
【ザスパ社長・細貝萌の生き様】「来季こそ上に行けるチームを作りたい」方向性はブレず、残留を勝ち取る。激動の2025年を乗り越え、次のステージへ
2025年は1年でのJ2復帰を目標に掲げながら、J3で14位という悔しい結果に終わったザスパ群馬。2026年はJ2・J3の40チームが東西南北に分かれて戦う変則リーグに参戦。そこでチームをブラッシュアップさせ、夏から開幕する2026-27シーズンに挑むことになる。そこでJ2復帰を果たし、着実にクラブ力を引き上げていくというシナリオを、群馬の細貝萌社長は思い描いている。
「今季に入って『ザスパ VISION 2030』を関係者の中で話し合っていたんですが、それを10月にフロントスタッフ全員の前で説明しました。
もちろん毎年、成長し続けていかなければいけないという話はしましたし、2030年時点でのJ1という目標にも触れました。同時にスタジアムに足を運んでくださる観客の方々も増やさないといけないですし、売上高も現状の10億円規模から大きく伸ばさなければいけない。高い領域を視野に入れ、部署ごとに成長していくことが大事なんです。
やはり全員がザスパ群馬で働いていることを誇らしいと思えるような組織・クラブにすることが、社長である自分の責務。『2030年にJ1』というのは、はたから見れば現実的ではないと言われるかもしれません。ですが、目ざすことはできる。僕はそう信じています」と彼は語気を強めていた。
今の群馬にとって良い見本になりそうなのが、2025年にクラブ史上初のJ2優勝&J1昇格を決めた水戸ホーリーホックではないだろうか。2000年からJ2に居続け、「J2の番人」とも言われてきた水戸の2024年度の売上高は12億7000万円。同年の1試合当たりの観客動員数は4406人で、同リーグで3988人だった群馬とそこまで大きな差がなかった。
そういうクラブが一気に最高峰リーグに上り詰めたのだから、群馬も「自分たちも同じような足跡を辿りたい」と考えても不思議ではないはずだ。
「今季の水戸に関しては、シーズンを通して結果が出たことは当然、素晴らしいことですし、学ぶべきところは、たくさんあると思います。僕らには、そのポテンシャルがないかと言われれば、そんなことはないという自負があります。群馬県には約190万の人々がいますし、県民の後押しを力にできれば、いつか大舞台を掴み取ることもできると信じています。
ただ、一目散にJ1を目ざすのは難しいのも事実。自分たちの立ち位置をしっかり見極め、課題を抽出し、それに向き合っていくことが肝心ですね」と、細貝社長は目の前のハードルを確実にクリアしていくつもりだ。
水戸は「メイクバリュー・プロジェクト」という選手教育プログラムを2018年から実施しているが、群馬も選手育成・教育の重要性は強く認識している。すでにアカデミー選手に対する栄養教育を始めているというが、人間教育の部分にアプローチしていくことも必要だろう。
トップチームの選手が社会との接点を増やしたり、クラブスタッフの仕事を理解するような活動があったりしてもいいはず。今年からベイシアグループの傘下に入ったこともあり、教育や研修のノウハウをフィードバックできるチャンスも増えそうだ。
「ベイシアグループの支援、クラブスタッフの頑張りもあって、今季はJ3に降格したにもかかわらず、パートナーさんの数が増えているんです。みなさんの協力には心から感謝していますし、シーズンが終了してから関係各所を回って、お礼を伝えています。
その一方で、ザスパ群馬の認知度がまだまだ低いと感じることもあります。ベイシアグループ傘下に入ったのは5月末ですが、9月末になってから都内在住のテレビ関係者から『ベイシアグループの一員になったんだね』と言われた時には、『ああ、まだまだ知られていないんだな』と痛感させられましたね。
