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佐倉綾音が語る、麗日お茶子との“10年と1年”の旅路「一緒にこの経験ができてよかった」<僕のヒーローアカデミア>

佐倉綾音が語る、麗日お茶子との“10年と1年”の旅路「一緒にこの経験ができてよかった」<僕のヒーローアカデミア>

佐倉綾音
佐倉綾音 / 撮影=友野雄

2016年のTVアニメ放送開始から約10年。世界中のファンを熱狂させてきた「僕のヒーローアカデミア」が、現在放送中の「FINAL SEASON」をもって、ついにその壮大な物語に幕を下ろそうとしている。緑谷出久をはじめとする雄英高校1年A組の生徒たちは、数多の試練を乗り越え、ヒーローとして、そして人として大きく成長を遂げてきた。中でも、ヒロインである麗日お茶子が歩んできた道のりは、優しさと強さ、そして苦悩に満ちたものだった。特に第7期で描かれたトガヒミコとの決着は、多くの視聴者の涙を誘い、物語の核心に触れる重要なエピソードとなった。今回は、麗日お茶子を演じ続けてきた佐倉綾音にインタビューを実施。ファイナルシーズンの収録現場で感じた雰囲気の変化、トガヒミコ戦の裏にある壮絶な役作り、そしてクライマックスへ向けての想いを語ってもらった。(※以下、第7期およびファイナルシーズン第10話までのネタバレを含みます)

■「戦友になった」久しぶりの現場で感じたA組の絆
アニメ『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』
アニメ『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』 / (C)堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会


――10年近く続いてきたシリーズもファイナルシーズンを迎えました。佐倉さんご自身、どのような気持ちで臨まれましたか?

ファイナルシーズンの前半戦は、お茶子は意識がなくダウンしていたので出番がなかったんです。でも、他の現場で「ヒロアカ」のキャストさんに会った時には「今どんな感じ?」と聞いたりしてずっと情報共有はしていました。なので、しんどい展開が続いているけれど、1話1話とても丁寧にアフレコしているという雰囲気は伝わっていました。

――おっしゃる通り、毎週息を呑む展開が続いていましたね。

そうなんです。そんななか、ついに私の登場回もやってきて。第8話(No.167) 「緑谷出久:ライジング」で、ヘリで病院に搬送される途中、「がんばれ!!」とデクに声をかけるシーンで、本当に一言だけだったのですが、久しぶりにみんなといっしょに収録することができてうれしかったです。

――いきなりクライマックスでの参加だったんですね。

そう。……お茶子が意識を失ってる間に、みんながあそこまでAFOを追い詰めて、これでとうとう戦いの決着がつくんだなと考えると、やっぱり込み上げてくるものもひとしおでした。

――収録現場でA組のみんなが揃うのも久しぶりだったのではないでしょうか。

本当に久しぶりな気がします。過去シーズンではコロナ禍があったりもしましたし、展開的に分かれて戦うことも多かったので、感覚的には第1期や第2期ぶりぐらいに感じましたね。楽しかった学園生活の思い出が頭をよぎりつつも、今回は明らかに違う空気感が流れていて、複雑な気持ちでした。やっぱり最終バトルの真っ最中なので、キャストのみんなも目が違うんですよね。「数々の戦いをくぐり抜けて来た目」とでも言いますか、とても頼もしくて心強い気持ちになったことを覚えています。
佐倉綾音
佐倉綾音 / 撮影=友野雄


■テストから涙が止まらなかった…トガヒミコとの“命のやりとり”

――話は前後しますが、第7期のトガヒミコとの戦いについてもお伺いしたいです。数々の激闘の中でもひときわ強いインパクトを与えたバトルでしたが、改めて振り返ってみていかがでしたか?

先日、「ヒロアカ」のイベント(ヒロヴィラフェス)に登壇させていただいた際にもトガヒミコ戦を振り返るくだりがあって、改めてあのシーンを見返すことがありました。オンエアされた当時もなぜか何回も何回も見返してしまって。苦しくなるのは分かっているのに、なんで見てしまうのかと考えたら、「今なら、今見たら、もしかしたら助けられるんじゃないか?」みたいな感覚があったのだと思います。

――結末は変わらないことは分かっていながら、でも「もしかしたら?」と期待してしまうんですね。それほど心に深く刻まれた戦いだったということですよね。

ファイナルシーズン第10話(No.169) 「笑顔が好きな女の子」で、お茶子が自分の背負った十字架について吐露するシーンがあるのですが、「戦い抜いた」という感覚と後悔とが入り混じる、とても複雑な結末で。平和が訪れたとしても、失ったものは戻らない苦しさがとても丹念に描かれているなと思います。お茶子もデクに言葉をかけてもらって、救い上げられて、微笑み返せるようにはなったけれど、きっとこれは一生背負っていくんだろうなと思います。私自身も、今でも心にずんと重さが残っている感覚がありますし、トガヒミコとの結末はいつ観ても、何回観ても苦しいなと感じますね。
アニメ『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』
アニメ『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』 / (C)堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会


――巨悪を倒したからといって即ハッピーエンドというわけではないのが「ヒロアカ」らしいですよね。

大団円の裏にはいろんな犠牲もありましたから、それでも果たして「大団円」と呼ぶのだろうか……みたいなところも「ヒロアカ」の考えさせられるところだなと。

――トガヒミコとの決着シーンについては、お芝居中はどんな感覚がありましたか? やはりかなり苦しかったですか?

