男子テニスツアーを管轄するATP(男子プロテニス協会)は12月15日に公式サイトを更新し、酷暑対策として2026年シーズンから新たな「ヒートポリシー」(暑熱時の試合運営に関する規定)を導入することを承認したと発表した。新規定は湿球黒球温度(熱中症の危険度を示す指標/以下WBGT)に基づいており、3セットマッチのシングルスを対象に、クーリング措置(身体の冷却を目的とした対応)の実施や試合中断に関する明確な基準が設けられる。
主な規定として、WBGTが30.1度以上に達した場合、最初の2セットを対象にクーリング措置が適用される。同措置の発動時には第2セット終了後、いずれかの選手の要請により、シングルスでは両選手共通で10分間のクーリングブレークを設けることができる。このブレーク中、選手はATP医療スタッフの監督のもと、冷却措置の利用や水分補給、着替え、シャワーを浴びることが認められ、あわせてコーチングを受けることも可能となる。
また、WBGTが32.2度を超えた場合には、試合は中断される。ATPはこれらの新規定について、WTA(女子プロテニス協会)の方針と足並みを揃えつつ、極端な暑さに対して体系的かつ医学的根拠に基づいた対応を取ることで、選手の健康と安全を守ると同時に、観客や審判、ボールパーソン、大会スタッフにとってもより良い競技環境を提供することを目的としていると説明している。
海外メディア『UBITENNIS』などによると、これまでATPには明確なヒートポリシーがなく、猛暑時の大会運営については主催者や開催地の公的機関等の裁量に委ねられてきた。しかし連日気温約30度、湿度約80%を記録した今年10月の「ロレックス上海マスターズ」(ATP1000)でヤニック・シナー(イタリア/世界ランク2位)、トマーシュ・マハーチュ(チェコ/同32位)、ダビド・ゴファン(ベルギー/同119位)ら数多くの選手が体調不良やケガによる途中棄権を余儀なくされた異常事態を受け、同協会は「規定の積極的見直しを行なっている」としていた。
近年の気候変動の影響で今後も猛暑下での試合が増えると予想される中、今回の新規定は男子ツアーのみならず各大会の運営方針にも大きな影響を与えそうだ。
文●中村光佑
【動画】シナーがケイレンで途中棄権を余儀なくされた「ロレックス上海マスターズ」3回戦ハイライト
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