2度目のデートで手をつなぎ

水族館で恋人気分を味わい(写真:iStock)
そして、ついに初対面の日を迎える。
「実際に会った将人さんは、スーツの似合う、すっきりとした塩顔のイケメン。清潔感があって、声も落ち着いていて…。正直、どうしてこの人がアプリにいるの?と思うほどでした」
初回は青山のエスニックカフェで食事を楽しみながら、ゆっくりと会話を重ねた。この日、霧子さんは本名も打ち明け、夫が単身赴任であること、女としての自信が薄れてきていることも正直に話したという。
「将人さんは『もっと自信を持って大丈夫』『謙虚な女性は素敵ですよ』と、優しく言ってくれました。
その言葉に、胸がじんわりと温かくなったのを覚えています」
2度目のデートは水族館だった。
「知り合いに会っても気づかれないように、とマスクをつけて入りました。薄暗いブルーの空間で、魚たちがゆらゆらと泳ぐのを見ながら歩いていると…まるで恋人同士みたいで。
人混みの中で『大丈夫?』と、彼のほうから手をつないでくれたとき、胸がキュンとなりました。久しぶりに、女性として扱われていると感じて…気づけば私も、その手を強く握り返していたんです」
一線を越えた3度目のデート

同じ気持ちだと信じていたのに(写真:iStock)
それからも、やりとりは続いた。ランチの写真、出張先の風景、日々の何気ない報告。
――このお店、今度一緒に行こう。
――綺麗な景色を見ると、霧子さんにも見せたくなる。
「彼の存在が、日常に入り込んでいきました。パート先でも、つい笑顔が増えてしまって。『最近きれいになったね』と同僚に言われたときは、嬉しくて…でも少し怖くもなりました」
そして、出会いから1か月半が経ったころ。3度目の約束の前日、将人さんからメッセージが届いた。
――明日は、夕食のあとホテルに行こうと思っているけど、大丈夫かな。
「異論はありませんでした。ずっと、誰かに抱きしめられたいと思っていましたから…」
都内のシティホテルで、ふたりは一線を越えた。罪悪感よりも、「女として見てもらえた」という実感が、霧子さんの心を満たしていた。
当然、将人さんも同じ気持ちだと信じていた――あの瞬間までは。
