2025年に本格始動したeモータースポーツのシリーズ『UNIZONE』。eモータースポーツの世界大会で数々の上位入賞を果たし、スーパー耐久等リアルのレースへの参戦経験もある武藤壮汰と、スーパーフォーミュラ/スーパーGTに参戦する小出峻のふたりを擁した名古屋OJAが圧倒的な強さを発揮し、チャンピオンに輝いた。
しかしUNIZONEは、まだまだ注目度が高まっていない状況。正直に申し上げて話題に上がることも少ない。このままの状況を続けていくわけにはいかない。今後どうしていくのだろうか?
UNIZONEはJAF公認のeモータースポーツシリーズとして立ち上げられ、複数回のテストマッチを経て2025年シーズンから本格始動。5チームが参戦した。開幕戦こそ群馬県高崎市の会場に全チームが集まり対戦するオフライン形式が取られたが、2戦目以降は各チームがそれぞれ拠点からオンラインで接続して参加する”HOME&HOME”形式での開催となった。これにより各チームがそれぞれ独自のイベントとして活用することができ、そこで収入を得る機会が設けられた。レース自体もYouTubeなどでライブ配信され、世界中どこからでも観ることができた。
またシムレーサーだけではなく、スーパーGTやスーパーフォーミュラを戦うレーシングドライバーも複数参戦。シムレーサーvsプロのレーサーという構図で争われた。
成功とは言えない1年目のシーズン
レースでは白熱したバトルも見られ、競技としては成功したと言ってもいいだろう。しかしビジネスとして成功したとは到底言えない。UNIZONEのYouTubeチャンネルの登録数は伸びておらず、ライブ配信のレース視聴数は3000〜6000回程度。同時接続数にいたっては200〜300程度という低調さだ。
「競技としては、思っていたよりもうまくできた。しかしビジネスとしては、まだまだ課題がある」
UNIZONEを運営する日本eモータースポーツ機構(JeMO)の出井宏明代表理事と、監事を務めるデロイ トトーマツ グループの三木要氏はそう口を揃えており、当然のごとく問題は認識している。
重要なのは今後どう伸ばしていくか、そしてどんなコンテンツを目指すのか……ということだ。
「我々はテレビコマーシャルのようなところに、お金を使えるわけではありません。コンテンツホルダーとして、自分たちのコンテンツをどう切り出していくかが重要なんだと思います」
出井代表理事はそう言う。
「色々なモノを発信して、どんなモノがファンの皆さんに受けるのか、それを意識してやっていかなければいけないと思います」
一方で三木氏は、視聴数にこだわるよりも、そのストーリーをしっかりとしたモノにしていくのが大切なのではないかと説いた。
「同時接続数とか視聴人数などはもちろん大事なんですが、それが直接マネタイズに繋がるわけではないと思います」
そう三木氏は言う。
「自分たちのレースや、ドライバーやチームのひとつひとつに、どういうストーリーがあるのかというところを、前面に出さなければいけないと思います」
そして三木氏は、チームやドライバーが主体的に、UNIZONEを使ってどんなストーリーを発信していくかということも重要だと語った。
「視聴者を持っているプラットフォームだから参加する……そういう出場者は、僕らとしたっていらないんです。速くなくたって、人気を集めるドライバーは実際にいるわけです。逆に速かったとしても、人気がないドライバーも存在する。実際、スーパーフォーミュラに参戦している現役のドライバーの中には、そこはすごく反省すべきところだと言っているドライバーもいます」
「彼らが苦労していた時からちゃんとストーリーとして追っていって、実際のレースでも、eモータースポーツでもトップになった……となれば、人気が出ると思います」
「コンテンツをマネタイズするための仕掛けは、プラットフォームの側で全てやらなければいけません。でもeモータースポーツを含め、モータースポーツ全般の文化をどう変えていくかというのは、ドライバーが率先して認識してやっていってほしいと思っています。我々はそれをバックアップ、支えていくということが必要なのかなと思っています」
選手たちの魅力をどうアピールするか?