練習拠点のGCCザスパークについても、完成したのは2024年5月だったんですが、県民の方でも存在を知らないケースがあります。そういった現実を目の当たりにする機会があるからこそ、僕はもっともっと表に出て、クラブを知ってもらう必要がある。ホームタウン活動には特に力を入れるべきだなと今、強く感じています」
今一度、気を引き締める細貝社長。2026年1月31日付で前社長である赤堀洋会長が退任することもあって、2026年はより彼自身が経営判断をしていかなければならない局面も増えそうだ。
「ベイシアグループの土屋裕雅会長、ベイシアの相木孝仁社長、カインズの高家正行社長との連係をより一層強化していく必要があるのはもちろんのこと、僕自身もクラブ経営者として成長しなければならないと考えています。ご存じの通り、Jリーグは3期連続赤字、あるいは債務超過に陥るとクラブライセンスを失ってしまうので、より一層の売上増・コスト削減に努めていくべきですね。
それに強いチームを作るためには、それなりのチーム人件費も投じなければいけない。グループの一員になったこともあって、今はいろんなことを精査している状況ですが、2026年は特殊なシーズンなので、見通しが立ちづらい部分も少なくありません。
群馬県は日本の中央付近にあるので、明治安田J2・J3百年構想リーグはどのグループに入ってもおかしくありません。ただ、どこのグループに入るかによってアウェーサポ―ターの人数も変わってきます。集客力のあるアルビレックス新潟や松本山雅FCと同じグループに入れば、数千人規模の観客の来場が見込めますが、そうなるとも限らない。
いろんなパターンで予算を組んでいるのですが、それも過去には経験のなかったこと。僕自身も昨年末とは違った状況ですし、J3残留が決まったのも遅かったので、予算編成作業の難しさを感じています」と彼は神妙な面持ちで言う。
2024年11月の現役引退会見直後に社長業に乗り出すことが正式発表されてから1年2か月。細貝社長は紆余曲折の時間を過ごしてきた。まずJ3というリーグがここまで難しいものだとは思わなかっただろう。
毎試合毎試合、一喜一憂したはずだが、その合間にも経営者として冷静な目線を持ち続けなければいけない。常に会社、スポンサー、自治体などの関係先に目を配り、クラブを良い方向へ導いていく仕事はやはり想像以上に難しい。彼は激動の2025年を乗り越え、2026年へと向かっていくことになるのだ。
「Jリーグクラブって、会社の人たちが毎日どういうふうに働いているかが表から見えにくいところがあるじゃないですか。それを今年一年、僕自身が見ることができたのはすごく大きな学びになりましたし、感謝しています。
一番喜んだり、落ち込んだりしたのは、やはり試合の結果ですね。勝った時の嬉しさは選手時代よりもはるかに大きかった。負けた時の悔しさも、もちろんそう。J3残留がかかった終盤はものすごいプレッシャーを感じていましたし、本当に苦しみました。
ただ、あの時に重圧に負けてスタイルを変えていたとしたら、絶対に後悔したと思うんです。沖田優監督と選手たちを信じて、自分たちの方向性を貫いたからこそ、残留を勝ち取れたと思っています。
来季こそ、本当に上に行けるチームを作りたい。今年一年でスポンサー企業など多くの方との信頼関係を築けましたし、そういう人たちの助けを借りながら群馬を良いクラブに育てていきたい。そして2027年の夏には必ずJ2に戻れるように、飛躍の基盤を作っていくつもりです」
経営トップに立って2年目に突入する細貝社長がどのような変貌を遂げるのか。そこに注視しつつ、群馬の2026年をしっかりと見守っていきたいものである。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
【画像】ゲームを華やかに彩るJクラブ“チアリーダー”を一挙紹介!
【画像】長澤まさみ、広瀬すず、今田美桜らを抑えての1位は? サカダイ選手名鑑で集計!「Jリーガーが好きな女性タレントランキング」TOP20を一挙紹介
【記事】「パパ、なんで帰っちゃうの」と愛娘は号泣。単身赴任で社長業に専心。全精力をザスパに傾ける【細貝萌の生き様】
