現在、世界の航空機の中で最も多い機材である、エアバス社のA320シリーズ。実は11月28日に同社は「強い太陽の放射が機体に当たると、飛行を制御する操作に欠かせないデータを破損する恐れがある」と、ソフトウェア上の欠陥を発表。アップデートの対象となったのは、A320シリーズの半数以上にあたる約6000機だったと言われている。
ただし12月12日現在、アップデートはほとんどの機材ですでに終了。それでも世界中の航空会社で機材変更や欠航を余儀なくされ、ANAも34機が対象に。11月29日、30日の2日間だけで、101便が欠航となった。
ちなみに今回の欠陥が発覚するきっかけとなったのは、10月下旬にアメリカの格安航空会社(LCC)ジェットブルーのA320で発生した、フライト中の重大インシデントだ。パイロットが操作していないのに機首が突然、下を向いて急降下。その結果、乗客12人が負傷している。
だが、今回のようなソフトウェア上の欠陥は、A320以外の航空機はもちろん、車や鉄道、船などあらゆる乗り物にも生じる。現在はそのほとんどが運転、操縦をコンピューターで制御しているからだ。ITジャーナリストが言う。
「乗り物の場合、操縦システムの破損などが起きると、命にかかわる大事故に直結します。そのため、各メーカーは神経質なほどのチェック体制を敷いていますが、それでも完璧に防ぐことは難しいのが現状です」
特に厄介なのは、今回のようなトラブルがあって初めて、不備が発覚するケースが多い点だ。とはいえ、
「公共交通機関の場合だと気を付けようがないですし、乗っている時にソフトウェアが不具合を起こす確率は非常に低い。だから過剰に恐れる必要はないと思います」(前出・ITジャーナリスト)
飛行機や鉄道の安全性そのものは、非常に高い。あとは自分が巻き込まれないよう、祈るしかないのかも。
(滝川与一)

