プロテニス選手は、高度なショットをいとも簡単に叩き込む。なぜあんなボールが打てるのか? その秘訣をプロ本人に明かしてもらうシリーズ。今回は早稲田大学出身のサウスポー、日本ランキング最高9位の清水映里選手の最終回。高い打点からの両手バックハンドリターンについて教えてもらった。
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サービスリターンで心掛けているのは、打点に合わせた高さにラケットをセットすることです(写真3~4コマ目)。打点への軌道を逆算して引くことで、ブレが少なくなってジャストミートできます。
外国人選手は背が高い人が多く、サービスが跳ね上がってくるので、返球の精度を上げるには打点をイメージすることが大事です。私はリターンでは精度を第一に考えています。その次に、余裕があったら攻める、特にセカンドではアグレッシブに行くというタイプです。
この写真はセカンドサービスに対する両手バックのリターンですね。あらかじめベースライン近くにポジションを取っています(1コマ目)。可能ならもっと前に立ち、スプリットステップ後に斜め前に入って打ちたいですが、これはサービスが跳ねてきたため無理に前に行かず、少し待って高い打点で捉えたのだと思います(8コマ目)。
振り出す直前の6コマ目を見ると、タメている感じがするでしょう。私はいつもバウンドの頂点で取ることを意識していますが、ここでは最初からある程度前にいるぶん、斜めに入っていかなくても十分高く取れています。
高く跳ねるボールを処理する時のポイントは、スプリットステップしてからの後ろ足(右足)のセットです。この状況では左足を踏み込むよりも、右足を軸足として決めて、内ももやお尻にパワーをタメた方が効率的です(4~5コマ目)。
コンパクトに肩をターンするのと、右足のセットを一緒のタイミングで行ない、これで準備完了。あとは右足を踏ん張って振っていけば(7コマ目)、自然にパワーを伝えられます。
リターンはやはりコンパクトに引くのが、ストロークとは違うところです。余裕がないショットなので、肩のターンで準備を終わらせるくらいの感覚でOK。その時に、サービスと同じく両肩を水平に保つのが安定させるコツです(4コマ目)。
あとは右足のカカトの向きも鍵になります。タメている段階ではカカトは斜め後ろを向いていますが、打つ時は母指球で地面を押しながらスイングするので、そこを軸にしてカカトが後ろを向き、身体も一緒に回りやすくなります(6~10コマ目)。手で回そうとしなくても、軸の回転をうまく利用することで、下半身のパワーをボールに伝えられるわけです。
【プロフィール】清水映里/しみずえり
1998年5月28日、埼玉県生まれ。161cm、左利き。早稲田大学時代にインカレ、インカレ室内を制し、卒業後プロ転向。女子選手屈指のフォアハンドの強打を誇り、2020年にニュージーランドのITFツアーW15で初優勝、23年全日本選手権ではベスト4入り。24年にはWTAランキング最高296位、国内最高9位をマークする。Totsu所属。
構成●スマッシュ編集部
※『スマッシュ』2024年5月号より再編集
【連続写真】高い打点で捉えた清水映里の両手バックリターン『30コマの超分解写真』
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