
10月より放送中のTVアニメ「最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか」(毎週金曜深夜0:00-0:30、TOKYO MXほか/Prime Videoほかにて地上波1週間先行・見放題最速配信中)。鳳ナナによる同名小説、ほおのきソラによるコミカライズを原作とする本作は、舞踏会で婚約破棄を言い渡された公爵令嬢・スカーレット(CV: 瀬戸麻沙美)が、我慢の限界を迎え、拳ひとつで悪徳貴族たちを制裁していく爽快なファンタジー作品だ。優雅なドレス姿で“狂犬”のごとく暴れまわるスカーレットの姿は、SNSを中心に「スカッとする!」と大きな話題を呼んでいる。
物語はいよいよクライマックスへ突入。今回はアニプレックスの中山信宏プロデューサーにインタビューを実施。アニメ化の経緯から、ドレスでアクションを描く制作現場の苦労、瀬戸麻沙美らキャスト陣の好演、そして最終回に向けた見どころまで、たっぷりと語ってもらった(以下、第10話までのネタバレを含みます)。
■悪役令嬢×物理の衝撃「おっさんの僕が読んでも面白かった」
ーー10月から始まった本作ですが、ここまでの反響はいかがですか?
おかげさまでご好評いただいています。特に原作者の先生方が、オンエアの時やイベント情報なども含め、全力でリポストやコメントをしてくださっていて。先生方が熱量高くアニメを応援してくださっているのもとてもありがたいです。
ーー原作は2018年頃からの連載作ですが、今回アニメ化しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
もともと僕はコミックスで本作にハマり、そこから原作小説も読ませていただいたんですけど、やっぱり「原作が面白い」というのがすべてですね。いわゆる「悪役令嬢もの」って、知力を使ったり、前世の知識を使って復讐や解決をするのがスタンダードな形だと思うんですが、今作は悪役令嬢が「物理で殴って解決する」という、かなり特殊な作品だったので(笑)。
ーー確かにインパクトがすごいです(笑)。
コミックスの出来も素晴らしくて、絵柄はすごく美麗なのに、アクションシーンやコマの見せ方が非常にうまいんです。「これはアニメにできたら面白いな」と思ったのがきっかけですね。
ーーレーベル的には女性向け作品の側面もありますが、「物理で殴る」爽快感は男性も楽しめる内容ですよね。
そうなんですよね。ただ正直なところ、最初は女性向けだとか男性でも面白いだとか、そういう性差みたいなことはまったく考えずに読んでいましたね。とにかくかっこいい主人公のスカーレットが、毎回拳で事件を解決していく。それって言ってしまうと「水戸黄門」や「暴れん坊将軍」に通じる普遍的な面白さだと思うので、そこは男女問わずあまねく楽しめる部分かなと思っていました。
■ドレスで戦うカロリーの高さ「現場が腹をくくってくれた」
ーー制作はライデンフィルム京都スタジオ、監督は坂本一也さんが務められています。
ライデンフィルムさんとは以前ご一緒した縁もあり、今回は女性主人公のアクション作品をできないかと相談しました。ひらひらしたドレス姿で戦うなど、それなりに作画カロリーがかかってしまう作品なのですが、そこをしっかりとやっていただけるということで、こだわりの強い坂本監督にお願いしました。その流れでメインプロダクションがライデンフィルム京都スタジオとなりました。
ーー本作のアクションシーンで特徴的なのが、頻繁に変わるスカーレットの衣装です。
これに関しては、さすがに「毎回衣装を替えてください」とは頼めないなと思っていたんです。そうしたら逆に、坂本監督やキャラクターデザインの芳我恵理子さんが、「スカーレットの衣装が毎回違うのもキャラ性の一つだから、大変だけどやりたい」とおっしゃってくださって。制作陣が腹をくくってやってくれたことが大きいです。
ーーまた、バトル時に優雅な舞踏曲が流れるのも独特な演出ですよね。特に第4話「拳の想い人(サンドバッグ)に会いに行ってもよろしいでしょうか」では、楽団が奏でる音楽に合わせて戦うというものでした。
あのシーンは、現場が「いや、最低限ここまではやらねば!」と、しっかりと演出してくれました。楽団が屋敷内で弾いているという設定なので、楽曲内で使われている楽器の資料を基にアニメの絵を起こすなど、嘘のないようこだわってくれました。最終的にあんなに優雅なビジュアル感になったのは、監督をはじめ、スタッフたちが本当に頑張ってくれた結果だなと思います。
■瀬戸麻沙美の“ドス”と加藤渉の“塩梅”
ーーキャストについてもお伺いします。スカーレット役の瀬戸麻沙美さんをはじめ、キャスティングに際してこだわったポイントを教えてください。
まずはスカーレットを誰に演じて頂くかが一番の軸でした。最終的に瀬戸さんに演じて頂く決め手は、貴族らしい“品”がありつつも、同時に“ドス”が効いていたというのが大きいですね。その上で厳しさや冷たさなど、いろいろな機微やバランス感がとにかく完璧だったんです。
ーー一方、加藤渉さん演じるジュリアスは、なかなか本性が見えない謎めいたキャラクターです。
加藤さんご本人もおっしゃっていましたけど、ジュリアスの芝居ってすごく難しいんですよ。表面で言っていることと裏で考えていることが違うので、感情が出すぎてもダメだし、出なさすぎてもダメという感じなんです。なので最初のうちは、結構調整をしていましたね。ただ、途中からは加藤さんが本当にうまく演じてくださって、演出意図に応えていただけるようになりました。
■第6話「血祭り」の衝撃とクライマックスへの期待
ーー第10話までを振り返って、中山プロデューサーが個人的に印象に残っているシーンはどこですか?
コミックスを読んでいる時から、ずっと「このシーンをアニメで見たいな」と思っていて、実際に見れて嬉しかったのは…第6話のラストです。女神像を壊して槍を携えて、女神の顔を踏みつけながら「さて、私もお祭りを始めましょうか。血祭り、ですけどね」って言うあのシーンです。
ーーあのシーンは最高でした(笑)。
もう本当にキメキメなセリフなんですけど、コミックスを読んでいる時に思わず「すげーなこの作品」って思ったカットなんです。アニメでこのシーンが流れた時にはさらに興奮して滾りました。サブタイトルにもなっていますけど、「拳の想い人(サンドバッグ)」みたいなパワーワードが多くて、そんなスカーレット語録も本作の大きな魅力だと思います。
ーーありがとうございます。では最後に、いよいよ迎えるクライマックスに向けて、見どころをお願いします。
物語はいよいよラスボス・テレネッツァとの戦いに向かって突き進んでいきます。彼女とどんな決着が付くのかが見どころですし、あとはやっぱりスカーレットとジュリアスの結末ですね。「2人は最終的にくっつくの?」っていうのも作品の大きな軸になっているので、その二つの行方を楽しんでいただければと思います。非常に最終回らしい、いい形でのクライマックスが待っていますので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。

