ごちそうやお酒を食べ飲みしたり、不規則な生活・忙しさによるストレスを感じやすくなるなど、何かと生活リズムのバランスが崩れやすい年末年始。
「なんとなく胃が重い」「食べたいのに入らない」といった“胃の疲れ”を感じたことがある方は多いのではないでしょうか。
しかし、その不調は単なる食べすぎではなく「胃疲れ」かもしれません。
そんな胃疲れによるリスクと“セルフチェック&改善法”について、川西市立総合医療センター総長の三輪洋人先生が解説してくれました。
年末年始は「胃疲れ」しやすい時期!
忘年会・クリスマス・お正月など、年末年始はおいしいものを食べたり飲んだりするイベントが増える季節です。
しかし、年末年始に「胃が重い」「食欲が出ない」と感じてしまった方は、いわゆる“胃疲れ”を起こしているかもしれません。

実際に行われた調査でも、年末年始の時期は8月の夏季休暇シーズンに次いで胃の不調を感じやすいことが明らかになっています。
そもそも“胃疲れ”とは胃の働きが一時的に低下し、食べたものをうまく消化できなくなった状態のこと。
「胃もたれ」「膨満感」「食欲不振」「吐き気」などが主な症状。
暴飲暴食やストレス・睡眠不足などが重なることで自律神経が乱れ、胃の動きの悪化・胃酸の過剰分泌といった胃の不調症状が起きてしまうことに。
また寒さのせいで体が縮こまり、姿勢が悪くなることによって胃の負担がかかるケースも。
これを放っておくと、慢性的な胃の不調につながってしまい、気力の低下・不安感・抑鬱気分・集中力の低下などを引き起こす可能性もあります。
最近行われた調査でも、10人に1人は慢性的な胃の不調を抱えており、仕事を休んでしまったり早退するなど「仕事に行けない」ほど深刻な状態にある方も出ているようです。
胃の不調を感じた際には、薬で応急処置をしたり我慢する方も多いですが、このような慢性的な胃の不調は、原因を知って対処を行わないと、繰り返し悩まされてしまうことに。
一方で、胃の不調には「胃がん」「胃潰瘍」など、重篤な病気が潜んでいる可能性もあるため、胃の不調が続くようであれば自己判断せず、医療機関を受診するようにしましょう。
自分でできるセルフケア方法
胃の不調の原因となる自律神経の乱れは、残念ながら薬などではコントロールすることは難しいもの。

十分な睡眠時間を取り、運動・食事に気を配るといった、日々胃のケアを行うことが必要。
中でも胃の不調を感じる方におすすめな「胃活プログラム」をご紹介します。
超手抜き朝ごはん
ある研究では「朝食を食べるグループ」と「食べないグループ」で胃の調子を調べたところ、朝食を食べないグループに胃の調子が悪い方が圧倒的に多かったという報告もあります。
胃を目覚めさせて生活のリズムを整えるため、起きたらなるべく早く、少なくとも2時間以内に朝食を摂るようにしましょう。
栄養バランスの整った食事を毎朝モリモリ食べられなくても、バナナやヨーグルトといった簡単なもので充分。
「超手抜き朝ごはん」は、食べやすいのに栄養価は高く、それに胃に優しい食材。
「朝はあんまり食欲がない」「前日に食べすぎたので胃を休めたい」という方も、バナナやヨーグルトを一口食べるところからチャレンジしてみてください。
胃にも効く菌活
乳酸菌や麹菌・酵母菌・納豆菌など、体に良い菌をとる「菌活」がいま話題となっていることはご存知でしょうか。
こうした菌を含むヨーグルトや漬け物、納豆などを食べることで、腸の調子を整えて便通を良くしたり、免疫力を高めるといった効果が期待されています。
一方で、胃の中には胃酸が分泌されています。
胃酸には塩酸が含まれていて、この塩酸には食べ物と一緒に入ってきた雑菌を死滅させるほど強い殺菌作用があり、善玉菌の多くも、胃酸によって死滅することに。
しかし、強烈な胃酸に負けずに活躍する乳酸菌も存在し、中にはピロリ菌の活性を抑えたり、胃痛・胃もたれなどを和らげてくれる作用をもったLG21乳酸菌入りヨーグルトなども存在。
このように、善玉菌を含む食品を利用し、胃のための菌活を始めてみてください。
胃を温めて温活
睡眠する際、お腹を冷やさないよう心がけることが重要。
寒い冬の時期は、腹巻などでお腹が冷えない工夫をするようにしましょう。
また、食事などは火の通った温かいものを食べる方が、胃が良く働いて調子が良くなります。
胃疲れを解消してくれるおすすめレシピ紹介
胃疲れを解消するのにおすすめな、これからの季節にぴったりの胃から温まるメニューや、ヨーグルトを使った菌活もできるレシピを、管理栄養士の渥美まゆ美さんが考案しています。
レシピ1:あったか湯豆腐ヨーグルトみそだれ

