
令和の新しいホラー映像作家の発掘・支援を目指し、ホラージャンルの先駆企業であるKADOKAWA主催のもと、2021年にスタートした「日本ホラー映画大賞」。大賞に加え、選考委員特別賞や運営委員会各賞が設けられており、各賞に選ばれた作品は劇場公開や配信展開が予定されている。
第1回で大賞を受賞した下津優太監督は、受賞作を長編化した『みなに幸あれ』(24)で商業監督デビューを飾り、国内外で称賛を獲得。現在は第2作となる『NEW GROUP』(2026年公開)が待機中。また、第2回で大賞を受賞した近藤亮太監督は、同様に受賞作を長編化した『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』(25)がスマッシュヒットを記録し、監督オファーが殺到。第3回で大賞を受賞した片桐絵梨子監督は、現在商業監督デビュー作を鋭意制作中だ。

大賞ならびに選考委員特別賞を決める選考委員には、第1回から選考委員長を務める清水崇監督を筆頭に、『禍禍女』(2026年2月公開)で監督デビューを飾るコメディアンのゆりやんレトリィバァ、俳優の堀未央奈、映像クリエイター&監督&声優のFROGMAN、Base Ball Bearの小出祐介、映画ジャーナリストの宇野維正と、各界のホラーマスターたちが続投。そして今回から、7人目の選考委員として道尾が加わることに。
2004年に「背の眼」で第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞して小説家デビューを果たした道尾は、その後「シャドウ」で本格ミステリ大賞、映画化もされた「カラスの親指」では日本推理作家協会賞、「龍神の雨」で大藪春彦賞、「光媒の花」で山本周五郎賞を受賞するなど数多くの文学賞を受賞。2011年には「月と蟹」で第144回直木賞に輝いている。
ホラー仕立てのミステリを得意とする作家であり、映画にも造詣が深く、「日本ホラー映画大賞」の上映会に自ら足を運んだこともある道尾。どのような視点で応募作品を選考し、令和のホラー作家の才能を見出すのだろうか。今後の続報に注目していきたい!
<コメント>
●道尾秀介
「短編小説を書くときにいつも意識しているのが、短編は『短い長編』ではないということです。あれこれ詰め込んでしまってはクオリティを下げるばかりで、たとえば書道家が余白を意識して文字を書くように、必要な余白=要白をきっちりと計算して設けることが重要になってきます。
ベッドの下に見知らぬ男がいるよりも、ベッドの下に見知らぬ男がいる『かもしれない』という状況のほうが怖い。
この、『かもしれない』にあたるのがホラーにおける『要白』だと、個人的には考えています」
文/久保田和馬
