12歳のタイ人少女が日本の違法風俗店で働かされていたというニュースが報じられ、世間からは「買った男性客側にも処罰が必要なのではないか?」という声も上がっているが、女性を「買おう」とする男性は「スキマバイト」の世界にも存在した。
埼玉県内の大学に通う宮田ひかりさん(仮名・21歳)はとある物流会社でピッキングのスキマバイトに出向いた際、一緒に働いていた50代の男性にしつこく「パパ活」の誘いを受けていた。
「ピッキングというのは台車を使って指定された品物を集めて行く作業なんですが、そのおじさん(仮にAとする)はストーカーのように私の後をついて来ました」
基本的に作業は各自で行うものであり、周りに私語を交わす人がほとんどいない中でAは声をひそめるようにして、ひかりさんに言い寄っていたらしい。
「最初は『何歳?学生さんなの?』とか『どこから来てるの?』とかそんな感じだったんですが『彼氏はいるの?』とか『男性経験はあり?』とか聞いてくるようになったかと思ったら『お小遣い欲しくない?』とか『俺とパパ活しようよ』と言い出したんです」
あまりの無礼さに最初は無視をしていたひかりさん。だが、Aがどんどんしつこくなるため「興味はありません」ときっぱりとはねのけると「あ、ここじゃまずいか、じゃ後でゆっくり話そう」と一方的に言い残して離れて行ったという。
「やれやれと思ったんですが、Aは仕事が終わった後、駐車場で私を待ち伏せていたんです」
「やあ、お疲れ」と慣れ慣れしく近づいて来たA。ひかりさんが無視して自分の車に乗り込もうとするとAは助手席のドアを開け、「これからデートしない?食事だけでも5000円あげるし、ホテルまで行ってくれたら2万円あげるよ!」と声をかけて来た。
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「若い頃はモテた」と武勇伝を吹聴
「いい加減にしてください!」とキレるひかりさん。すぐにその場を去りたかったが、Aの上半身が車内に入り込んでいるため車を発進させることができない。
押し問答を繰り返す2人の、ただならぬ様子に気づいた仲間が事務所に通報し、駆けつけた社員にAが取り押さえられてるうちにひかりさんはその場から逃げ出すことができた。
「後で派遣会社から連絡があったので事情を説明したんですが、Aはあちこちで似たような騒ぎを起こしていて要注意人物になっていたものの、今回は偽名を使って働きに来ていたようです。
幸い私はつきまとわれただけですが、他の現場では実際にホテルに連れ込まれちゃった子とか、現場のトイレや建物の死角で性行為を強要された子もいると言う話でした。パパ活を謳っていながらお金を渡さなかったこともあって、騙された子が派遣会社に訴えて明るみになったそうです。
みんな私と同じような年齢の学生だったと聞きました。Aに罪の意識はなく『スキマバイトに来ているくらいだからお金が欲しいんだろうなと思って声をかけただけだ』とか『パパ活だってスキマバイトみたいなもんだろう?』と開き直っているそうで、呆れてモノが言えません」
警察に身柄を確保されたAは今後も再犯の恐れがあるので、注意喚起のためにもここで情報共有しておこうと思う。
身長165センチ前後。色黒の瘦せ型。年齢54歳。酒焼けしたようなダミ声。左肩を落として歩く癖。たまに関西弁が混ざる標準語を話す。喫煙者。眼鏡はかけていないが老眼なのか文字や数字は目から離して見る傾向がある。
事件当時の髪型は金色のメッシュが入った長めのツーブロックで、「岩城滉一似」を自称し「若い頃はモテた」という武勇伝を吹聴して回る。
当該人物を見かけた際はくれぐれもご注意ください。
取材・文/清水芽々
清水芽々(しみず・めめ)
1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。