あれで苦しくなかったら大変です(笑)。これまでも作品内で命のやりとりの場面はありましたが、お茶子で言うと、初期の爆豪戦はあくまで学校内でのデモンストレーションで、本気ではあったけれどまだ学生の戦いでしたし、「未成年の主張」は心の戦いだったので、物理的な命のやりとりではなかったですし。そう考えると、やっぱりトガ戦がいちばん重たかったですね。アフレコはトガ役の福圓(美里)さんと一緒に収録ができたのですが、もう、テストの段階から本当に涙が止まらなくて。

――体力や気力の消耗も激しそうです。

きつかったですね。キャラクターたちはたった1回の人生を全力で生きているだけですが、演じる私たちは、テストや本番、リテイクなど、何回も何回もその人の人生を生き直して一番いいものを目指していく作業なので。それがとても煩わしくなる時もあれば、「いや、もっとやれるはず」と挑んでいける時もあって。トガ戦は試行錯誤しながら収録して、それでも毎回ちゃんと納得しながら演じられていたので、毎回ちゃんと新鮮な涙が出てくるという不思議な体験だったと思います。

――具体的にはどのようなディレクションがあったのでしょうか?

「シーンのピークをどこに持ってくるか?」が一番のポイントだったと思います。私が「ここがピークかな?」と思って持っていったお芝居に対して、「いや、こっちをピークにしてみたらどう?」とか、いろいろな可能性にトライしていって。こういう激しい戦いって、ともすれば最初からトップギアで叫び合うだけになってしまう危うさもあるんですけど、そうじゃなくて「こらえながら」とか「内に秘めながら」とか、その塩梅がとても大切なんです。とくに女の子同士の戦いなので、ともすればヒステリックな言い合いに聴こえてしまう危険もあり、そこはディレクションも含めて絶妙なバランスでコントロールしていただけたなと思います。

――なかでも、トガから「私……カァイイ?」と聞かれたお茶子が「世界一」と返すくだりは、究極のお芝居だったと思います。あそこもテイクを重ねましたか?

いえ、「世界一」のくだりは1、2回ぐらいしか録っていなくて、どちらかというとそこへ持っていくまでの流れを重視していた気がします。でもあのセリフは、原作を読んでいて自分の中でハードルが上がってしまっていて、どういうふうに表現したら原作と肩を並べられる、もっと言えば原作を超えられるだろうかという、自分の中にあるプレッシャーとの戦いの方が大変でした。
佐倉綾音
佐倉綾音 / 撮影=友野雄


■10年の重みを1年で受け止めたお茶子へ「一緒に歩めてよかった」

――AFOとの戦いが終わり、現在はエピローグが描かれています。ドラマの中で印象深いものはありますか?

私、アクションシーンも好きなんですけど、戦いを終えた者たちが持ち帰った感情とか、吐露するところにすごく惹かれるんです。それを一番最初に感じたのは、お茶子が爆豪と戦った後、親に電話をするシーン(第2期)。戦いのあとに訪れる静寂と、戻ってきた日常にものすごく気持ちを揺さぶられて、気づけば泣いてしまって。とくにファイナルシーズンでは、敵<ヴィラン>側の描写もちゃんと描かれているので、最後まで「ヒロアカ」らしいなと思いました。

――最終回に向けて、見どころを教えてください。

いやあ、もう堀越(耕平)先生の話作りが本当に巧妙すぎて。「こんなところが伏線になっていたんだ!」というところが、ラストに従ってどんどん紐解かれていくんですよね。「こんなちっちゃいコマの、こんな登場人物の、こんな行動とか言動がラストに繋がってくるんだ」というのを、まだ原作をご存じない方にはぜひアニメで楽しみにしていただきたいなと思います。原作をご覧になっている方には、アニメで音がついて、動きがついて、声がついて、改めてアニメの「ヒロアカ」が出した答えも、新たに楽しみにしていただけたら嬉しいです。

――10年間演じられたお茶子に対して、佐倉さんから声をかけるとしたらどんな言葉になりますか?

いやあ、そうですねえ……。声や呼吸だけとはいえ、一緒に歩んできて、同じ景色を見てきたつもりで。私が10年かけて受け止めてきた感覚を、お茶子は1年でぎゅっと凝縮して受け止めたと思うと、もう計り知れない経験だと思うんですよ。それはこれからのお茶子の人生を支えてくれると思いますし、私自身も「お茶子と一緒に、この経験ができてよかったな」と思います。この先の人生も、どうか頑張って。

◆取材・文=岡本大介
アニメ『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』
アニメ『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』 / (C)堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会


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