駅のホームでの列車撮影行為をめぐるトラブルは、いわゆる「撮り鉄」問題として、これまで何度も取り上げられてきた。迷惑行為や危険行為が社会問題化し、鉄道各社が注意喚起を繰り返してきたことは、すでに広く知られている。
こうした状況を受けて、JR東日本は注意喚起をさらに強化した。12月16日から主要駅でポスターを掲出し、駅構内やデジタルサイネージで動画による呼びかけを開始。さらに2026年1月以降は、公式サイトや公式YouTube、トレインチャンネルなどでも注意喚起動画を展開させる。現場での口頭注意や放送だけでは対応しきれない状況にある、という判断が背景にあるのだ。
今回の取り組みで特徴的なのは、「撮影」だけでなく「録音」までを明確に危険行為として示した点にある。いわゆる「音鉄」と呼ばれる行為にまで踏み込んだわけだが、これは特定の趣味を問題視したというより、ホーム上で起きている危険の質そのものが変わってきたことへの対応といえよう。
ポスターに描かれているのは、脚立や踏み台を使った「脚立撮り」、ホームから身を乗り出す「乗り出し撮り」、長尺マイクや集音機材を使った「長尺録り」、点字ブロック上など通行の妨げになる「妨害撮り」など、いずれも現場で繰り返し目撃されてきた危険行為の風景ばかり。共通しているのは、撮ることや録ることに夢中になり、周囲の安全への意識が下がってしまうことだ。
特に録音行為は音に集中するあまり、列車の接近や周囲の動きに気づきにくくなる。長いマイクや機材を使えば、電線などの設備に近づくおそれがあり、事故やトラブルにつながりかねない。
ポスター掲出後、撮り鉄の反応はどうだったか。
「一部の迷惑行為によって、全体が厳しい目で見られている」
「ここまで踏み込まれるのは、現場が限界に近い証拠だ」
「録音」まで明記された点については音鉄を含め、鉄道オタクのあり方そのものが問われている、と受け止めた人が多かったようだ。
今回のポスターにはもうひとつ、見逃せない一文がある。
「駅係員への暴力・暴言は絶対におやめください。悪質と判断される行為は、警察と連携し厳正に対処いたします」
欄外に記されたものだが、注意喚起ポスターにここまで強い表現を添えるのは異例であり、現場でのトラブルが深刻化していることを物語っている。
駅のホームでの危険な行為は利用者の安全を脅かし、列車の運行に影響を及ぼす。撮影や録音に集中することで生まれる一瞬の隙に、事故の芽は潜んでいる。
今回の取り組みは、駅ホームの安全がすでに軽視できない段階にあることを、はっきりと示したものだ。撮影や録音を行う際の安全意識が、これまで以上に強く求められている。
(ケン高田)

