去る12月13日、日本最大のヤクザ組織である六代目山口組(司忍組長)が、静岡市の直系組織・六代目清水一家本部事務所で「事始め」式を執り行った。早朝から全国の直系組長が集結し、報道陣や警察も大挙して訪れ、事務所の周囲で成り行きを見守った。山口組事情に詳しいジャーナリストが解説する。
「『事始め』とは、12月13日に正月の準備を開始するという日本の古き風習です。西日本のヤクザ組織を中心に各組織が『事始め』の儀式を行うことがならわしとなっています。山口組でも、1年を締めくくり、新年を迎えるための重要な行事と位置付けられており、六代目体制では、その年に舎弟に直った、または直参に昇格した若中に『事始め』の儀式を前に、司六代目から盃を受けるのが慣例になっています」
今年は、司組長は総勢8人の直系組長と盃を交わした。その内訳は兄弟盃2名に、親子盃が6名だった。特に親子盃を受けた人数が例年に増して多かったという。
「山口組の直系組織では、これまで、先代組長の引退や死去に伴い、後を継いだ当代が山口組直系組長に昇格していましたが、六代目体制においては、近年、直系組織の先代組長がまだ健在のうちに跡目を後進に譲り、自身も『総裁』として組織に残る継承システムを推進している。今年の新直系組長も6人中5人が、先代が総裁として組織に残っています。六代目山口組は直参の増加による組織力の強化と、組織の世代交代を同時に進めていると言っていいでしょう」(前出・ジャーナリスト)
当日は盃儀式が10時ごろから開始され、その後滞りなく終了した後は、事始め式が執り行われた。来年度の組指針の発表や、代表者と司組長の盃儀式が行われ、儀式の終了後は祝宴となった。
「祝宴には、六代目山口組から昨年9月に移籍した、京都の老舗組織・八代目会津小鉃の髙山誠賢会長も列席したそうです。恒例のカラオケ大会では、今年直系組長に昇格した6人が全員マイクを握り、十数人が歌い終えた後に司組長がトリを務めたそうです」
(前出・ジャーナリスト)
現場にいた本誌記者の耳には、石原裕次郎の「夜霧よ今夜も有難う」、もんた&ブラザーズ「ダンシング・オールナイト」の2曲を歌う美声が確かに聞こえてきたのだった。宴は大いに盛り上がり、例年よりも長い3時間のロングランだった。最後は全員で司組長の退出を見送り(1枚目の写真)、三々五々帰路に就いたのだった。
「実は儀式の名前を『事始め』としたのは7年ぶりのことでした。分裂抗争中だった2019年から昨年までは、事始めではなく『納会』と名称を変更していました。トラブルの渦中においては、きれいに正月を迎えられない、という意識からかもしれません。ですが、今年4月、六代目山口組は兵庫県警に抗争終結の意思を示す文書を提出しました。それゆえの盛り上がりであり、『事始め』復活だったのでしょう」(前出・ジャーナリスト)
ただし捜査当局はいまだ警戒を解いていない。それは神戸山口組(井上邦雄)を筆頭に、抗争の敵対組織が軒並みノーリアクションだからだ。
「過去の例を振り返っても、六代目山口組にかけられたヤクザの活動を大きく制限する『特定抗争指定』が解除されるには、敵対組織からの『抗争終結』の意思も必要になります。現状は、六代目山口組による、一方的な終結宣言に過ぎない。事実、抗争相手のひとつ、池田組(池田孝志組長)は、翌14日に岡山県内の関連施設で『納会』を開き、士気を高めたそうです」
(前出・ジャーナリスト)
来年のヤクザ社会の動向も注視されるところだ。
(アサヒ芸能編集部)
(2枚目の写真は竹内照明若頭=右=と最高幹部ら、3枚目の写真は全国から集まった直系組長たち)



