ある視点から見れば、レッドブルのマックス・フェルスタッペンの2025年シーズンの数字は痛烈だ。
ひとつは、彼が驚異的な巻き返しを見せたということ。一時はチャンピオンシップ首位に立っていたマクラーレンのオスカー・ピアストリに100ポイント以上差をつけられていたが、シーズン終了時には新チャンピオンに輝いたマクラーレンのランド・ノリスまでわずか2ポイント差まで迫った。
その一方で、スペインGPでは少なくとも9ポイントを失った。1コーナーでメルセデスのジョージ・ラッセルと接触した後、2コーナーをショートカットしたフェルスタッペンは、レースエンジニアのジャンピエロ・ランビアーゼからメルセデスを先行させるよう指示されたことに激怒した。
フェルスタッペンは減速しラッセルに進路を譲るかに見えたが、5コーナーでラッセルに体当たり。これで10秒のペナルティを受け、5位から10位に転落した。これが9ポイントの損失だ。
バルセロナ戦直後、フェルスタッペンはこの件に関する質問を遮り「そんなこと重要か?」と反論していた。しかし先月オランダのテレビ局Viaplayでは「ミスだった」と認めるなど、より率直な姿勢を見せるようになった。
しかしタイトル争いに決定的な影響を及ぼしたことを考えると、シーズン最終戦のアブダビGP後の記者会見で、この件について追及されるのは必然だった。ガーディアン紙のジャイルズ・リチャーズが大胆な質問を投げかけた。
「マックス、ランドにわずか2ポイント差で敗れました。スペインでのジョージ・ラッセルとのインシデントについて、今どう考えていますか? 振り返って後悔は?」
そう尋ねられたフェルスタッペンは、「僕のシーズンで起きた他の出来事は全部忘れたのか?」と答え、話すにつれてますます苛立ちを募らせた。
「あなたが言及するのはバルセロナだけだ。こうなるのは分かっていた。今、あなたは馬鹿げた笑みを浮かべている。分からないな。ああ、結局はレースの一部だ。経験から学ぶんだ。チャンピオンシップは24戦のうちの1戦に過ぎない。後半戦には早期のクリスマスプレゼントもたくさんもらったから、そっちも疑問に思うべきだろう」
マクラーレンが今季多くのポイントを失ったのは疑いようがなく、スペインでのインシデントだけがフェルスタッペンのタイトルを阻んだとは誰も言えない。しかしもしフェルスタッペンがラッセルに体当たりしていなければ、シーズン後半はほぼ確実に異なる展開になっていただろう。しかし、そんな結末は誰にも予測できなかったはずだ。
そんななか、フェルスタッペンの一連の対応は、タイトルを獲得したノリスが過去に見せてきたメンタリティと大きく対照的だ。
ノリスは常に自己批判的であり、時に自責の念に駆られるほど極端な面もある。この考え方は、フェラーリのシャルル・ルクレールも常に実践してきた。
タイトル獲得後も、ノリスは自身のシーズンが完璧から程遠かったことを強く自覚していた。
「振り返れば、シーズン前半は決して印象的なものではなかった。確かにミスを犯し、判断を誤った場面もあった。間違いを犯したのは事実だ。他のドライバーも皆認めるだろう」
しかし、フェルスタッペンはそれを認めるだろうか? 彼の自信にはただ感嘆するばかりだ。それが彼の冷酷さの表れでもある。だが、バルセロナで犯した不必要なミスから、彼は本当に学ぶのだろうか?
オランダメディアに対しては「学ぶ」と誓い、イギリスメディアでは強硬な態度を見せた。答えは時が示すだろう。

