水彩画と香りと、本すべてが混ざり合う
水彩画はやわらかく、ふんわりしているのにたくさんの要素を持った土地の様子をすっきりとまとめ上げ、洗練された雰囲気です。街のどこに注目したのか、まずは絵が多彩なトピックを見せてくれます。次に袋を開ければ世界がまた広がります。絵に描かれているお菓子や植物の要素をそのまま感じる部分もあれば、漂う香りからまた違う一面に思いをはせたりも。
そして複雑で奥行きのある香りに包まれて再び絵に戻れば、さっきは見逃していた細かな描き込みがぱっと目に付いたり、描かれたモチーフを頼りに複雑な匂いから植物の存在感がぐっと立ち上がったりと、視覚と嗅覚が一体となってゆっくりと混ざり合っていきます。
これら8つのエリアに詳しい人なら、街のどの面を取り上げたかが面白く、訪れたことがなければ知らない街の紹介のように楽しむことができるのではないでしょうか。街の見え方は一つではなく、さまざまな着目点、訪れる時間、季節、天候によって違いがあり、漠然としたイメージを形にしながらも、表現者が歩いた道をたどるような詳細な気配がするのも面白いです。
土地の印象をいくつもの手がかりで探る贅沢さ
ご本には絵と香りをメインにしつつ、街の写真が掲載されていたり、絵や香りの解説もされており、作者さんたちがどのような物を見たかの手がかりが示されています。さらに、袋側のページには街の写真があるのですが、そっと袋を避けるとその隠れていた部分にもイラストがあるのを見つけることができました! 絵や香りを受け取る楽しさ、読み、見て知る興味深さもたっぷりの贅沢さを感じるご本でした。

