今、若年層を中心に乱用が広がっている「エトミデート」という指定薬物を知っているだろうか。もともとは沖縄で蔓延したとされるが、今や全国へ波及し、各地で逮捕事例が相次いで報じられている。
エトミデートは乾燥葉に合成カンナビノイド系成分を吹きかけた「違法タバコ」として流通し、吸引すると意識混濁や異常行動を引き起こす。手足が痙攣し、ゾンビのようにフラフラと歩くことから「ゾンビタバコ」の異名で呼ばれている。
12月10日には東京都八王子市の59歳の男が、エトミデートを含む液体約2.1キロ（末端価格2000万円以上）をタイから密輸しようとしたとして、医薬品医療機器法違反容疑で警視庁に逮捕された。液体はボディーローションに偽装され、今年５月以降の密輸事件での押収量としては最多とされる。
SNSを通じて「とにかく安くて強烈」といった口コミが広がり、火がついたとみられるが、ここで問題なのは、全体像がまだ明らかでないことだ。個別の摘発例は報じられているものの、全国でどれほど流通しているのか、どのルートで若年層の手元に届いているのかが、正確には把握されていない。
沖縄発祥とされる背景には、アジア圏からの非正規ルートや、基地周辺の特殊な環境がある。捜査関係者によれば、
「米軍コミュニティーを経由する流通や個人間取り引きが多く、全容を摑むのは難しい」
沖縄の薬物事情に詳しい現地関係者が指摘する。
「暴力や飲酒問題など、何らかの素行不良で退役した元米軍関係者が、生活のために『裏の商売』へと流れるケースは珍しくありません。こうした背景も流通ルートを複雑にしています」
被害拡大を防ぐには摘発だけでなく、全国規模での情報共有と監視体制の強化が求められる。
（カワノアユミ）
