
AからZまで並ぶ、英語のアルファベット。
私たちが当たり前のように「26文字」として覚えてきたこのアルファベット列に、かつて“27個目”の文字が存在していたことを知っていますか?
しかもその正体は、今も身近で使われ続けています。
その27個目のアルファベットとは「&」です。
この「&」の物語には、古代ローマ時代から続く言葉の歴史や、ちょっとした言語遊びのエッセンスが隠されています。
なぜ「&」はアルファベットから外れてしまったのでしょうか?
目次
- 27番目のアルファベット、その名は「&」
- なぜ「&」はアルファベットから外れたのか?
27番目のアルファベット、その名は「&」
「&」記号は一般的に、「アンド」という読み方で知られています。
しかし、英語では「アンパサンド(ampersand)」と呼ぶのが正式で、現代ではブランド名やお店の名前、参考文献などで見かけることが多い存在です。
かつてこの「&」は、れっきとしたアルファベットの一員として、AからZの後ろ「27番目の文字」として扱われていました。
アンパサンドのルーツは、古代ローマ時代のラテン語にさかのぼります。
ラテン語で「and」にあたる単語「et」は、書き急ぐ際によく「e」と「t」を続けて一筆で書かれることがあり、そのうち二つの文字が融合して一つの合字である「&」となりました。

この記号は、英語やフランス語などヨーロッパ諸国に広がり、中世以降も長く使われ続けてきました。
面白いのは、英語圏の子どもたちがアルファベットを習うとき、19世紀頃までは「X, Y, Z, &(アンパサンド)」と唱えていたことです。
しかも発音は「and, per se, and(アンパーセエンド)」、つまりは「それ自体が“and”であるもの」というラテン語表現を付けていました。
これがやがて縮まって「ampersand(アンパサンド)」という名になったのです。
なぜ「&」はアルファベットから外れたのか?
しかし、なぜ「アンパサンド」はアルファベットから消えてしまったのでしょうか?
学術的に裏付けのある正確な理由は定かではありませんが、有力な説の一つがきらきら星にのせて歌う「ABCのうた」との関係です。
現在も親しまれている「ABC Song(Twinkle, Twinkle, Little Star のメロディ)」は1835年にアメリカで発表されたもので、この歌のバージョンでは、発音のしにくさや収まりの悪さからか「&」が省かれたのです。
この時期を境に、教育現場からアンパサンドが徐々に姿を消し、「アルファベット=26文字」という認識が定着していきました。
それでも「&」は完全に消滅したわけではありません。
今でも「Ben & Jerry’s」や「Dungeons & Dragons」のように、ブランド名や協働の表現で重宝されていますし、論文の著者名をつなぐ記号としても使われています。
「アルファベットの27番目」という立場は失っても、言葉の世界にしっかりと存在し続けているのです。
参考文献
There Used To Be 27 Letters In The English Alphabet, Until One Mysteriously Vanished
https://www.iflscience.com/there-used-to-be-27-letters-in-the-english-alphabet-until-one-mysteriously-vanished-81861
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