出井代表理事は、全てのリーグに関する制作物の権利はUNIZONEで持っているため、そこで撮影された映像やデータは、どんどんドライバーたちに提供することができると説明する。
「選手は我々にとっての最大のIP(知的財産)なんです」
そう出井代表理事は言う。
「UNIZONEならば、個々の選手別の素材をそれぞれの選手に提供して自由に使ってもらうこともできます。そういう武器を渡してあげるのはとても大事だと思います」
UNIZONEとしては、レースの際に様々な動画・素材を撮影し、それもドライバーたちに提供することも考えているようだ。eモータースポーツに参戦するドライバーは、ヘルメットを被っているわけではない……つまり通常のレースでは見られない、ドライブ中のドライバーたちの表情を見られるわけだから、これも有効活用できる素材となるはずだ。
ただそれを全て撮影するためにはスタッフの増強も必要であるし、かかる費用も大きくなるため、どう解決するかという点は課題だという。
「今年なんでそれがやれなかったかというと、シンプルに人手が足りませんでした。現場に、こういうコンテンツを撮ってきてくれという明確なミッションを出してスタッフを配置していませんでした」
三木氏はそう語った。
「今年は1年目ですから、現場で何が起きるか分からなかったというのが正直なところです。何か起きたら、その対処をするという形になってしまっていたので、撮影をするような余裕がなかったというのが、正直なところです」
「ただ、事業共創パートナーとして新しい方々が入ってくれているので、来年以降は完全にできるかどうかは別にしても、チャレンジしていかなければいけないと思っています」
選手にコンテンツを提供するだけでなく、そのコンテンツをUNIZONEとしていかに活かしていくかということも大切だと、出井代表理事は言う。
「我々は自分たちのコンテンツをどう切り出し、どう出していくかということを、今後はより意識していかねばなりません。SNSへの投稿もどんどん増やして、拡散されることを狙うということも、意識したいと思っています」
UNIZONEの存在意義は?
ただ、最大の疑問がある。それはそもそも、「UNIZONEとは何なのか?」ということだ。
日本にも世界にも、他にeモータースポーツのシリーズは数多とある。UNIZONEはJAF(日本自動車連盟)公認というだけで、他のシリーズとは「ここが違うんだ」という部分が分かりづらいのが正直なところだ。
「これは正直悩ましいところではあります」
出井代表理事はそう正直に語ってくれた。
「JAFさんの公認をいただいているという部分を、最大限に活かしきれていない、それは我々の問題だと思います。ただJAFが日本代表として世界に送り出す選手を選ぶ際には、我々のところにご相談いただいています。そこは他と違うので、それを活かしていかなければいけないと思います」
「あともうひとつ正直に言えば、今の日本ではeモータースポーツの市場がまだ非常に小さいです。だから今はそれぞれが競合するのではなく、とにかくなんでもいいからeモータースポーツをみんなで広げていくことをした方がいいと思っています」
来季以降は、レギュラー参戦している選手だけでなく、誰もが参加できる”カップ戦”のような大会を開催することも視野に入れているという。これがうまくいけば、小学生の選手がプロのレーシングドライバーをやっつける……ということも起こり得る。そうなれば新たな才能の発掘となり、その過程を逐次伝えていくことができれば、興味深いコンテンツとなろう。それこそ、UNIZONEとしての独自性にも繋がる。
また各チームが自治体と繋がりやすいかもしれないということも、UNIZONEとしての独自性に繋がる可能性がある。
実際のレースに参戦するチームでも、本拠地を置く地域の自治体との関係を強化しているという事例が確かにある。しかしそれは一部に限られており、自治体との関係が深いのはサーキットの方である。
サッカーや野球などの事例を見ると、各チームが日本の様々な地域に本所地となるスタジアムを構え、その地域の自治体の名をチームの名称に取り込んでいる。従来のレースではスタジアムはサーキットであり、各チームが野球やサッカーのように自治体の名を名乗るということは実現しにくい。しかしUNIZONEが取り入れているHOME&HOME方式であれば、自治体と繋がりやすいはずだ。
「各チームが自治体と連携できるように、シリーズとしてバックアップしたいと思っています」
そう三木氏は言う。
「結構大変なことではありますが、地元チームに対して自治体が振り向いてくれることを期待しています。全国区にはなりづらいかもしれないですが、その地域ではすごく盛り上がる。応援団なんかも徐々にできていくはずです。そこを後押ししたり、繋いでいくのはUNIZONEだったり、我々デロイト トーマツの得意とする部分です」
「そして自治体としても、コンテンツを欲しているのは間違いない。その一環として使ってもらえるものにして、我々からも提案していかなければいけないです」
さて今後のUNIZONE、そして日本のeモータースポーツの将来はどうなっていくのだろうか?
*所属、役職は取材時点

