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平畠啓史セレクト! J1年間“至極の11人”|タイトルのために、クラブのために。数字だけでは語れない鈴木優磨、船を港まで運んだ喜田拓也に心が揺さぶられた

平畠啓史セレクト! J1年間“至極の11人”|タイトルのために、クラブのために。数字だけでは語れない鈴木優磨、船を港まで運んだ喜田拓也に心が揺さぶられた


 鹿島の優勝で幕を閉じたJ1リーグ。華やかなJリーグアウォーズも終わり、1年の終わりが近づいてきた。この時期、ベストイレブンに選ばれなかった選手でベストイレブンを毎年セレクトしているので、今年もやってみたいと思います。

 数字やデータはもちろん、印象的な活躍をした選手もピックアップいたします。GKは広島の大迫敬介。フルタイム出場かつ28失点はJ1リーグ最少。よく、ナイスセーブを連発すると「当たっている!」なんて言う。他のキーパーならそう言われてしまいそうなセーブでも、普通にやってのけるのが大迫。当たり前の水準が高い!

 DFは、右には広島の中野就斗。守備での対人の強さもあり、個で仕掛けた時の攻撃性も迫力がある。誰も触らなければ、一体どれぐらい飛ぶのか? と思わせる、まっすぐ伸びるロングスローは脅威になっていた。ポテンシャルの底が見えず、さらにスケールの大きな選手になっていくだろう。

 左サイドには町田の林幸多郎。守備では球際で厳しく戦い、攻撃ではインサイド、アウトサイドにかかわらず、攻撃に厚みを加える動きを繰り返す。そのタフなプレーぶりはゼルビアに欠かせない。目立つ選手ではないかもしれないが、存在感は大きなものだった。

 センターバックは京都の鈴木義宜と神戸のマテウス・トゥーレル。後方に鈴木がいることで、チーム全体がアグレッシブに相手に向かうことができた京都。未然にピンチを防ぐ対人の守備はもちろん、ゴール前でシュートコースを消し、失点を防いだ。3位京都の立役者の一人である。

 トゥーレルは相手に対する寄せの迫力が今シーズンも素晴らしかった。スピードもあり、圧力十分。トゥーレルの守備はピッチやスタンドの熱をあげてくれる。守備でスタジアムを盛り上げてくれる選手は貴重である。
 
 ボランチは清水のマテウス・ブエノと川崎の山本悠樹。清水の中盤を支え続けたブエノ。守備力もあり、足もとの技術もあり、正確なパスで攻撃の起点を作った。清水のまさに背骨。彼がいることで、良い姿勢を保つことができた。個人的には乾貴士と二度三度とパス交換するシーンが好きだった。今シーズン、J1リーグ最高のボランチの一人だと思っている。

 見えている世界の広さ、その世界に正確なキックでボールを届けることができる山本。パスの強弱、距離感が絶妙。中盤で動きを止めず、漂う感じが見ていて気持ちが良く、山本のプレーを見るたびに、いつも頭の中に「揺蕩う」(たゆたう)という単語が浮かぶ。力みを感じない振る舞いに期待感は膨らむし、飽きることはなかった。

 中盤の右にはアシスト王、C大阪のルーカス・フェルナンデス。7ゴール・15アシスト。怪我の影響もあり、最後の6試合に出場できなかったが、出場していれば、さらに数字は伸びただろう。相手に取られそうな瞬間に爪先でかわすようなドリブル。そしてキックの精度。ゴール前のスリリングなシーンを今シーズンも多く演出した。

 左には鹿島の松村優太。スタメンでも途中出場でも自分の役割を果たした。途中出場が多かったとはいえ、38試合すべての試合に出場していることで、いかに鹿島で重要な選手だったということが分かる。3ゴール・6アシストという数字以上に、重要な試合、大事な時間帯に大きな仕事をした松村。鹿島の優勝に彼の存在は欠かせなかった。
 
 FWの一人目はC大阪のラファエル・ハットン。ゴールを奪うためのボールの受け方、スペースの作り方、身体の向き、ボールコントロール、そのすべてがまさにストライカー。セレッソが攻撃に移って、スピードアップした時の勢いや爽快感は見ていて楽しかった。その最終局面で仕上げたのがハットン。36試合出場で18ゴール。素晴らしいパフォーマンスだった。

 そして、FWもう一人は鹿島の鈴木優磨。38試合出場で10ゴール・5アシスト。ただ、今シーズンの働きは数字だけでは語れない。味方のために身体を張り、キープして時間を作る。自分が動くことによって、味方のスペースを生み出す。勝利のために味方にも苦言を呈した。それはすべてタイトルのため。鹿島にタイトルをもたらすため。優勝が決まって、植田直通と抱き合った瞬間には、彼らがこれまで背負ってきたものの重さが感じられ、心が揺さぶられた。2025シーズンを振り返った時、鈴木の涙をきっと思い出すだろう。
 
 ここでのMVPというのは非常に難しいが、私は横浜FMの喜田拓也に捧げたい。

 素晴らしいストライカーがいようとも、屈強なセンターバックがいようとも、必ずうまくいくとは限らない。それは人間が集団で行なうスポーツだから。

 今シーズン、横浜FMは難しいシーズンになった。J2降格の可能性さえあった。船が沈みかけたのである。何より命が大事で、海に飛び込み、船から離れることも悪いことだとは思わない。だけど、喜田は逃げなかった。横浜FMは大きな船なので、修繕も簡単ではないし、乗組員も乗客も多い。それでも喜田は船底に行って、泥まみれになって修理に奔走した。

 他の乗組員に声を掛けて励まし、気丈な振る舞いで乗客に不安を与えないようにした。キャプテンとはいえ、喜田も乗組員の一人だ。それでも、育ててくれた、愛する船のために奮闘し、最初の目的地とは違ったかもしれないが、船を港まで運んだのだ。

 サッカーだってなんだって、いつもうまくいくわけではない。苦しい時も困難な時も訪れる。そんな時、何ができるか。最後まで見応えのあるシーズンになったし、感動的な場面も多かった。そのなかでも、喜田の振る舞い、そして戦いぶりに心が揺さぶられた。なので、MVPは喜田に捧げます。

取材・文●平畠啓史

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配信元: SOCCER DIGEST Web

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