通常、被疑者が容疑を否認していない場合、保釈は認められやすいといわれる。ところが、逮捕されたNHK党党首の立花孝志被告に関しては、兵庫県警と検察は異例とも思える保釈不許可を維持。その姿勢からは、県警と地検の「本気度」が伺える。
立花被告は、亡くなった元兵庫県議会議員・竹内英明氏への名誉毀損容疑などで11月9日に逮捕、28日に起訴されたが、リーダーを失ったNHK党からは、斉藤健一郎参院議員らが離党。舵取りもままならぬ中、亡くなった竹内氏の妻が改めて「示談はしない」と明言。保釈申請が認められないまま、来年の初公判まで勾留が続くだろう、というのが大方の司法関係者の見方だ。
司法ジャーナリストが解説する。
「一般的な政治資金規正法違反や公選法違反の事件と比べ、今回の立花氏に対する捜査は異常なほど綿密です。地検が立花氏を狙い撃ちにする背景には、彼が長年にわたって執拗に追及してきた『NHKのタブー』、それに連なる『政界のタブー』がなんらかの形で関係していることは間違いないでしょう。彼は単なるアウトサイダーではなく、既存の権力構造、特にNHKという巨大な既得権益を揺るがす存在だったこともあり、政界の一部から検察側に強い要請があったと考えても、なんら不思議はないと思います」
立花被告が仮に有罪となった場合、その政治活動は事実上、停止に追い込まれる。となれば、その存在を疎ましく思う勢力にとっては、まさに一石二鳥。
ただ、これまでにも奇抜な言動と既存政治への挑戦で、世間の耳目を集めてきた立花被告にとって、今回の刑事事件化は政治家人生における最大のヤマ場となる。
「立花氏はかねてから『私は捕まってもいい。むしろ、捕まることで国民が目を覚ますなら本望だ』と公言してきましたからね。つまり、常に世論に訴えることを行動原理としてきた立花氏にとって、有罪か無罪かという裁判の結果は二の次。裁判そのものが、彼の『最後の劇場型選挙活動』になることでしょう」(前出・司法ジャーナリスト)
言うまでもなく法廷は、原則として公開の場である。となれば、立花被告が検察との攻防戦の中で、誰もが息を飲むような「超大型爆弾」を投下する可能性は否定できない。そんな「決定的なモノ」が、裁判の過程で次々に示されたとしたら…。
裁判官は「公判との関連性」を理由に、そうした証拠採用を制限できる。だがそうなれば、立花被告がその制限自体をも「権力による情報隠蔽だ」と世論に訴えるかもしれない。それとも検察の「本気度」が、立花被告を黙らせてしまうのか。
(灯倫太郎)

