来年で芸能活動15周年を迎える俳優の上白石萌歌(25)。2011年に開催された第7回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞してから、数々のドラマや映画に出演。現在はadieu(アデュー)名義で音楽活動もしている。そんなマルチな才能を発揮し続ける彼女の現在地と、30代に向けての展望を聞いた。(前後編の前編)
学業と俳優業の両立を支えた笑福亭鶴瓶の一言
――2026年に芸能活動15周年を迎えますが、これまでの芸能活動を振り返って率直なお気持ちを教えてください。
上白石萌歌(以下、同) 今15年と聞いてびっくりしました。ずっと突き進んできた感覚はありつつ、もう15年もこの仕事をやらせてもらっているんだなと思って。振り返ると、短かったようでちゃんと長かったです。もう人生の大半を表現の世界で過ごしているので、一瞬だったというよりは、じっくり一年一年踏みしめてやってきたなという気持ちはあります。
――10代の頃と比べて、精神面で成長したと感じる部分はありますか。
私は3年前に大学を卒業するまで、ずっと学生と俳優の両輪で走ってきました。卒業して、いざ表現の道だけになると、自分がその日どんな風に役として生き切るか、より責任感を伴って考えるようになったので、一作品一作品がより自分の中で大切なものになりましたし、責任や自覚は年々強まってきていると思います。
――学業と俳優の両立はやはり大変でしたか?
大変でしたね(笑)。でも幼いころから大学は絶対に卒業したいという気持ちがあったので、それを叶えてくれた環境にはすごく感謝しています。
――学業と芸能活動を両立した経験が、今に活きていると感じる部分はありますか。
18歳のときに笑福亭鶴瓶さんから「忙しい人には時間がある。暇な人には時間がない」という言葉をいただきました。その言葉がすごく心に染みました。作品の役作りや準備の時間も自分で捻出するものだなと実感して、その言葉は学業とお仕事を両立させる上で大切にしてきた言葉ですね。
「ひとり時間が大好き」な上白石萌歌が“これさえあれば生きていけるもの”
上白石萌歌が主演の一人を務める、人気漫画原作の映画『ロマンティック・キラー』が12月12日(金)に公開される。恋愛にまったく興味のない“干物女子高生”・星野杏子(あんず)が、ある日突然、強制的にロマンティックな恋愛シチュエーションに巻き込まれていく姿を描いたコメディだ。
「ゲーム・チョコ・猫さえあれば生きていける」という究極の干物女子を演じる上白石だが、主人公・杏子には自身とも重なる部分があるという。
――杏子と上白石さんとの間に、共通する点や違いはありますか?
私も好きなものとか、限られたもので自分を満たせるタイプだと思っています。好きな音楽や映画に囲まれて「それだけで生きていける」みたいな感覚はとてもよく分かります。
ただ杏子は自分で決めたことを貫き通す強さがあって、「絶対に恋しない」というスタンスをずっと持ち続ける人だったので、そこは私と違いますね。私だったら途中で折れちゃうかな……(笑)。
――作中では数々の恋愛映画やドラマを彷彿とさせるシーンが出てきましたが、上白石さんが好きな恋愛作品はありますか。
『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』(1995年公開)というアメリカ映画ですね。列車の中で出会った2人が一緒に降車して、一晩じゅう街を歩き、そしてお別れするというストーリーなのですが、本編の9割以上が台詞という、圧倒的な会話劇が繰り広げられているんです。
その日会ったばかりの2人がお互いの価値観や哲学を共有していく。それだけなのにすごくロマンチックに感じるし、非日常的なシチュエーションにもすごく憧れがあります。「人と人の関係が深まるのに、時間は関係ないんだ」と思いましたし、何度も見てしまうぐらい大好きな作品です。
――映画や音楽がお好きとのことですが、実際に表現や演技のヒントになるものって、日常のどんなところから取り入れていますか。
私はひとりで過ごす時間が大好きで。大人数だと気を遣ってしまい、人疲れしやすいので、ひとりで自分を整える時間が必要なんです。なので映画館や劇場、喫茶店とかいろんな場所にひとりで出向くことが多いのですが、そういうときにふと耳に入ってくる会話の内容や温度感に結構アンテナを立ててることが多いですね。
「人ってびっくりしたときはこんな声を出すんだな」とか。表現って何でも栄養になるし、身近な場所にヒントがあるかもしれないと思って過ごしています。

