ごしやすい季節なので、みんな元気にもりもりごはんを食べていましたよ。元気な姿を確認できて嬉しかったです」

無類のパンダ好き作家として知られる神戸さんだが、パンダを愛好するようになったきっかけは浜家だったという。

「2012年、白浜で赤ちゃんパンダが生まれて、名前を募集していたんです。なんとなく応募してみたら、自分が考えた『優浜(ゆうひん)』が採用されまして。名付け親証明書と『⁠ご対面プレミアムツアー』の招待状が届き、初めてアドベンチャーワールドに足を運びました。

一生に一度の思い出のつもりで行ったのですが、パンダの可愛さに魅了され、すっかりハマってしまいました」

そして2015年、今度は双子のパンダ「桜浜・桃浜」の名付け親にもなった神戸さん。彼らの成長を見守ることを心に決め、月1~2回以上のペースでアドベンチャーワールドに通った。

「東京在住なので、一回の和歌山遠征で3万円前後はかかっていました。年間の出費は40~50万円ほどですかね。ほかにも、ふるさと納税で白浜町の宿泊補助券を購入したり、クレジットカードはJALに全振りして、白浜へ行くためのマイレージを貯めたりもしていました」

前出の石田さんと同じく、神戸さんも白浜に着いたらアドベンチャーワールドへ直行。開園から閉園まで、ほぼ飲まず食わずの状態でパンダを眺めていた。

「パンダはとにかく可愛い。遠くから見ても近くから見ても可愛い。硬い竹を食べるので、アゴが発達しており顔が丸いのも可愛い。前足に対して後ろ足が短く、内股でよちよち歩くのも可愛い。一日中眺めていてもまったく飽きません」

パンダの経済効果はWBC優勝超え?

全身全霊で浜家を応援していた神戸さん。返還を知ったときは「頭が真っ白になった」と話す。

「返還は覆らないことなので、そのときは呆然としながらも急いで飛行機やホテルなどの手配をしました。浜家の最終公開日は仕事で行けなかったのですが、その2~3日前はなんとか足を運ぶことができました。パンダたちはいつも通りに寝て、食べて、のんびり過ごしていましたよ。

返還当日は取材でアドベンチャーワールドに行ったのですが、もう園内にパンダはいなくて。がらりとした飼育場を見たら、心にぽっかり穴が空いたような気分になりました」

神戸さんは寂しげな表情を浮かべながら、近況を語る。

「あの日以来、白浜には行っていません。空っぽな飼育場を見るのは、やっぱり辛いんです。一方、上野動物園は、もともと近所なので毎日のように通っていて、シャオシャオとレイレイも浜家と同じくらい大好きです。でも、シャオレイも返還期限が近づいていて……。パンダ通いをしない生活は、あまり想像がつかないですね」

パンダ以外の推し活を始める気はないのか尋ねると、神戸さんはキッパリ「ありません」と答えた。

「推しはあえて探すものではなく、いきなり沼に落ちるものだと思っています。パンダ以外にも趣味はありますし、浜家も上野ファミリーも消えてしまったわけではなく、パン活もやめる予定はありません。

一説によると、パンダはWBC優勝超えの経済効果をもたらすそうです。園だけではなく、まわりの飲食店や、地域全体に潤いを与えてくれます。それだけ、パンダは人を引き付けてやまない魅力にあふれているのです」

日本経済と、多くのファンの人生を支えてきた浜家。アドベンチャーワールドに、もう一度パンダの家族が戻ってきてくれることを願うばかりだ。

取材・文/渡辺ありさ

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