リスクを管理し、便益とのバランスを冷静に判断
安価で安定した電力供給こそが、自由な経済活動を支える基盤であり、国民の豊かさを守るための最低条件である。この単純明快な理屈を無視し、イデオロギーのために経済を犠牲にする態度は、国民に対する背信行為と言っても過言ではない。
国際原子力機関(IAEA)が2015年に公表した報告書は、福島第一原発事故の科学的な原因を冷静に分析している。
「事故の直接的な引き金は、日本の北東海岸を襲った巨大津波によって引き起こされた、長時間の全交流電源喪失であった。(中略)この電源喪失により、3つの稼働中原子炉の炉心冷却機能と、4つの原子炉の使用済み燃料プール冷却機能が失われた」
報告書が指摘するように、事故の根本原因は「電源の喪失」であり、原子炉そのものの構造的欠陥ではなかった。この教訓に基づき、柏崎刈羽原発では、非常用電源を高台に移設し、防潮堤を建設するなど、考えうる限りの何重もの安全対策がすでに施されている。
リスクを0にすることはできないが、リスクを管理し、便益とのバランスを冷静に判断することこそが、成熟した態度ではないか。
冬の寒さは待ってくれない。我々に残された時間は少ない。新潟からの再稼働容認というニュースは、理性が感情に打ち勝ち、現実が理想論を凌駕した証として記憶されるだろう。
古びた火力発電所が悲鳴を上げ、完全に停止してしまうその前に、我々は使える最強のカードを切る決断を下さなければならない。
文/小倉健一

