医療・介護・予防医療を軸に「ウェルビーイング・フロンティア」を目指す桜十字グループは、桜十字八代リハビリテーション病院副院⻑で循環器内科医を務める小島淳先生による、メディア向け勉強会「“心不全パンデミック”の今と、生活から始める予防医学」を都内で開催しました。
メディア向け勉強会「“心不全パンデミック”の今と、生活から始める予防医学」桜十字グループが開催
昨今の高齢者が増加する「高齢化社会」において、患者が急増している心不全。
「心不全パンデミック」とも呼ばれるこの社会課題について、桜十字グループは都内でメディア勉強会を開催しました。
小島先生は、2025年9月に直径2.5μm(マイクロメートル)以下の微細な粒子で、大気汚染の原因の1つとされている「PM2.5」と心筋梗塞に関連があるという論文を発表し、注目を集めています。
本イベントに登壇した小島先生は、寒くなってくる冬の時期に心臓のトラブルが起きやすくなるのは本当かと聞かれ、

「私は臨床医なのでいつも患者さんを診ていますが、(心臓トラブルは)毎年冬場に増えます。熊本では2000年から毎年心筋梗塞の疫学調査を行っており、県内でどれくらい心筋梗塞が発症したかを把握しています。そのデータを解析したところ、冬場の発症が増加していました。春になると減り、夏は少ない傾向です。私たち(医者目線で)も、救急外来で毎日心筋梗塞や心不全の患者が搬送されてくることを実感しています。」
と語り、寒暖差による心臓疾患の増減は関連性があると説明しました。

そもそも心不全とは、病名ではなく“病気の状態”のことを指すそうで「心臓病の終着点」と表していた小島先生。

「現在は昔に比べて寿命が伸びており、(その結果)心不全という病態も増えてきているんです。」
と、高齢化が進む現代社会で心不全患者が急増している「心不全パンデミック」についても言及しました。
大気汚染と心臓疾患の関連性
続いて、大気汚染と心臓疾患の関連性についての話題に。
私たちが普段吸っている空気が心臓疾患の原因となる可能性があることについて小島先生は、

「今年9月に我々が発表した内容となりますが『PM2.5などの本当に小さな粒子が心筋梗塞の発症と関係している』ということを発見したんです。」
と、論文の内容を紹介しつつ、PM2.5の中の僅か3%を占める「ブラックカーボン(煤)」が悪影響を及ぼしていることを見出したのだと語りました。

高血圧や糖尿病といった生活習慣病の方は、このPM2.5によって心臓疾患のリスクが上乗せ(リスクバーデン)されていくため、より注意が必要だと訴えかけました。
PM2.5(ブラックカーボン)による心臓疾患リスクは「主要幹線道路に近いところに住む方は心筋梗塞などを発症しやすい」という海外の調査結果や、タバコによる影響が非常に大きい点なども紹介。
完全分煙のファーストフード店の禁煙席でも基準値ギリギリの濃度となり、完全禁煙のコーヒー店(喫茶店)でも数値は8μg/m³と0にはならないだけでなく、不完全分煙の店舗などでは一気に数値が高くなると、タバコによるPM2.5濃度の高さをわかりやすく説明してくれました。

小島先生は、こういった環境による要因を自宅などで整える方法として、マスクやPM2.5に対応したフィルターを備えた空気清浄機、そして最も手軽な方法として換気を推奨。

「普段着用されているマスクでも、ある程度防ぐことができます。PM2.5の濃度が現在下がってきていますので、N95マスクを着ける必要はないと思いますが、不織布マスクをするだけでも大気汚染に関してはリスクを下げることができます。あとは室内の空気汚染に関しては、換気が一番大事になるかと思いますね。」
と、小島先生は集まった報道関係者からの質問に答えてくれました。
特に30〜50代と、日頃の生活習慣によって心臓疾患のリスクは高まるとのこと。

小島先生に心臓疾患のリスクを抑える生活習慣について質問すると、
「食事で塩分を控えることによって血圧はある程度抑えられます。例えば高血圧の方や心臓病の方は、日本高血圧学会が1日6g未満にしましょうと発表しています。また、睡眠も大切な要素で、質の良い睡眠をすることが大事です。夜間頻尿の原因の1つに『睡眠時無呼吸症候群』が関わっていることもありますので、こういった点を改善して質の良い睡眠をとることも重要ですね。」
とアドバイスしてくれました。
30〜50代の方は親世代も高齢になり、心臓疾患を起こしやすくなる年齢となります。
自分と親の心臓をダブルで守るためにも、日頃の生活習慣や環境に配慮し、気を付けていくことが何よりも大切だと学んだ勉強会となりました。
