
前作から9年ぶりとなるディズニー・アニメーション映画最新作「ズートピア2」が12月5日に日本で公開された。初日の興行収入は、「アナと雪の女王2」や「トイ・ストーリー4」(ともに2019年)を超える4億1267万円を記録し、金曜初日の作品として洋画アニメーション歴代No.1かつディズニー&ピクサー・アニメーション映画史上歴代No.1の好スタートを切った。公開直後から、SNSに「最高過ぎた」「感動した」「傑作」といった声が上がり続けている本作をレビューする。(以下、ネタバレを含みます)
■最新作はジュディ&ニックが“ズートピア最大の謎”に迫る
動物たちが人間のように暮らす楽園、ズートピアを舞台にした物語の続編。日本に先駆けて11月26日に公開を迎えた全米を含む世界各国の初週末5日間の興行収入は、約5億5600万ドル(約866億2480万円、1ドル155.8円計算)となり、全世界でこれまでに公開されたアニメーション映画で史上No.1のオープニングとなった。12月8日時点での世界興収は9億ドル(約1350億円、Box Office Mojo調べ)を突破し、まさに大ヒットと言える。
日本でも世界でも記録尽くしの上、映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では、批評家スコア92%、オーディエンス(一般)スコア96%(※12月10日時点)と高評価。さらには、「第83回ゴールデングローブ賞」で映画部門アニメーション映画賞、映画部門興行成績賞(シネマティック・ボックスオフィス・アチーブメント)にノミネートされたというニュースも入ってきた。
邦画で歴史的ヒット作が生まれるなど、活況だった2025年の映画界を締めくくるべく、大いにファンをにぎわせている本作。その始まりは、ズートピアでウサギ初の警察官となったジュディ・ホップス(CV:上戸彩)と、前作の最後で詐欺師から警察官へと転身したキツネのニック・ワイルド(CV:森川智之)がバディとなって1週間を迎えたところから。
哺乳類しか暮らしていないズートピアに100年ぶりに蛇が出現し、街が大パニックに。捜査にあたったジュディとニックは、ヘビのゲイリー・ダ・スネーク(CV:下野紘)と遭遇し、やがてズートピア最大の謎が明らかになっていく。
■悪者のヘビが出現?ジュディとニックが捜査
前作では、“諦めなければ夢はかなう”というテーマでジュディたちの成長を描きつつ、ズートピアにはびこる偏見や差別という、現代社会にも通じる問題に鋭く切り込んだ。ただ、疑問に思った人もいるはずだ。なぜズートピアには哺乳類しかいないのかと。ズートピアは、動物が生きる環境に合わせて12のエリアがあるというのに。それを続編で見事に“謎”として描き出してくれた。
その謎の鍵となるのがゲイリー。ゲイリーは、ズートピア創設者一族であるオオヤマネコのリンクスリー家に伝わる「リンクスリーの日誌」を奪おうとする。そこに書かれた秘密を解き明かせば、ヘビが悪者であることが誤解だと分かってもらえるはずだという。100年前にヘビによる襲撃事件があって、ヘビだけでなく爬虫類すべてが嫌われ、街から追い払われていたのだ。
なお、リンクスリー家は、気温や気候など環境が全く異なる12のエリアが隣り合っても共存できるようにした“ウェザー・ウォール”を思い付いたとされ、ズートピアで絶大な権力を持っている一家である。
誤解を解くチャンスは今しかない。ゲイリーのことをジュディが信じかけたとき、ヘビを悪者だと信じたままのニックがやって来て、誤解が誤解を生む展開に。ジュディとニックは指名手配されてしまうが、何者かに連れ去られたゲイリーを追う。

■ジュディとニック、バディとしての危機にハラハラ
謎に迫っていく中で試されるジュディとニックの絆。今回は“パートナーシップ”が大きなテーマだ。ズートピア警察署のボゴ署長(CV:三宅健太)もパートナーシップを大事にするのが署の方針とするのだが、ジュディたちには疑問を呈して任務としてパートナーセラピーを命じるシーンがある。
そんなこともあって自分たちが思っているように、みんなにもいいバディだと認めてもらいたいと躍起になるジュディ。その張り切りがニックとのすれ違いを生むことになり、前作で築かれたはずの2人の関係が揺らぐ。
ズートピアを駆け巡り、その誕生にまで迫るという、前作以上のスケール感で描かれるミステリー展開と、ジュディとニックの関係にドキドキハラハラ。思わず劇場で声を上げてしまいそうになるほど驚く展開もあり、始まりから最後まで集中力が途切れない面白さだ。
■魅力ある新キャラたち、演技巧者の日本語版キャストも豪華!
ネタバレは最小限に…と思いつつ、これだけは言っておきたい。“感動巨編”であること。パートナーシップには何を大切にすればいいのか、生い立ち、価値観といった互いの違いを認められるのかなど、今回も突き刺さることが多い。
それをけん引するジュディとニックを、日本版では上戸と森川が引き続き担当する。テンポのいいやりとりに、「あぁ2人が戻って来てくれた」といううれしさで引き込む一方、バディでありながらも、まだまだ日は浅く、お互いに知らないところもあって戸惑いが生じる様子を丁寧に声に乗せる。
ボゴ署長のほか、ズートピア警察署の受付係・クロウハウザー(CV:高橋茂雄)、ポップスターのガゼル(CV:Dream Ami)、闇のボス・Mr.ビッグ(CV:山路和弘)など、おなじみの面々も要所要所で楽しませてくれる。特に大人気となった免許センターの職員であるナマケモノのフラッシュ(CV:村治学)は、あぜんとする特技を披露して物語を盛り上げる。
そして新キャラたちも魅力的だ。ストーリーのキーマンとなるゲイリーは、猛毒を出す牙を持っているのだけど、性格は愛らしい。忌み嫌われる存在のヘビが愛らしいとは、そのギャップが実にエモい。実力派声優・下野の演技が光る。
ズートピアの外れにある半水生の動物たちが暮らし、爬虫類も隠れ住むマシュー・マーケットに案内するなど、ニックとジュディに協力するポッドキャスト配信者のビーバー・ニブルズ。変わり者だがチャーミングなキャラクターを、声優初挑戦の江口のりこが好演している。
リンクスリー家の御曹司だが、一族の中では“出来損ない”と言われるパウバートは、ジュディのファンで捜査に協力する。声を担当する山田涼介(Hey! Say! JUMP)は、御曹司らしい気品と、柔和で社交的な感じをうまく出して、“イケメン”というところもぴったりだ。
また、ズートピアに隠れ住むトカゲの重鎮、ヘイスースは無口で出番も多くないのだが、名優・柄本明のさすがの演技で印象に残るキャラクターになっている。
さらに公開されるまで明かされていなかったが、ヘビのゲイリーの逃走を手助けしたと疑われ、指名手配犯となったジュディとニックを追い掛ける“ヤギの警察官・ブシュロンとシェーヴル”を堂本光一(DOMOTO)が演じている。堂本はこれがディズニー作品初参加で「ビックリしました。心からうれしかったですね」と喜びのコメントを寄せた。
他にもまだまだいるのだが、新キャラたちによってズートピアのワクワクする世界が、ぐんと広がった。現代社会における多様性が凝縮されたようでもあり、前作以上の感動や余韻を生む。
映画「ズートピア2」は劇場公開中、「ズートピア」はディズニープラスで配信中。
◆文=ザテレビジョンシネマ部

