日常の中にひそむ、読めそうで読めないあの漢字。
でも、読み方や意味を知ると、ぐっとその言葉が好きになる。
今回は、雨季や湿気の多い場所で、食べ物や衣服に自然発生する、あの微生物です。
この漢字、あなたは読めますか?
さて、正解は…
【難読漢字よもやま話】アーカイブ
【黴の語源と漢字の由来】
「黴(かび)」の「黴」という漢字は、象形文字ではなく、意味を表す部首「くさかんむり(艸)」と音を表す「微」が組み合わさった形声文字です。
「微」はもともと「かすかな」「小さい」といった意味を持ちます。これが「くさかんむり」と合わさることで、微細な、目に見えにくい植物(菌類)が湿気によって生える様子を表すようになりました。和語の「かび」の語源には、「かふる(覆う)」という言葉から変化し、物が覆いかぶさるように広がる様子を表すようになった、という説があります。
【黴(かび)に関するトリビア】
●「黴」は菌類の総称
日常で「かび」と呼ぶものは、正確には真菌類の一部を指し、その種類は地球上に数万種類存在すると言われています。人間にとって有用なものも多いです。
●湿度と温度の条件
「かび」の多くは、湿度70%以上、温度20度から30度という、人間が快適と感じる環境で最も活発に繁殖します。梅雨時が最も注意が必要です。
●カマンベールチーズ&味噌・醤油の秘密
カマンベールチーズの表面の白い部分は、「白カビ」(ペニシリウム・カマンベルティ)という、食用で風味を出すために利用される種類のかびの働きによるものです。
また、日本の伝統的な調味料である味噌や醤油は、「麹菌」(アスペルギルス・オリゼ)という、かびの一種を利用して作られています。これは国菌とも呼ばれています。
●「青カビ」とペニシリン
ペニシリンという抗生物質の発見は、アオカビ(ペニシリウム属の菌)が他の細菌の生育を阻害する作用を持つことから見出されました。人類の医療に革命を起こしました。
●かびの色は胞子の色
食品や壁に生えるかびの色(黒、青、緑など)は、かび本体の色ではなく、そのかびが作る胞子(はんしょくのための粒)の色によって異なって見えています。
●空気中に常に浮遊、においの原因は…
かびの胞子は非常に小さく、常に空気中を漂っています。そのため、どんなに清潔にしている部屋でも、温度と湿度の条件が揃えばどこからでも生えてきてしまいます。
また、かび特有のあの「かび臭い」においは、かびが有機物を分解する際に発生させる揮発性の有機化合物(VOC)によるもので、健康被害の原因となることもあります。
●「かび」と「きのこ」の関係
かびときのこはどちらも菌類の仲間であり、系統的には非常に近いです。きのこはかびが巨大に成長し、子実体を作ったものと捉えることができます。