●胃に優しいポイント
・胃に負担が少なく良質な植物性のたんぱく質がとれる豆腐
・胃腸の動きを活発にしてくれる働きがあるヨーグルト
・発酵食品である味噌を組み合わせて胃に負担が少なく体の回復を助ける一品
【材料名/2名分】
木綿豆腐 1/2丁
春菊 1/2袋
しめじ 1/2パック
A水 500ml
A昆布 10cm
Bプレーンヨーグルト 100g
B味噌 大さじ2
B白すりごま 大さじ1
B砂糖 小さじ1
Bしょうゆ 小さじ1/2
【作り方】
・豆腐は食べやすい大きさに切る。春菊は固い部分を切り落とし、4cm幅のざく切りにする。しめじは軸を切り落とし、ほぐす。
・鍋にAと水を入れて熱し、豆腐を加える。煮立ったら春菊としめじを加え、具材に火を通す。Bは混ぜ合わせる。
・器に2を盛り、Bをかける。
レシピ2:とん平焼きヨーグルトソース

●胃に優しいポイント
・胃への負担が少なく、栄養価の高い卵と胃腸の回復を助けるキャベツを活用
・胃の負担を大きくする脂であるマヨネーズは、ヘルシーで胃腸の動きを活発にしてくれる働きがあるヨーグルトに変えることで、胃腸の回復の助けとなる一品に
【材料名/2名分】
豚こま切れ肉 120g
千切りキャベツ 50g
もやし 50g
卵 2個
サラダ油 大さじ1
塩・こしょう 各少々
プレーンヨーグルト 大さじ3
お好み焼きソース 適量
削り節 適量
小ねぎ 小さじ2
【作り方】
・フライパンに油を熱し、豚肉を炒める。肉に火が通ったらキャベツ、もやし、塩、こしょうを加えてさっと炒め、取り出す。
・卵を割りほぐす。1のフライパンを再び熱し、溶き卵を流し入れ、全体に広げる。火が通ったら1を片側にのせる。反対側の卵をかぶせるように半分に折りたたむ。
・器に2を盛り、ヨーグルトを表面全体に塗り、ソースをかけて削り節、小ねぎをのせる。
レシピ3:ホットバナナヨーグルトドリンクシナモン風味

●胃に優しいポイント
・消化が良く腸内環境を整えてくれるオリゴ糖を含むバナナとはちみつを胃腸の動きを活発にしてくれる働きがある乳酸菌を含むヨーグルトと合わせて、胃腸に優しくホットで飲めるドリンク
・血流促進の助けと香りづけのためのシナモンもポイント
【材料名/2名分】
バナナ 1本
プレーンヨーグルト 200g
はちみつ 大さじ1
シナモンパウダー 少々
【作り方】
・バナナは皮をむき、ミキサーにシナモンパウダー以外の材料と入れて滑らかになるまで撹拌する。
・耐熱カップに1を注ぎ、1つずつ電子レンジ600wで1分30秒加熱する。お好みでシナモンパウダーをふる。
年末年始は寒くなるだけでなく、暴飲暴食など胃にとって負担がかかる時期。
「胃疲れ」に気をつけつつ、日々自分でできるセルフケアを行って、胃を大切に労わってあげましょう。
三輪洋人先生について

消化器内科医、川西市立総合医療センター総長。
日本消化器病学会前理事・財団評議員・専門医・指導医、日本内科学会前理事・評議員・指導医・認定内科医、日本内視鏡学会社団評議員・指導医・専門医、日本消化管学会功労会員・代議員・専門医・指導医・胃腸科認定医、日本神経消化器病学会前理事長、Asian Neurogastroenterology & Motility Association ANMA前理事長。
1982年鹿児島大学医学部卒業。順天堂大学、米国ミシガン大学を経て、2004年兵庫医科大学 消化器内科主任教授に就任。
その後、同大副学長、理事なども歴任し、2022年より現職。著書やメディア出演も多く、2022年9月からはYouTube「Dr.三輪洋人の健康チャンネル」を開設。幅広い世代に健康情報を発信している。
2025年7月14日に「胃の不調の原因と対策 胃活の教科書」(毎日新聞出版)を出版。
