約3年間の研究開発を経て誕生した 「長野のジビエ三種缶」 がついに完成し、クラウドファンディングを通じて販売がスタートしました。
発表会では、プロジェクトの背景や狙い、ジビエが抱える課題、そして缶詰開発の裏側や試食会も実施。
新しいジビエの可能性に期待高まる会となりました。
■ 「+GIBIERプロジェクト」とは?

近年、全国で野生鳥獣による農作物被害が深刻化し、捕獲された鹿や猪の約9割が廃棄されているという現状があります。
さらにジビエは、安全管理の難しさや流通の不安定さ、そして調理に手間がかかることから、飲食店でも一般家庭でも扱いづらい食材として捉えられてきました。
こうした状況を踏まえ、三者が着目したのがレトルト技術です。
レトルト化することで常温保存が可能になり、安全性も担保され、調理の負担も大きく軽減されます。個体差が大きく供給が安定しにくいジビエでも、より扱いやすい形で活用できるようになる点が紹介されました。
発表会では、今回の三種缶は「売るための商品」という枠を越え、ジビエをより日常で使える食材へと広げていきたいという思いが語られました。

日本ジビエ振興協会 代表理事・藤木徳彦さんは、 冬の長野は厳しい寒さで食材が少なくなる一方、ジビエが旬を迎える季節でもあり、地域では昔から大切な食材として活用されてきたといいます。猟師とのつながりが文化を支えてきたことにも触れ、地域に根付いた食文化であることが紹介されました。
今回のプロジェクトは、こうした背景を踏まえながら、ジビエをより扱いやすい形で未来につなげていくための取り組みであることが強調されていました。
三種類の「長野のジビエ三種缶」
発表会では、鹿肉を主役にした3種類の缶詰が披露されました。どれも素材の良さを生かした上品な味わいが特徴で、家庭でも使いやすいように仕上げられています。Confit de chevreuil(柑橘香る鹿肉と大豆のコンフィ)

柑橘の爽やかさと山椒のニュアンスが重なり、米油のまろやかさと鹿肉の旨みが調和した一品。大豆の食感がアクセントになっています。
CERVO ALLA CACCIATORA(鹿肉とトマトの猟師風煮込み)

トマトの甘酸っぱさが鹿肉とじゃがいもにしみ込み、柔らかく優しい味わいに。スープやグラタンなどのアレンジにも適しています。
鹿肉の清酒煮(出汁と鹿肉の風味を活かした肴)

清酒の澄んだ旨みが全体に広がり、大根がやわらかさと甘みを添える和風の一品。お酒にもよく合う落ち着いた味わいです。
これまで筆者は鹿肉には「硬い」「臭みがある」「繊維質が多くて食べにくい」というイメージを持っていました。市販の大和煮では、生姜や砂糖で臭みをごまかすような印象が強かったのも事実です。
しかし、今回の三種缶はそのイメージを大きく覆すものでした。 やわらかく仕上がっていて、臭みがほとんどなく、素材の味がやさしく感じられる味わいです。鹿肉ならではのクセも感じにくく、とても食べやすく仕上がっていました。

特に気に入ったのは 「Confit de chevreuil(柑橘香る鹿肉と大豆のコンフィ)」。 鹿肉の旨みと大豆のほっくりした食感が驚くほど相性がよく、ワインにも合う万能さが魅力でした。 ジビエに慣れない人にもすすめやすい味わいだと感じました。
