「クマを殺すな」の向こう側―凶暴性を知る者の声
一方で、2025年は死亡事故も相次いだ。
岩手県では、クマに襲われた60代男性が命を落とす痛ましい事件が起きている。
被害者の遺族や関係者が語るクマの凶暴性は、生還者の証言とはまた別の重さを持つ。
「頭皮がはがれ、頭蓋骨が露出するほどだった。あの恐ろしさは、やられた人間にしかわからない」
しかし事件後、自治体には「クマを殺すな」「駆除するな」という抗議が殺到した。
実際にクマの被害を目の当たりにした人々と、映像や言葉でしか知らない人々との間には、埋めがたい認識の差が生じている。
駆除か共存か―“正しさ”が衝突する
被害拡大を受け、自治体や国はクマ対策を強化せざるを得なくなった。
地域によっては、自衛隊が出動する事態にまで発展している。
だが、ここでも議論は割れた。
「人命を守るためには駆除は必要だ」
という声。
「人間が自然を壊してきた結果だ。クマを殺すな」
という声。
行政や現場の担当者は、その双方から責められる立場に置かれている。
どちらも間違っていないからこそ、解決策は見えにくい。

